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2020.11.02(2020.11.04 更新)

多くの市民連携で風車建設白紙撤回

解説

専門度:専門度3

風車建設後の景観イメージ

▲野堀嘉裕さん提供 羽黒山入り口の大鳥居後方に林立する風車のイメージ(事業主の資料を基に作成。位置とサイズは正確ではない)

テーマ:生息環境保全絶滅危惧種伝統文化

フィールド:再生可能エネルギー風力発電

今年8月、山形県の出羽三山(羽黒山、月山、湯殿山)周辺に、風力発電施設を建設する計画が発表されました。すぐに市民が結集し反対を表明。この計画は白紙となりました。その経緯をご紹介します。

佐久間憲生(出羽三山の自然を守る会・NACS-J評議員)


修験道の霊場として知られる出羽三山の山麓に、突如風力発電の計画が出てきた。8月上旬から1カ月間、風力発電事業「計画段階環境配慮書」の縦覧が行われると市の広報に掲載されたのだ。

事業主体は前田建設工業株式会社(本社東京)で、月山と羽黒山山麓に最大40基、高さ180mの風車で発電出力は12万8000kW、総面積は2296haの計画である。

 

豪雪地帯のブナ林伐採

月山山麓の予定地は標高400m~930mの豪雪地帯、原生的なブナ林の植生やブナ林の二次林が広がる。当会は会設立の1970年から国有林におけるブナ林の無謀な伐採中止を求めてきた。

その経験から、豪雪地帯でのブナ林伐採とその後の植林は、標高でおおよそ500mが限界と確認することができた。林野当局も豪雪地帯の高標高地ではブナ林伐採は1985年ごろから実施していない。

ブナ林は生物多様性の保全はもちろん水源涵養機能が高く、治山治水、土砂流失防止に大きな役目を果たしている。当地のような急峻でブナ林伐採後の森林回復困難な地帯では土砂災害や水害の発生が懸念され、ブナ林の伐採を伴う開発計画は実施すべきでない。

また、羽黒山山麓は猛禽類の営巣地が多くあり、しかも計画は市の風力発電ガイドラインよりも民家に近く、低周波に伴う問題発生が予想される。加えて両地区は出羽三山の神域であり、風車は景観上異質な存在で受け入れることができない。以上の理由で当会は反対運動を始めた。

 

迅速に展開した反対運動

出羽三山は千四百年もの間、そして今もなお羽黒修験道を行う山伏たちが宿坊を営み、日本遺産にも認定されている。地元住民はもちろん全国から「祈りの山」として心のよりどころ、山岳信仰の聖地に風車はいらない、と反対の声が上がった。

縦覧中の8月末、多くの団体・個人が呼びかけ人として「反対する会」を立ち上げ、反対のための署名活動を始めた。(9月15日現在、署名は全国も含め1万3000筆余り集まった)反対する会は羽黒山伏、宿坊組合、羽黒町観光協会、山小屋主人、市会議員、出羽三山精進料理プロジェクト代表、大学教員、出羽三山の自然を守る会などが結集し、事務局を鶴岡市羽黒町観光協会に置いた。

この反対運動が始まると同時に、地元鶴岡市長や県知事から建設に対して「遺憾の意」を示す発言が出てきた。そんな状況の中で、前田建設工業は直前まで地元説明会を開催していたにもかかわらず9月9日、同社ウェブサイトで計画を白紙撤回することを公表した。

まさに多様な市民の結束が白紙撤回に追い込んだものと思われるが、現在、月山山麓で風況調査を実施している外資系の企業もあり、引き続き気を引き締めていかなければならない。

 


絶滅危惧種二ホンイヌワシの生息地と風力発電事業計画の関係の現在

日本の伝統文化のなかに生きる動物たち

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