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2018.08.31(2018.08.31 更新)

奄美・琉球諸島 世界自然遺産登録は延期

読み物

専門度:専門度3

自然観察指導員講習会(写真)

▲西表島の自然や文化を知る地元の方を招いての自然観察指導員講習会。

テーマ:生息環境保全世界遺産

価値はあるが保全体制が不十分

IUCN(国際自然保護連合)の評価の要点は、推薦された地域が、絶滅危惧種をはじめ多様な種の保全につながる世界的に重要な場所であると認めつつ、その価値を長期にわたって保全する体制が不十分というものです。日本自然保護協会は、極めて妥当な評価と考えます。

課題とされた長期的保全には、保護地域としての完全性(Integrity)の要素である「保護措置」「適切な区域設定」「管理」「地域参加」「危機対策」が重要視されます。このうち、区域設定については、飛び地のような小さな推薦地の見直しと保護地域間のつながり(連続性)を高めることが求められました。危機対策については、推薦地の価値に影響を及ぼす外来種への対策、持続可能な観光利用に関する計画づくりと実施が求められました。

評価できる推薦取り下げ

環境省は推薦取り下げの理由を、早期に作業を進めるためとしています。登録延期という決定は、推薦国に推薦書を改善の上、提出し、再びIUCNの評価を受けることを求める決定です。登録延期の判断を受けてから再提出しても、いったん取り下げてから再提出しても、登録のタイミングは変わりません。世界遺産委員会の場でIUCNの助言をひっくり返す働きかけもできた中で、IUCN評価を全面的に受け止め再申請に向けて動き始めたのは、奄美・琉球諸島の長期的保全を考えると評価できる判断です。

世界遺産に向けた提案

再申請手続きの中では、世界遺産地域(自然公園法指定地域)の見直しが焦点です。しかし、日本自然保護協会では、世界遺産管理地域(世界遺産の保全に貢献する場所としていく地域)という考え方を導入し、現在全く考慮されていない沿岸や海洋も含めた豊かで希少な奄美・琉球諸島の生物多様性保全を進めていくべきと考えています。また、課題とされた参加型プロセス(十分な情報公開・市民や地域住民の参加)の徹底と、対策強化(外来種管理、環境収容力に応じた観光管理計画)も重要です。

日本自然保護協会では、自然観察指導員講習会開催をきっかけとした西表島でのエコツーリズム体制支援や、島しょにおける外来種対策強化の政策提言などを通じて、世界遺産にふさわしい保全の取り組みに貢献していきます。

道家哲平(日本自然保護協会 広報会員連携室)

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