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2021.04.01

環境影響評価法における風力発電事業の規模要件と環境影響評価のあり方の検討に関して声明を出しました

3月31日に、環境省・経済産業省は「再生可能エネルギーの適正な導入に向けた環境影響評価のあり方に関する検討会報告書」を公表しました。
この検討会は、2020年12月に内閣府に設置された「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」から、風力発電事業の環境影響評価法の規模要件を現行の1万kW以上から5万kW以上に引き上げるよう要請があったことが発端となり開催されたものです。

日本自然保護協会(NACS-J)は検討会に出席し、毎回、意見陳述や質疑応答を行い、検討の過程をつぶさにみてきた立場から、検討会報告書に対して以下のように声明を出しました。

本件については、(公財)日本野鳥の会からも見解が発表されています。

環境影響評価法における風力発電事業の規模要件と環境影響評価のあり方の検討に関する声明(PDF/183KB)


2021年4月1日

環境影響評価法における風力発電事業の規模要件と環境影響評価のあり方の検討に関する声明

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

この度3月31日に、環境省・経済産業省は「再生可能エネルギーの適正な導入に向けた環境影響評価のあり方に関する検討会報告書」を公表した。この検討会は、2020年12月に内閣府に設置された「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」から、風力発電事業の環境影響評価法の規模要件を現行の1万kW以上から5万kW以上に引き上げるよう要請があったことが発端となっている。2020年度末までに方針を出すようにとのタスクフォースからの要請のもと、検討会は年明けから3月25日までに計4回開催された。日本自然保護協会と日本野鳥の会は検討会にオブザーバーとして出席し、毎回、意見陳述や質疑応答を行い、検討の過程をつぶさにみてきた。この検討会では、検証と議論を丁寧にすべきところを、再生可能エネルギーの導入促進と行政の規制改革を御旗に、拙速に結論を急いできたことを遺憾に思うとともに、今後の風力発電事業への国民の印象を悪くしてしまったのではないかと危惧する。

検討結果の課題と提案を以下に述べる。

検討会の結論は、大きくは「風力発電事業の規模要件の5万kWへの引き上げ」と「法改正を含めた制度的枠組みの検討」の2点である。

 

1)風力発電事業の規模要件の5万kWへの引き上げの妥当性と今後の対応

 2012年に風力発電事業が環境影響評価法の対象事業となってからも、立地選定の不適切さや施設の大規模化にともない、全国各地で自然環境や希少猛禽類、渡り鳥、コウモリ等への影響が懸念される案件が増えている。そのため環境影響評価の手続きはより重要な状況にある。しかし、わずか3ヶ月で計4回の検討をもって規模要件を5万kWに引き上げたことは、結論ありきの拙速な検討であったと言わざるを得ない。検討会がまとめた報告書は、通常はパブリックコメントにかけられるが、今回は年度内に結論を出すことをタスクフォースから求められていたため、その手続きもないことは、環境影響評価法の趣旨にも反するものであると考える。この間にも、日本生態学会のような学術団体をはじめ、各政党からも意見や申し入れがされているため、少なくとも政令改正の際には、世間に広く周知して意見を聴取すべきである。

規模要件を5万kWに引き上げる根拠は、他の法対象事業の規模面積を参考に検討がされた。本来は大型化する風力発電事業の施設の高さやブレードの回転による鳥類や景観への影響を考慮する必要があることから、より厳しい要件を選択すべきである。ところが、面積100haをメルクマークとしつつ、産業廃棄物処分場の30haではなく、埋立て・干拓事業の50haを当てはめ5万kWに換算したことは、十分な議論がなく結論ありきであったと言わざるを得ない。

3月29日の第7回タスクフォースの場では、検討会の検討結果の報告と合わせ、今後の対応として検討会では議論も説明もされてこなかった以下のことが、環境省から示された。すなわち、通常の政令改正では施行は公布から1年後が一般的であるが、これを短縮して半年後とし、また、明確な基準は示されていないものの自治体の条例がおおよそ整うまでの経過措置として、7,500kW以上5万kW未満を第二種事業としてスクリーニング(法にもとづく環境影響評価を実施するか否かを判定する手続き)の対象とすることを説明した。7,500kW以上の事業については、必要と判断されれば規模に関わらず環境影響評価を実施することになるが、現行法ではその判定には環境省の関与はないばかりか、第二種事業は配慮書手続きが任意であることなど、大きな課題が残る。

 

2)「制度的枠組みの検討」と「現行制度下の運用改善」への期待と課題

規模要件の引き上げ以外では、現行法の運用上で課題となることについて検討が進んだことは一歩前進である。特に、「より柔軟なスクリーニング」や「簡易なアセスメント手続きの導入」を想定した「法改正を含めた制度的枠組みの検討」はこれまでの議論で現行法の改正では限界があることが明白なため、風力発電事業に特化した「地域の環境特性を踏まえたアセスメント制度」(すなわち特別措置法など新たな法制度)が必要であり、その法整備の検討を政令改正と平行して、年度明けから丁寧に行なうべきである。

また、事業者にとって対応にばらつきがあった「環境影響評価図書の継続的公開」は、事業者団体との連携とされているが、徹底させるには義務付け等の法的根拠をもたせるべきである。「事後調査の強化」についても、風力発電事業の影響を科学的に検証するうえで重要であるがゆえに、電気事業法上の特例を廃し、環境省への報告書の提出や環境大臣が意見を述べられるようにすべきである。

加えて、今後規模用件が引き上げられた後でも、現行法で手続き中の風力発電事業を条例アセスに移行することは法と条例の制度の歪みだけでなく自治体の負担を増やすことになるため、引き続き現行法で完了させるべきである。

以上


ご参考

「令和2年度再生可能エネルギーの適正な導入に向けた環境影響評価のあり方に関する検討会報告書」(2021年3月31日)(外部サイトに移動します)

第7回 再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース 会議資料(2021年3月29日、内閣府)(外部サイトに移動します)

「再生可能エネルギーの推進と生態系・生物多様性の保全に関する基本的な考え方」(2021年3月22日、日本生態学会)(外部サイトに移動します)

「風力発電に関する環境影響評価」の要件緩和に対する意見書(2020年12月15日、日本自然保護協会・日本野鳥の会)

国立公園内における再生可能エネルギー発電事業に関する意見書(2020年11月)

(公財)日本野鳥の会からも見解が発表されています

「再生可能エネルギーの適正な導入に向けた環境影響評価のあり方に関する検討会報告書」に対する見解を示しました(外部サイトに移動します)

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