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2023.08.28(2023.08.29 更新)

陸上風力発電計画の3分の1に土砂災害リスク

調査報告

専門度:専門度2

松阪蓮風力発電計画地

(仮称)三重松阪蓮ウインドファーム事業の計画地には、斜面に崩壊地がいくつもある。

テーマ:生息環境保全森林保全里山の保全

フィールド:再生可能エネルギー

各地で山の斜面に太陽光発電施設が設置され、豪雨災害などによる斜面崩壊などのリスクの増加が懸念されます。

また、陸上風力発電施設は、比較的人家から離れた場所に建設されることが多いものの、大規模なものは巨大なタワーマンション並みの高さ200mの風車を多数設置するため、広範囲に渡って島状に土地改変が行われます。さらには風況の良い尾根上に建設されるため、搬入の際に幅30mほどの林道整備が長距離に渡って行われます。

これまでNACS-Jはこのような陸上風力発電施設の建設および稼働によってイヌワシやクマタカなどの猛禽類のバードストライク、自然林など自然環境への懸念が多大であることを示してきました。一方で、土砂災害のリスクに関しては、地元の方々などから指摘があったものの、その実態は不明でした。

約6割が土石流危険渓流部上部に計画

今回、どの程度の陸上風力発電計画が土砂災害リスクの高いエリアに計画されているかを明らかにしました(表)。

その結果、3分の1以上の陸上風力発電計画が土砂災害リスクの高いエリアを含めて計画されていることが明らかになりました。さらには、約6割の計画が土石流の危険がある渓流(土石流危険渓流)上流部の尾根部を切土盛土しての風車設置が検討されていることが明らかになりました。

計画地の状況 風力発電計画数 計画割合
土砂災害(特別)警戒区域 8 2.8%
土砂災害危険箇所 76 26.3%
急傾斜地崩壊危険箇所 3 1.0%
地すべり防止区域 34 11.8%
上記いずれか 101 34.7%
土石流危険渓流上流部での計画 168 58.5%

表:土砂災害リスクの懸念のある場所での陸上風力発電計画
建設計画中およびアセス手続き中の陸上風力発電計画287件(2023年6月現在)の計画地に含まれている計画数および割合を示している。

近年は山岳地域での計画が増加

これまで陸上風力発電計画は平地での計画が多く、太陽光発電とは異なって、土砂災害リスクは低かった陸上風力発電ですが、風車の大型化、山岳地域での計画の増大によって、今後、陸上風力発電計画と土砂災害の問題は顕在化すると思われます。

風車の画像今年運転開始されたJRE折爪岳南第一風力発電所。風車建設のために大きな道路がつくられた。

風車の土台部分の画像風車の下には小さなグランドほどの切土盛土でつくられたスペースがある。ここは約60m×60m

担当者から一言

若松さんの顔写真

リポーター
保護・教育部 若松 伸彦
土砂災害のリスクに加えて、火災のリスクもあり、山奥の計画は自然環境面以外にも防災面でも懸念が多いです。

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