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１．安曇野でのオオルリシジミの保護活動

草原のチョウは、生息地である草原の減少や里やまの環境の変化により、最も絶滅の危険性が高い生きものの一つとされています。そんな草原のチョウの一つ、安曇野のオオルリシジミは過去には絶滅したと思われていましたが、1995年にわずかに生息している個体が見つかり、そこで「安曇野オオルリシジミ保護対策会議（代表：那須野雅好さん）」が結成され、国営アルプスあづみの公園内への保護区の設置、飼育蛹の放飼、春先の火入れ、パトロールなどの保護活動を行ってきました。

▲春先に火入れをすることで、オオルリシジミの幼虫や卵に「寄生バチ」が寄生することを防ぐ効果があります。（写真提供：中村寛志さん）

▲パトロールの際に配布する防犯イエローカード安曇野のオオルリシジミは20年近く、国営公園内の小さな保護区で細々とその個体群を維持している状態でした。そのため2017年の農地整備に伴う食草クララの移植作業を契機に、「チョウのネットワークづくり」と「人のネットワークづくり」を通した「オオルリシジミ生息域回復プロジェクト」を始めました。まずは「チョウのネットワーク」をつくるため国営公園内にクララを増やしつつ、さらに安曇野市内にもクララを植栽して、オルリシジミの生息環境の回復を目指します。そのため、成虫のマーキング調査や卵・幼虫調査による成虫の飛翔行動の解析や植栽プランの作成、地域の人々にクララの苗を配布して植栽していただくイベントを実施しています。
その結果、保護区以外でもオオルリシジミが広がり、2019年からは国営公園以外でも成虫や幼虫の目撃情報が寄せられるようになりました。

特に昨年は「岩原自然と文化を守り育てる会（代表：百瀬新治さん）」により約2000鉢のクララの苗が用意され、この取り組みに共感した700名以上の市民の皆さんの手で、ご自宅のお庭など276か所にクララを植栽することができました。その結果、今年の6月には、昨年植えたクララにオオルリシジミがやってきて観察されるなど、確実に生息域回復のための基盤が整いはじめています。今年の配布会でも300名以上の方が参加して、131か所にクララの植栽地を増やすことができました。

▲左図は2019年にNACS-Jが把握していたクララの分布。2020年（中央の図）の苗の配布で広く市内にクララの分布が広がり、2021年の配布により（右図）、密度の薄い部分や隙間ができていた部分にも次第に植栽地点が広がっています。*画像クリックで拡大版を表示

▲岩原自然と文化を守り育てる会の代表百瀬新治さんや会の皆さんが1年かけて大切に育てたクララなどの苗を配布しているようす。

▲2021年6月28日のクララの苗の配布の様子、当会が作成したクララ管理マニュアルやオオルリシジミの見分け方マニュアル等を配布して、市民の皆さんが効果的にクララの生育ができるよう情報提供を行いました。

２．鳥取県でのウスイロヒョウモンモドキの保護活動

ウスイロヒョウモンモドキ（環境省レッドリスト絶滅危惧Ⅰ類）は、兵庫県～島根県に生息していますが、現在は分布が非常に限られ、数年前まで発生が確認できていた５地点とも生息が危ぶまれています。種の絶滅を防ぐため各地の昆虫館や専門家の手で飼育の試みも行われていますが、生息地が保全され、健全な状態になければ、この種を絶滅から救うことはできません。

▲ウスイロヒョウモンモドキ。とても人懐っこいチョウです。鳥取県鳥取市の余戸地区の三原山には数年前に設置した防鹿柵がありますが、度々破られニホンジカの侵入を許してしまっていたため、食草のオミナエシとカノコソウが食害にあい壊滅的な被害を受けていました。
当会では、余戸地区ウスイロヒョウモンモドキ保護の会、専門家である日本チョウ類保全協会、環境省などと協力して、2020年4月18日に防鹿柵を設置しました。
防鹿柵約200mを新設してニホンジカの侵入を防いでおり、この新しく設置した防鹿柵の中では食草が回復していますが、大変厳しい状況が続いており、ここ数年の活動が回復への鍵を握ります。

▲防鹿柵の設置のようす

▲資材は約１時間登山道を登り三原山に運ぶ必要があります。地元の皆さまや関係者の方々のご活躍により資材を荷揚げしていただきました。

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