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Home リニア中央新幹線問題 TOPICS “地中の環境改変”だけでは済まないリニア工事の実態 〜トンネル残土があちこちに山積み、大鹿村の現状を視察しました

2019.06.10(2019.06.14 更新)

“地中の環境改変”だけでは済まないリニア工事の実態 〜トンネル残土があちこちに山積み、大鹿村の現状を視察しました

リニア中央新幹線の開発は、計画地のあちこちでいろいろな問題が発生しています。

ひとつひとつはたとえ小規模でも、範囲全体では大きな自然破壊になるというのが、道路や鉄道などの開発の問題です。リニア中央新幹線も、範囲が広いため全容が把握しづらい開発計画です。

そこでNACS-Jでは、リニア中央新幹線の建設による自然保護問題の現状の全体がわかるサイトをつくることにしたのです。
今回は、トンネル工事で出た残土はどこへ行くのかという問題です。


リニア中央新幹線の建設工事が各地で着々と進められています。環境大臣がアセス手続きの意見において、”環境保全を内包しない技術に未来はない”とまで指摘した巨大開発事業です。

日本自然保護協会では、これまでも本事業に対して環境保全の立場から事業の中止、見直しを求めてきていますが、残念ながら事業は進んでいます。

リニア中央新幹線は、その約8割がトンネルで計画されています。今回、南アルプス長大トンネルの工事現場である長野県大鹿村を、2018年10月25日~26日の日程で視察しました。

視察に参加したのは、当会亀山理事長、保屋野理事、牧田参与、鶴田事務局長、志村自然保護部長と辻村の6名です。

紅葉に色づいた山を正面に大鹿村の風景写真

大鹿村は、美しい村連合にも加盟していて、その自然と静けさが最大の魅力の山村です。

しかし、村に向かう道すがらから、工事の影響を体感することになりました。大鹿村へは、中央高速道路の松川インターから県道を利用してのルートになりますが、途中、何台ものダンンプカーとすれ違い、工事現場を目にしました。

これは、リニア路線そのものではありません。リニア工事には多くのダンプカーが行き来する必要がありますが、現在の大鹿村の道はダンプカーが行き来できるような広い道ばかりではないのです。そこで県道の線形を変更したり、ショートカットをするためにトンネルを掘ったりしています。現在のダンプカーはその工事の関連車両です。

リニア中央新幹線建設がなければここまで大規模に実施されることのない関連工事ですが、リニアの環境アセスにはこの関連工事は含まれていないので、環境への影響を検討する手続きなく行われています。

狭い道を走るダンプカーの写真

工事中のトンネル入り口写真

トンネルの中ですれ違うダンプカー写真

道幅の拡張工事を説明する看板写真

ミキサー車写真

▲いろいろな工事と、ひっきりなしにすれ違うトラック。

大鹿村ではまず、中央構造線博物館を訪問しました。ここで、学芸員の河本さんから南アルプスの成り立ちや、中央構造線について、そしてリニア中央新幹線の問題点について地質・地形学的観点からのレクチャーをして頂きました。

トンネルの斜坑出口付近にお住いの方も参加され、地下水を利用した生業への影響の懸念などもお聞かせいただきました。

清流の流れる川の写真

翌日は、大鹿村に次々に作られている建設残土の仮置き場の現状を釜沢地区の区長さんにご案内とお話を伺いました。

トンネル工事では膨大な残土が発生します。しかし、リニアの環境アセスメントではその処理方法までは明らかにされていません。最終的な処分方法が確定していないので、”仮置き場”として置かれているのです。

 

協会職員に説明する区長さん写真

 

協会職員に説明する区長さん写真

 

山あいの大鹿村には平坦な場所はけして多くありません。そのわずかな場所に、次々と残土が置かれようとしていました。

山と積まれた建設残土写真

静かな村の中に忽然とあらわれる残土の山。トラックが次々とやってくる。

建設発生土

建設発生土を囲む白い塀写真

残土の置き場を受け入れる地権者と、それを拒む地権者との間で、埋めることのできない分断が生じている様子が伺われました。公共事業などの大規模開発では、必ずと言っていいほどこうした地域の分断が生じます。

一度断ち切れた人間関係の修復は、自然再生よりも難しいかもしれないと思います。こうした分断を強いることに事業者がいかに寄り添えるかが問われます。

しかし、大鹿村では事業に携わる作業員に村民と触れ合うことを避けさせ、個別に交渉し地域の分断を進めていく手法がとられているようです。本当に悲しいことです。この現実を見ると、環境保全を内包しない技術に未来はないとまで指摘した環境大臣意見の先見性を改めて感じます。

大鹿村の良いところは、豊かな自然環境の中で育まれた歴史と文化であり、人工的ではない自然の豊かな音の環境です。
日本自然保護協会が大事と思い、後世に引き継ぎたいのは、こうした良いところです。

この記事をご覧になられた皆様には、ぜひ一度大鹿村を訪問していただきたいと思います。後世に何を引き継ぐことが、未来にとって重要なのかを、耳をすませて体感していただきたいと思います。

 

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