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2018.05.17(2018.05.17 更新)

世界自然遺産ってなに?

解説

専門度:専門度2

テーマ:生息環境保全世界遺産

よく聞く「世界遺産」ってどんなもの?
奄美・琉球の自然の価値をきちんと知るために、世界自然遺産の基本について、吉田正人さんに教えてもらいました。

※会報『自然保護』2018年5・6月号 特集「世界自然遺産の島 in Japan」より転載


Q.1 『世界遺産』って、何ですか?

世界遺産のしくみは、『人類共通の宝』として守るべき自然や文化的な遺産を、国際協力によって守っていこうという目的で生まれました。しくみができたのは1972年。当時は、貴重な文化的遺産や自然が、戦争や自然災害、密猟などにより各国で失われていたので、それらを国際協力で守ろうとしたんです。この国際協力に参加する国は「世界遺産条約」を批准しています。

世界遺産はいずれも「顕著な普遍的価値」を持つもので、遺跡や文化的景観など人の歴史の中で継承されてきたものは「文化遺産」、生態系や地形・地質、絶滅危惧動植物の生息地などは「自然遺産」、両方の性質を持つものは「複合遺産」となります。

▲かつてダム計画で水没の危機にあり、世界遺産条約発足のきっかけとなったエジプトのアブシンベル神殿。

 

 

Q.2 素晴らしい観光スポット、ということですか?

よくある誤解ですが、世界遺産は観光の看板ではありません。最近、地域おこしに使える、といった発想で登録を目指す傾向が世界的に強まっていますが、本来の目的はそうではなく、あくまで「世界のみんなで守らなくてはいけないもの」です。

 

 

Q.3 どんなところが自然遺産になるのですが?

世界自然遺産は、表にある4つの基準のうち1つ以上を満たす必要があります。加えて、「『完全性』が保たれているか」、「国内法で保護が担保されているか」、「保護のための管理体制が整っているか」という点が評価されます。「完全性」は、遺産の価値を説明するために必要なすべての要素を含んでいるか、面積は十分か、開発などによる負の影響がないか、ということですね。

実は、日本には「地形・地質」の基準で登録された世界遺産がありません。地震や火山など大地の活動が活発な日本列島ですから、今後この視点からの世界遺産登録も検討されていくかもしれません。

 

 

 

Q.4 『危機遺産』というものもあると聞きましたが……?

はい。世界遺産の中には、戦争や自然災害、開発などでその価値を失いかねないものがあり、そのような場所が「危機にさらされている世界遺産リスト(危機遺産リスト)」に登録されます。人類の宝を守る、という世界遺産の本来の目的からすると、とても重要なリストと言えますね。

▲ゾウガメなどの固有種が多く生息することで世界初の世界自然遺産となったガラパゴス諸島は、2007年に観光圧力などにより危機遺産リストに登録されたものの、エクアドル政府の保護対策により状況が改善し、2010年に危機遺産リストから削除された。

 

 

Q.5 世界自然遺産、日本には何ヵ所ありますか?

日本では2018年4月現在、知床、白神山地、屋久島、小笠原諸島の4カ所が登録されていて、奄美・琉球が登録されれば5カ所目となります。陸域動植物の分布に着目した世界的な地理区分では、日本は下図青字の5つに分けられていて、それぞれの地理区分に1カ所ずつ登録・推薦されている状態です。
ちなみに、富士山は文化遺産として登録されています。

 

 

Q.6 日本自然保護協会が世界遺産にかかわってきたのはなぜ?

NACS-Jは1992年の日本の世界遺産条約批准を強く後押しし、日本初の登録地となった白神山地を推薦するなど深くかかわってきました。
NACS-Jが世界自然遺産にこだわってきたのは、これが自然を守るための強力なしくみのひとつだからです。例えば、日本の国内法に定める保護地域には、国立公園や国有林の生態系保護地域などがありますが、世界遺産登録地域になれば、国際的にもきちんと守られる場所になります。また、世界遺産登録地域になれば、国有地である国立公園や国有林の管理計画の策定に、市民や研究者がかかわる機会が増えることが期待されるためです。地域連絡会や科学委員会が設置されれば、自然の適切な保護や利用について、より多様な視点で、より良い形で保護していくことができます。自然保護のために、とても重要なしくみだと考えています。

 

(吉田正人/筑波大学大学院人間総合科学研究科世界遺産専攻教授。NACS-J専務理事。筑波大学勤務以前は20年以上NACS-Jに勤め、世界遺産条約批准の推進などに取り組んできた。国際自然保護連合(IUCN)日本委員会前会長も務める。)

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