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2021.09.22(2023.09.22 更新)

人とクマの共存 ベアートランクキットを使った普及啓発を担う人材育成のプレワークショップ

イベント報告

専門度:専門度3

テーマ:環境教育人材育成絶滅危惧種獣害問題

近年、市街地にクマが出没するクマ、いわゆる「アーバンベア」が問題になっています。この問題に対し、日本クマネットワーク(以下、JBN)はクマの生態やアーバンベア問題の背景を正しく普及するために、オリジナルの普及啓発キット「ベアートランクキット」を活用する人材育成を進めており、日本自然保護協会(NACS-J)は、この活動に協力しています。今回、神奈川県で活動する自然観察指導員の皆さんにご協力を頂き、市民の方々にクマのことを正しく理解してもらうための、ベアートランクキットの活用方法についてのワークショップを開催しました。


アーバンベア問題とベアートランクキットの解説

▲アーバンベア問題の解説の様子

近年、市街地に出没するクマ、いわゆる「アーバンベア」が問題になっています。この40年、クマの分布域が拡大していることに加え、従来、緩衝地帯となっていた中山間地域の過疎化、放棄果樹等の誘引物などが背景にあると考えられています。10年程前までは秋にドングリ等が凶作の年に出没が増えると言われていましたが、近年は夏期の出没も増えるなど変化が見られます。ただ、市街地にまでクマが出没するはっきりとした原因はわかってないのが現状です。
人とクマが共存するためには、クマの生息域や生態、適切な対処法など正しく理解して行動することが不可欠です。

 

▲ベアートランクキットの中身

JBNでは、クマの正しい知識を普及することを目的として、クマの毛皮や骨格標本、クマ対策グッズサンプルなどの啓発活動に役立つアイテムと、その使い方を紹介したティーチャーズガイドが入った「ベアートランクキット」を作成し、広く貸し出しを行ってきました。近年、アーバンベアの問題が広がっているため、より多くのベアートランクキットを作成し、活用してくれる人材の育成を進めようとしています。

グループワーク

クマの専門知識をもつ日本クマネットワークメンバーと、日頃から地域で自然観察会を行っている自然観察指導員の方々が、伝える対象毎に以下の3つのグループに分かれ、ワークショップを行いました。

グループA:クマが生息していない都市部の住民

グループB:クマ生息地隣接地域の住民

グループC:クマ生息・出没地の地元住民

1.「クマとの共存のため、何を伝えるか?」

まずは、人間とクマの共存のために、市民の方々にクマのどんなことを知ってほしいかを各グループの特性を踏まえながら、考えました。さらに、それぞれのグループで出たアイデアについて共有しました。

 

2.「トランクキットを使ってどう伝えるか?」

先の話し合いを踏まえ、実際にトランクキットを使ってどういった普及啓発活動ができるか?どういったプログラムを組めば、より効果的な普及啓発ができるか?考え、トランクキットの改善点などを考えてもらいました。

 

グループワークの結果の発表

普及啓発活動におけるベアートランクキットの活用法についてグループごとに出し合ったアイデアを発表してもらいました。

グループA:クマが生息していない都市部の住民

  • レジャーでクマのいる山林などを訪れるような親子を対象として想定
  • クマの生態やクマは案外身近に生息していることを知ってもらう
  • 実物大ポスターや毛皮を使い、自分と比較してクマの大きさを体験してもらう
  • 毛皮や骨を使って楽しく体験してもらう
  • ハクビシンやタヌキのような身近な哺乳類と比較して生態を知ってもらう
  • 県内のクマ分布域と同心円を示して、自宅と生息地との距離を具体的に知ってもらう
  • タヌキ等と違いクマが横浜市に生息できない理由を考えてもらう
  • クマの足型等も実物大であるとよい
  • タヌキ等の都市的な動物の標本も比較のためにあるとよい

グループB:クマ生息地隣接地域の住民

  • 小さい子供のいる母親を対象
  • ショッピングモールのような不特定多数の人が集まる場所でWSをすると、普段あまり関心のない人にも伝えることができる。
  • 地元地域の地図を使って、実際にクマがどこに出没しているかを示してその特徴を解説する。
  • クマの農作物被害を識別できるように食痕の標本や、フィールドサイン、痕跡の一覧などがあると良い
  • 市街地に出没して(呼んで)しまったら、クマを殺してしまわざるを得ない場合が多い実態をわかってもらう。
  • 肉球のプニュプニュ感がわかる標本等があるとより良い
  • 毛皮には爪を付けたり、頭の型を整形したりするとより良い

グループC:クマ生息・出没地の地元住民

  • 小学生の親子を対象
  • 紙芝居や頭骨、足形の標本類を使ってクイズ形式で楽しく解説
  • 解説するだけでなく、一緒に考えるプログラム
    • クマに出会わないような対策をすればよいか?
      • →子どもの登下校時の対応、ヤブの刈払いなど見通しの確保など
    • クマに出会ってしまったらどうするか?
      • →落ち着いて後ずさり
    • なぜクマは出没するのか?
      • →誘引物の除去、ゴミの処理など対応を学ぶ
    • クマの森での役割
      • →種を運ぶ

 

今回、積極的に活発な議論が繰り広げられ、日頃の自然観察会活動を活かした意見を出して頂くことができました。ありがとうございました。NACS-Jでは、引き続きJBNと連携し、今後は他の地域でも、開催していきたいと考えています。自然観察指導員の皆さんと協力して、人とクマの共存する社会づくりを進めていきたいと考えています。

 


ベアトランクキットの貸し出しについて

今回のワークショップで活用したトランクキットはJBNホームページからどなたでもレンタルすることが可能です。環境教育の現場などで、クマとの共存を考える教材としてご活用いただけます。*詳しくは以下のリンクから

日本クマネットワークのトランクキット貸出申込


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▲Save The Island Bear|四国のツキノワグマを絶滅の危機から救いたい
(画像をクリックすると特設サイトに移動します。)

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