んめぇ米は鳥海山の水のおかげよ。

取材・文 市川ゆかり イラスト・さげさかのりこ

取材協力(方言校正含む):阿部浩、大江進、今野進、遊佐町共同開発米部会/小野寺一博、NPO鳥海自然ネットワーク、遊佐町の皆さん(敬称略)

遊佐町には昔っから湧水が多くあっての。町内に湧泉は200カ所以上あるな。なんで湧水が多いかっちゅうと、日本海を渡ってくる湿気た偏西風が標高2236mの鳥海山にぶつかって、冷やされて、雨や雪や霧になるんだの。鳥海山の上のほうに降る雨や雪は、年に2万mmもあるんだと。全国平均の10倍以上だ。その雨や雪が火山のスポンジみてえな地盤にしみこんで、いっぺえたまる。鳥海山は雪も多いし、木もうんとあっから、水をためる力がすごいのよ。

遊佐町の地下ではたぶん、この水が網の目のような水脈つくってんだな。で、あちこちで湧き出す。村によっちゃあ家ごとに湧泉があることもあんな。それから、地下水がずーっと海まで行って突然湧き出してるのが釜磯から三崎のあたりだの。あのへんの海底湧水は、どうも世界一の水量らしいのよ。冷たい真水が湧くもんで、んめぇ岩ガキもできるんだ。

水は米づくりにも欠かせねえ。遊佐は湧水のおかげで水の心配が少ねえし、湧水にゃケイ酸が多く含まれとるんで、稲の病気も出にくい。遊佐町の3000町歩(ha)の水田は、鳥海山の水に支えられとるのよ。今は減反で、3000のうち1000町歩は米をつくったらいかんちゅうことになってるけどな。

そのわりに休耕田が見当たらねえって? 減反したとこで飼料用米つくってっからな。したでば、米づくりの技術や機械がそのまま活かせっから。飼料用米は平田牧場の豚のエサになるのよ。で、その豚の糞尿を堆肥にして、田んぼに入れる。循環型農業だな。家畜の糞尿を堆肥にすんのは、昔は普通にやってたことだけんど、いっとき、田畑には化学肥料入れて、家畜の糞尿は産業廃棄物っちゅう時代もあったのよ。だがの、化学肥料使うと土壌生物が死んで、土が死ぬからな。

環境や水を守ろうちゅう活動もあるよ。農協で婦人部が石鹸運動始めたのは1975年だったか。合成洗剤を使わねえということと、廃油から石鹸をつくる事業な。今もやってっけど。川を守る条例(月光川の清流を守る基本条例)は90年にできた。町にアルミ工場ができたもんで、町民と町と、遊佐の農産物を食べとる生協の人たちが立ち上がって、工場移転にこぎつけたことがある。そのときに条例つくったんだ。

あとは減農薬だの。遊佐の米は60%以上が特別栽培米で、農薬を半分以下に減らしとる。飼料用米もほとんど減農薬でつくってんだ。人間にも豚にも安全な米つくって、水も汚れねえ。生きものも増えた。土を耕してくれるイトミミズなんか、いっぺえおるよ。無農薬の田んぼにはゲンジボタルもおる。無農薬にすると、うわっと雑草も増えるがのう。生きものにとっていい環境ちゅうのは、俺ら農家にとっては手間のかかる環境であることが多いのよ。だがのう、一回ダメにしたもんを元さ戻すのは難しいんだよの。したでば、ダメにさせねえようにやっていがねとな。

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