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2021.03.03(2021.03.10 更新)

【東日本大震災から10年】まとめ 〜自然とともにある地域のアイデンティティを育むために

①2012年、13年にNACS-Jが行った海岸調査の報告書。②都内で開催した防潮堤問題シンポジウム③2012年福島県相馬市松川浦にて。再生した海岸植物。④津波が来たときの海の様子を地元の人に聞いた。⑤現在、南三陸町で進むイヌワシプロジェクトにNACS-Jも協働している。⑥2019年に開催した親子向け南三陸町ツアー。

 


「自然の中で人と会話をする時間を久しぶりに持てて、ホッとする」。2014年に、大船渡市で開催した自然観察指導員講習会の受講者が呟かれました。被災地の人たちの生活の落ち着きとともに、自然と触れ合う場の必要性を実感した一言でした。

NACS-Jは大震災後、自然を活かした復興を目指す地域の方々と、海岸植物群落調査、防潮堤や海岸防災林復旧事業に対しての提言、絶滅危機の湿地植物の保全、自然観察指導員講習会や観察会などを行ってきました。

こうした活動で東北を訪れる度に、復旧工事が進む一方で自然が回復していく様を見てきました。東北沿岸の豊かな食材や文化の中には海と向き合う生活があり、津波の脅威を代々伝えながら紡がれた自然との付き合い方の中に、自然への畏敬の念を持っていることにも気付かされました。そして、そうした自然に根差した暮らしをうらやましくも思いました。

 

隔絶を越え築かれる海とのつながり

震災後に見せた自然の回復力は東北の自然の潜在力であり、その地の恵みにつながっていたはずです。それを十分に評価せず、残すこともできずに、復興の名のもと、川や海辺はコンクリートで固められ、東北沿岸の風景は劇的に変わり、海と生活が物理的に隔絶されたように見えます。しかし、今回の取材を通じて、この10年、地域で自然や住民と向き合ってきた方々の、隔絶を越えて海とのつながりを築いていきたいという思いが伝わってきました。

小泉海岸。子どもたちに伝えたいこと』で紹介した阿部さんは、「過去に経験のない非常事態だったこともありますが、防災という一面だけで復興計画が進められました。自然のしくみや価値を理解している人が少なければ、議論することさえ難しい。多様な見方・考え方を出し合い、取り入れ、防災だけでなく多面的に復興を考えるということができなかった。いつ何が起こるか分からないからこそ、子どもたちへの防災、自然、そして社会参画の教育が大切なんだと身をもって知りました」と話します。

今後、全国で起こりうる災害に対し、回復できる「自然のちから」を地域で失っていないかを見極める力が求められます。また、その恵みを地域で認識し感謝するためにも、会員の皆様には日頃から地域の自然を観察し、そして自然とともにある地域のアイデンティティを次世代につないでいただきたいと思います。

大野正人(NACS-J保護部長)

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