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2021.06.30(2021.06.30 更新)

再エネ推進による規制緩和と法改正

報告

専門度:専門度3

テーマ:生息環境保全森林保全環境アセスメント里山の保全

フィールド:規制緩和法改正

昨年10月の菅義偉首相の「2050年カーボンニュートラル宣言」から、再生可能エネルギー(以下、再エネ)を推進する号令の元、さまざまな規制の見直しが行われています。

化石燃料から再エネへ変換していくことは急務ですが、引き換えに地域の自然環境や生物多様性を失ってはなりません。最近の規制緩和と法改正の動向をお伝えします。

大野正人(NACS-J保護部)


河野太郎内閣府特命担当大臣を座長に、「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」(以下、タスクフォース)では、再エネに関わる規制や手続きについて、早急に緩和するよう各省庁に求めています。環境省には、風力発電に関する環境影響評価について、環境影響評価法の対象規模を、1万以上から5万以上へ引き上げるよう要請しました。

環境省は専門家による検討会を急遽設置。NACS-Jも日本野鳥の会ととも環境保護団体の代表としてオブザーバー参加し、対象規模の見直しに反対してきました※1。しかし、わずか3カ月4回の検討会で引き上げを内閣府の意向を組む形で決めました。

一方で、風力発電事業の環境影響はその立地に左右されることが多く、現行の環境影響評価法の限界も明らかになり、今後の風力発電事業を見据えた新たな「制度的枠組み」を検討することになりました。今後もその過程と制度設計を注視する必要があります※2

また、タスクフォースでは風力発電だけでなく、国立国定公園での地熱開発、農地や保安林、緑の回廊などについても各省庁に対して、規制や手続きの緩和を求めています。これまでの審議会などの検討に比べ拙速な議論であるだけでなく、短期間に結果(法改正や施行も含め)を求める傾向があります。自然を守る規制や手続きは、本来、丁寧な検討をすべきです。

 

温暖化対策法の改正

今年の通常国会(第204回国会)では、地球温暖化対策推進法(以下、温対法)が改正されました。これにより、地方自治体が再エネを活用した「地域脱炭素化促進事業」とその事業を導入する「促進区域」を地域の合意形成のもと設定できるようになります。

開発が制限される「保全区域」を設定する制度にならなかったため、いかに「促進区域」が地域の自然環境の脆弱性に配慮して絞り込まれるかが重要です。そのもととなる環境省省令の基準を的確なものにしなければなりません。

このような法改正に伴う課題を、NACS-Jが、国会議員の方たちに直接指摘した結果、衆議院や参議院の環境委員会審議の質疑の際にも取り上げられました。法案の可決の際に附される「附帯決議」では、下記のような項目が盛り込まれました。付帯決議は立法府の総意で出されるもので、政府は尊重しなければなりません。

《衆議院付帯決議の一部》

促進区域に関する基準については、国立・国定公園等の保護地域への環境保全上の支障を及ぼさないよう慎重に検討すること。

大規模な再生可能エネルギー施設を誘致する促進区域の設定を行なう場合には、再生可能エネルギーの種類毎の特性等を踏まえつつ、原則として国立・国定公園等の自然環境上重要な保護地域が回避されるような基準を設けること。

《参議院付帯決議の一部》

国は、その設置する施設について省エネルギー・再生可能エネルギー利用改修を計画的に実施し、エネルギーの使用合理化の促進や温室効果ガスの排出量削減等を図ること。効率的な二酸化炭素吸収源としての適正な森林対策、気候変動への適応策を関係省庁の連携の下、推進すること。

十四 地球温暖化対策の推進に当たっては、国際的にも生物多様性の確保が喫緊の課題であることに鑑み、本法に基づく施策も含め、地域への再生可能エネルギー導入拡大により地域の自然環境及び生物多様性の価値を損なうことがないよう十分留意すること。

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