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2021.09.21(2021.10.15 更新)

すべてのこどもに自然を!プロジェクト

募集自然観察指導員報告

専門度:専門度3

自然観察指導員腕章の画像

テーマ:人材育成子育て

<簡単な進捗報告>(2021年9月更新)
「すべてのこどもに自然を!プロジェクト」は2020年度に自然観察指導員の有志と共に作った「実行委員会」で検討した結果、0歳~6歳(未就学児)に対しての活動支援をから取り組むことになりました。
小学生との活動支援についても実施していきますが、日本においても当会においても支援や実施が手薄であった乳幼児との自然観察会等の自然保護教育の実施支援から実施していきます。
(検討結果や詳細な報告は後日更新予定です)

 


すべての子どもに自然を!

自然体験は、子どもの感性・知性を育み、子どもの成長にとって大切だといわれています。また、自然と人がうまく付き合っている社会を作るためには、幼少期の自然の原体験※1が非常に大事です。(参考記事:【子育てと自然】第1回:子どもに自然とふれあわせるのはなぜ良いのでしょうか?
しかし、子どもの自然体験はまだまだ低水準に留まっています。そこで、日本自然保護協会ではすべての子どもに自然の原体験を届けることを目指し、まずは通常の自然観察会には参加しにくい境遇、特に相対的貧困の家庭の子どもも参加できる機会を作り、全国に広めるプロジェクトを始動します。

※1原体験とは、人の生き方や考え方に大きな影響を与える幼少期の体験のこと。例えば海の近くで育ち毎日のように磯で遊んだのが楽しかったため「美しい海は守りたい」と思う人がいたり、親から絵を褒められてとてもうれしかったので画家を目指す人がいたり、といった形で誰しも様々な形で持っているものです。

なぜ相対的貧困の家庭の子どもなの?

実は日本は貧困家庭の子どもが多く、そして増加しています

本プロジェクトでは、相対的貧困で、かつ豊かな自然が徒歩圏内にない家庭の子どもを対象にします。相対的貧困とは、家庭で使えるお金がその国の中央値の半分に満たず、国の文化・生活水準と比較して困窮した状態のことです。

日本は、人口に対して相対的貧困に該当する人を割合にした「相対的貧困率」がOECD加盟国の中で10番目に高い国で、おおよそ7人に1人の子どもが相対的貧困にあります。

日本は先進国の中でも所得格差が大きく、長期的にその格差は拡大傾向にあるのが現状です。

OECD加盟国相対的貧困率のグラフ

家庭の経済格差が子どもの自然体験の格差を広げています

日本では、世帯収入が低い家庭ほど子どもの様々な生活体験が少なく、学力が低い傾向があります。そして教育・体験の差が、学歴の差、そして大人になってからの年収の差にまで影響することがわかっています。このような貧困の連鎖は今大きな社会問題になっています。

幼少期の自然体験も、子どもの自己肯定感や学力に影響する要素の一つです。特に小学校低学年までの自然体験や動植物との関りが、その後の人生に影響を及ぼすことが分かっています。しかし自然体験についても、年収が低い家庭で少なくなっています。

世帯収入と学力の関係(小6の正解率)

金銭面だけでなく時間的にも精神的にも余裕がない家庭では、「子どもに自然体験をさせたい」と思ってもそれが叶わない場合があるのです。例えば、全国のひとり親家庭の50.8%は相対的貧困にありますが、親が家族を食べさせるために毎日働かざるを得ない場合が多々あり、疲れ果ててしまうという深刻な状況もあります。ひとり親でなくても、両親のどちらかが病気で動けなくなってしまうと、たちまち家庭の状況は変化します。日本では誰でも、いつでもこういった状態になる可能性があると、私たちは感じています。日本自然保護協会では、このような家庭の子どもたちが、通常の自然観察会に参加しにくい層の一つだと考えています。

すべての子どもが通う「学校」での自然体験を増やそうとする取り組みもあります。しかし、学校現場は多忙を極めており、よほど意欲的な教師と理解がある学校でない限り、自然体験を増やす余裕はほとんどないのが現状です。そして、コロナショックにより、さらに貧困家庭は増加することが予想され、家庭の境遇の格差による子どもの自然体験の格差はますます広がる可能性があります。

世帯年収ごとの子供の自然体験

子どもの頃の体験の多寡と最終学歴、現在の年収の関係図など国立青少年教育振興機構「子どもの体験活動の実態に関する調査研究」平成22年度に追記

幼少期の自然体験の豊かさが自然保護の実現に直結します

相無作為に選んだ全国の自然観察指導員に行ったアンケートの結果を見ると、どの年代の自然観察指導員も幼少期に豊かな自然と関りがあった方が多いことがわかります。また、幼少期の自然体験が高い人の方が、現在特定の守りたい地域を持っているということもわかりました。

実際に自然観察指導員に話を聞くと、大学・社会人時代には自然とは縁遠い生活をしていても、小さい頃に自然の中で過ごした楽しい思い出がきっかけとなって、その後自然保護活動を始めたという方がとても多く、幼少期の自然の経験の重要性を強く実感しています。

上記のデータと経験から、自然とふれあう原体験がない人が増えると自然を重要視しない社会が形成されやすくなると私たちは危惧しています。

そこで、一般の自然観察会に参加しにくい境遇の子どもであっても参加できるしくみを作り、自然が与えてくれる豊かな体験と学びの場を増やしていきたいと考えています。

木登りしている子どもの写真

男の人が草原で仰向けに寝ている写真

幼少期から小学生の年齢層別に自然とのふれあい程度を示したグラフ

NACS-J「2016年度自然観察指導員活動 実態調査」より

プロジェクトの内容は?

日本自然保護協会には、自然の魅力を伝えたいと願う、自然観察指導員の仲間が全国に8000人以上います。本プロジェクトに賛同いただける自然観察指導員の方と共に実行委員会をつくり、子どもを支援する他団体や施設からの協力も得ながら、相対的貧困家庭の子どもに自然観察会をとどけるプロジェクトを企画立案します。

まずはモデル地区を設定し、実施可能な方法を模索します。こういった活動をする際には資金調達が課題になりますが、その点も解決を試みます。
モデル地区での実証後、全国に広げていきたいと考えています。まだまだこのプロジェクトは始まったばかりで、赤ちゃんのような状態です。一緒に取り組みたいという方や団体の方を常に歓迎していますので、関心をお持ちの方はぜひお知らせください。

すすき野原で遊ぶ子どもの写真

プロジェクトの実施対象

相対的貧困であり、自分で気軽に行ける範囲に豊かな自然がない小学生以下の子ども。おおよそ4歳~10歳程度で検討中です。

※実際に貧困家庭の子どもだけを対象にするのは難しいので、保育園や児童館など、上記のような子どもが多いコミュニティを対象とする予定です。(詳細は実行委員会で検討)

プロジェクトの実施予定

2020年度に実現可能な企画をつくり、2021年度からモデル地域での実施、2022年度からは全国に活動を広めるための活動に移ります。

<今年度の予定>

2020年4月~7月
NACS-Jで調査、立案の下準備
2020年8月~2021年1月
実行委員会で調査を深め、次年度以降も含めた企画立案。協働団体とトライアル観察会の実施。NACS-Jで寄付募集や助成金応募を行う
2021年2月~3月
NACS-Jが中心となり次年度以降の準備をすすめる。

2020年度に一緒に企画を検討いただく実行委員を募集していました。すでに募集は締め切っていますが、募集時の記事はコチラです。

これまでのプロジェクトの実施内容

①2020年8月 実行委員決定

本プロジェクトに賛同いただき立候補頂いた多数の自然観察指導員の中から、地域や性別、活動経験などが多様になるようにバランスを考えて6名の方に実行委員を決定。中国地方、近畿、北陸、東海、関東など各地の指導員さんが担っていただけることになりました。

②2020年8月~2021年1月 大枠や方向性を検討

実行委員会を合計9回、各回2~3時間開催。本プロジェクトの方向性や内容を検討。

  • 主な対象とする子どもの年齢層や、こども食堂、フリースクール、学童保育、保育園、養護施設といった協働しうる主体など、本プロジェクトの様々な可能性を、個性あふれる実行委員と共に、率直な意見交換を重ね、検討しました。
  • 結果として、年齢としては「未就学児」を想定し、場としては、余裕のない家庭も含めて多くの家庭が利用するしくみである「保育園」で子どもに自然を届ける活動をしよう、ということになりました。
  • 実行委員会では当初は作成した案を実行委員の皆さんに試行いただく予定でしたが、コロナの影響で新規試行はできず、実行委員ご自身の普段の活動の中に取り入れていただくという形になりました。

③実行委員会終了後 2021年2月~ 具体化のための調査・検討

  • 実行委員会では大きな枠組みとしての方向性が決まりましたが、具体的な方法や事業としてどう進めていくのかについては検討をしていませんでしたので、終了後にNACS-Jが検討を進めています。
  • NACS-Jでは資金的にも限りがあるため、現実的かつ効果的にするには、具体的にどういった活動なのかを2021年5月現在も調査・検討中です。
  • 2021年の夏頃には、具体的な事業の方向性や進捗・予定についての報告会をオンラインで実施する予定で進めています。報告会は、自然観察指導員向けのメルマガ『しどういん徒然草』や会報『自然保護』で予告・お知らせします。

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