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2020.11.11(2020.11.13 更新)

オオルリシジミ保全活動 2020年の成果報告とご支援のお願い

報告

専門度:専門度3

オオルリシジミの写真

▲クララにとまるオオルリシジミ(環境省絶滅危惧1A類。

テーマ:生息環境創出絶滅危惧種

フィールド:草原市街地

いま、日本のチョウが絶滅に瀕しています。日本自然保護協会(以下、NACS-J)が事務局を担うモニタリングサイト1000里地調査では、10年以上の調査結果から、普通種のチョウ類の多くが絶滅危惧種に相当するほど急速に減少している可能性がみられました。

また、小笠原諸島の固有種であった「オガサワラシジミ」は、各関係者の方々が懸命に保護活動を続けていましたが、2018年6月以降は生息地での目撃情報がなく、動物園などでの域外保全の試みについても飼育していた全個体が死亡し途絶えてしまい、絶滅の可能性が非常に高まったという悲しいニュースもありました。

NACS-Jではこのような現状に危機感を覚え、絶滅危惧種の保全に取り組む「生物多様性保全室」を2016年に開設以来、チョウの中でも減少率が高いとされる「草原のチョウ」に注目して、絶滅の危機を回避すべく保全活動を始めました。

今回はその中で、活動の成果があがりつつある「オオルリシジミ」に注目してご報告いたします。

オオルリシジミとは

「オオルリシジミ」は、かつては東北から九州まで分布していた絶滅危惧種の草原のチョウです(環境省レッドリストで絶滅危惧ⅠA類)。いまは長野県と九州の一部でのみ生息が確認されています。

 

2020年の成果報告とご支援のお願い

草原のチョウの保全活動は、日頃より皆さまから貴重なご支援をいただき、そのご寄付を活用してさまざまな成果を得ることができました。今年の活動の成果についてこちらにご報告いたします。ご支援くださった皆さまに心から感謝申し上げます。

また、絶滅の危機に瀕するチョウの保全活動は、最後のわずかな個体となる前に、生息地において絶滅を回避していくことが非常に重要です。チョウたちの絶滅回避を着実にするためにも、今後の活動をさらに進めていければと思いますので、引き続きのご支援をお願い致します。

1. 食草の分布拡大計画と実施

オオルリシジミの幼虫はクララというマメ科の在来種の植物だけを食草とするチョウです。

歴史的には安曇野市一帯にはオオルリシジミが広く分布するために十分な量のクララが自生していたとされますが、圃場整備などによる近年の農環境の変化で、田畑の畔にあることが多いクララはほとんどなくなってしまいました。

そこで今年は、地元の「岩原の自然と文化を守り育てる会」の皆さまにより、植栽に協力してくださる市内の住民の方を対象に約2000鉢ものクララの苗の配布が行われました。(6月27日、28日)

その結果、2019年までに当活動で把握しているクララの分布・植栽範囲(図1)から、新たに安曇野市内約300か所にクララの植栽範囲が広がりました(図2)。

この配布活動により「専門家だけでは手の届かない広い範囲」にも植栽が進むことになりました。近い将来、オオルリシジミが分布を広げはじめた際に、食草が市内各所にあることで、分布範囲が広範囲に広がることが期待されます。

2021年にも、植栽に協力してくださる市民の輪が広がるよう取り組むとともに、国営公園の隣接地区にはここ数年でオオルリシジミの分布域が拡大する可能性があるため、植栽密度が低い地点などに計画的にクララを植栽していきます。

地図の写真▲左(図1)2019年までにNACS-Jが把握していたクララの分布・植栽地(500mメッシュ図)
▲右(図2)2020年に新たに市民の手でクララの植栽を行っていただいた地点。(500mメッシュ図)

▲写真左:食草「クララ」の配布会のようす(2020年6月27、28日)。オオルリシジミの分布拡大に貢献することを目的に、700名以上の市民が集まりました。
▲写真右:クララの配布会のために準備された苗。「岩原自然と文化を守り育てる会」の代表百瀬さんが大切に育ててくださいました。クララは、オオルリシジミが利用できるまでに成長するためには、4~5年かかるため、いまから市内各所にクララの植栽が広がることは、数年後にオオルリシジミの分布域が拡大するための、大変大きな力になります。

▲配布会には、安曇野市長、宮澤 宗弘 (みやざわ むねひろ)市長も参加。市長、岩原自然と文化を守る会代表百瀬新治さん、オオルリシジミ保護対策会議代表那須野雅好さんとNACS-J職員の4者により、市役所の堀金分所敷地に「クララの記念植樹」が行われました。

▲講演会のようす。会場では新型コロナウイルスの感染予防として蜜を避けるため、70名程度の定員を設けの実施でしたが、すぐに満員になり、施設外から講演を聞く方も現れるほどでした。オオルリシジミに関する地元からの関心はとても高いです。

また10月3日には、国営公園内でクララの植栽イベントが実施されました。(公園管理センター主催)。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、主に近隣地区の皆さま約20名がご参加されました。(写真下

当日は種集めも行いました。集めた種をポットにまき、来年植栽できるよう準備を進めました。

▲左上:当日の移植の様子。昆虫が大好きな地元の親子が参加してくださいました。
▲右上:大きく育ったクララから種を採取している様子。50本以上のクララから種を集めました。
▲左下:桶がいっぱいになるほど集まったクララの種。準備をしたポットに種を数粒づつ入れて苗の準備をしました。
▲左上:今年の春から夏にかけて発芽したクララの苗。来年、植栽をする予定です。

▲当日の参加者の皆さま
この「オオルリシジミ」の保全活動は「安曇野オオルリシジミ保護対策会議(代表那須野雅好さん)のメンバーや所属団体の皆さんが、各々の力を集めて実施しているものです。NACS-Jもメンバーの一員として活動に取り組んでいます。

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2. 食草クララの管理マニュアルの作成と配布

オオルリシジミの幼虫には、寄生バチが寄生することが多々あり、それがオオルリシジミの増加を阻む大きな要因の一つになっています。

そのため、クララを植えるだけでは、効果的にオオルリシジミの分布拡大を図ることはできません。

この寄生バチを寄せ付けにくくする方法や普段の管理方法など、植栽したクララが「オオルリシジミにとって生息しやすい環境」になるための情報をマニュアルにまとめて記載しました。

6月のクララの苗の配布会の際に全員に配布して、クララについての情報を周知しました。

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3. 生息調査と効率的な保全手法の研究

NACS-Jでは、中村寛志先生、江田慧子先生の指導のもと、2020年は3つの生息調査活動を実施しました。

国営アルプスあずみの公園内と一部公園隣接地点での研究者やボランティアによる生息、卵塊、幼虫調査

オオルリシジミの飛翔シーズンを含む4~6月上旬は、新型コロナウイルスの感染防止のため国営公園は閉園していましたが、調査活動など継続的な取り組みが必要なものについては、園内での活動が認められていました。

そのため、長野県内に在住の中村寛志先生と安曇野市在住のNACS-Jの会員・自然観察指導員の方、近隣地区在住の方に限定してご協力をいただき、園内の調査が行われました。

調査の成果は研究者が解析し、2021年の保護対策の方針に活かされます。

 

市民参加型の調査による成虫の目撃調査

昨年より国営公園の隣接地区でも繁殖活動が行われていることが確認されはじめるなど、オオルリシジミの分布域が着実に拡大しています。

2017年から隣接地区の住民の方の協力を得て実施している「市民参加型の成虫の目撃調査」では、昨年までは3件しか集まらなかった目撃情報が、今年は10地点から32件の目撃報告がありました。うち、4地点ではオオルリシジミの成虫が撮影されました。

この市民調査を継続的に続けることで、具体的な分布拡大の様子を捉えることができる、貴重な資料となることが期待されています。

隣接地区での成虫・幼虫の調査

オオルリシジミの分布が国営公園の隣接地区へ拡大傾向にあるため、隣接地域のクララの重要性が高まっています。2019年度は、岩原地区内にある、すべてのクララの場所と生育状況を調べ記録しました。

今年は、実際にオオルリシジミがそれらのクララを利用しているか調査しました。新型コロナウイルス感染防止のため、成虫の飛翔時期の調査が行えなかったため、主に幼虫の存在を確認する調査をしました。

既知の生息・繁殖地点を含む7か所から幼虫が確認されました。本調査により、終齢幼虫の確認もなされているため、翌年度はさらに広い範囲への定着と分布拡大も期待される状況であることがわかりました。

調査等の活動の記録(2019年~2020年)
2019年 3~8月
岩原地区のクララの植栽状況悉皆調査
2019年 5~6月
研究者、市民、NACS-J職員によるオオルリシジミ生息調査
2019年 5月26日
オオルリシジミ観察会と卵塊調査会
2019年10月 6日
国営公園でクララの植栽地点の拡大と補強のための植栽会
2019年12月 1日
環境動物学会で成果を発表
2020年 1月19日
オオルリシジミの講演会・活動報告(岩原公民館)
2020年 3月14日
オオルリシジミ保護対策会議
2020年 5月24日
オオルリシジミ観察会と卵塊調査会
2020年 5~6月
研究者、市民、NACS-J職員によるオオルリシジミ生息調査
5月15日 成虫モニタリング
5月24日 成虫モニタリング、卵サンプリング、寄生蜂トラップ調査
5月30日 成虫モニタリング、卵サンプリング、寄生蜂トラップ調査
6月6日  成虫モニタリング、卵サンプリング
6月12日 幼虫モニタリング(定点株+任意株)
6月19日 幼虫モニタリング(任意株)
6月20日 岩原地区の幼虫モニタリング
6月21日 岩原地区の幼虫モニタリング
2020年 6月 7日
(地域の方の自主活動)穂高柏原の塚原区にクララ50鉢の植栽
2020年 6月27日、28日
オオルリシジミ講演会とクララの苗配布会
クララの苗の配布及びクララ管理マニュアルの配布
2020年10月 3日
国営公園でクララの移植会と苗床づくり

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4. 違法な採取・捕獲の防止対策の実施

2019年より、チョウが幼虫から成虫となる5月~6月の期間に、岩原地区にお住いの有志の方に、違法な採取・捕獲を防止する監視策の一環として、防犯ステッカーを掲示した車で、地区内を巡回していただきました。

なお、本年度は、新型コロナウイルス拡大防止のため、5~6月には組織的な対策は行わず、警察署への協力依頼および地元協力者の方に自主的な密猟防止活動を実施していただく形で行いました。

また、「県の条例に基づき捕獲が制限される」ことを記載したカードの利用を通して、接触を減らしながら密猟防止効果をあげられる仕組みも、引き続き行っていきます。

オオルリシジミ生息地パトロールのロゴ、参加者などの写真▲地域の皆さまと連携したパトロールの実施

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ご寄付のお願い

絶滅危惧の草原のチョウ、オオルリシジミの絶滅回避のため、ご寄付によるご支援をお願い致します。

ご支援は下記のリンクからお願い致します。
フォーム内の「寄付の使途」は、「08.草原を守ってチョウの絶滅を止める!」をご指定ください。

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※お礼品がご不要の方は、フォームの備考欄に「お礼品不要」とご記入ください。

■ご寄付のお礼

活動へのご支援のお礼に特製グッズをお送りいたします。(※お礼品のお申込み期限は2020年12月迄)

5千円以上
オリジナルステッカー(写真右)
1万円以上
オリジナルピンバッジ(写真左)
5万円以上
オリジナルジュエリーセット(ピンバッジ、携帯ストラップ、ネックレス)

特製ピンバッジ、ステッカーの写真

ご寄付をいただいてから、あなたのために一つ一つ手作り致します。一つとして同じものはない、オリジナルグッズです!

オオルリシジミの生態を熟知した研究者、江田慧子さんが思いを込めて手作りしたものです。
ご家族へのプレゼントにもピッタリです!!

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