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2017.07.06(2017.07.07 更新)

ヒアリにアカカミアリ……外来種問題、本当に怖いのは?

解説

専門度:専門度2

テーマ:外来種

ここのところ、ヒアリやアカカミアリのニュースがメディアをにぎわしています。「侵略的外来種」という言葉を今回の件で知ったという方も少なくないのではないでしょうか。この2種は、噛まれるとアレルギー症状が出ることがあり人体にとって危険なために、メディアでも大きく取り上げられています。
しかし、外来種問題の本当の怖さは人体に危険ということではありません。外来種とは、人の移動手段が人力から動力に変化し移動速度が格段に速くなってから、人の手によって移動させられた生きものを言います。 日本では明治以降になります。そしてその外来種の中でも、他に競合する生きものがいなく、元々その地で暮らしていた生きもの(在来種)を駆逐して爆発的に生息・生育地を拡大していくものを侵略的外来種としています 。歴史的にできあがった自然のつながりが壊されることこそが外来種問題の本当に怖いことなのです。ヒアリやアカミミアリも生態系への影響に対する危険を重視しなければいけません。

外来種の侵入が確認された場合、初期段階で完全駆除を徹底することが今は最重要です 。ヒアリやアカカミアリでは、関係する機関や専門家の方々が今、その最大限の努力をされている状況ですので我々はそれを見守りたいと思います。一日も早く根絶宣言が出されることを願っています。

 

世界自然遺産に登録されている小笠原諸島では、ノヤギを駆除したあと別の外来種が爆発的に増えてしまったり、固有種が外来種に依存してしまったりと、外来種との終わりなき戦いが 続いています。これは侵入した初期段階での駆除ができずに拡大してしまったものと戦っているからです。根絶することのできない種も現実としてはあります。そうならないためにも、ヒアリ・アカカミアリを今の初期段階で完全駆除することが重要です。

小笠原侵入している外来種の一部(左上から右に:ノヤギ、シチヘンゲ(ランタナ)、グリーンアノール、アカギ)

 

ところで、あなただったら、費用対効果が高く、かつ外来種問題を引き起こさない方法として、どんな方法が思い浮かびますか?
それは、外来種を“入れない”ことです。しかし、グローバルなつながりがある現代では、最も難しいことでもあります。ヒアリもそうでしたが、外来種はいろいろなものと一緒に混入して運ばれてくるので、物流を止めない限り実現できないからです。もう一度鎖国するということは現実的ではないですよね。

 

それでも、できることもあります。それは不必要な物資の移動をやめることです。日本は島国です。そしてその成り立ちから地形や地質が複雑に入り組んだ箱庭のような自然環境をしています。同じ日本という国であっても、その土地土地でそれぞれの生態系があります。ましてや国内といっても海を挟んだ島と島では生態系は全く別物のこともあります。 せめて、島と島の間で土砂の移動を制限するとか、やむをえず入れなければならないのであれば徹底した検疫システムを作るなど、できることもあるのです。

 

固有種の多い島では、島外から持ち込む海の埋め立てに使う土砂はすべて焼却処理を施すことも考えられます。そんな対策をしたらいったいいくら費用がかかるのか、費用がかかりすぎて現実的ではない、と思われますか? しかし、外来種が蔓延し、在来の自然に致命的な打撃を与え、多くの絶滅種や危惧種を作りながらも終わらない戦いを続けることと比較した場合、どちらが“安い”のでしょうか。

私たちは発展した経済社会の中で、多くの利便性を享受しています。今回の外来アリの侵入をきっかけに、一度立ち止まって、未来の社会のありようを考えることも重要ではないでしょうか。私たちは、できるだけ日本の国土でまかなえる範囲の生活で幸せを感じる社会を目指したいと考えています。

(保護室/辻村千尋)

(写真はすべて 外来生物写真集 より)

 

日本自然保護協会では、外来種問題に対してさまざまな活動を行っています。詳しくは下記をご覧ください。

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