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2021.02.22(2021.02.22 更新)

中池見湿地の水環境調査のため、旧マンガン廃坑に入ってきました

調査報告

専門度:専門度3

テーマ:里山の保全

フィールド:湿地

2020年12月、北陸新幹線のルート建設に伴うトンネル工事による、マンガン廃坑の水環境への影響を調査するために、自然観察指導員の藤野勇馬さんと一緒に坑内に入ってきました。そのときの様子をお伝えします。


中池見湿地(福井県敦賀市)は世界的にも希少な約10万年の歴史をもつ、40mもの厚さの泥炭層が堆積している湿地で、トンボなど生物多様性豊かな環境が評価され、2012年7月に世界的な保護地域であるラムサール条約の湿地として登録されました。

しかし、登録直後に湿地を貫通する北陸新幹線のルートが公表されました。
日本自然保護協会(NACS-J)は地元市民団体と共に保護活動に取り組み、2015年に環境影響がより少ないルートへの変更が実現しましたが、湿地の水源となる山を貫通する計画となっています。

その後、NACS-Jなどの働きかけにより国内で初めてとなるラムサール条約ガイドラインに基づく「環境管理計画」が策定されましたが、湿地の水源となる山を貫通するトンネルの掘削工事が2019年1月からスタートし、2020年8月にはトンネルが貫通して、漏水を遮断するための工事が現在も進んでいます。

トンネル掘削が進む山には、昭和の初めまで使われていたマンガン廃坑があります。現在、山には12カ所の坑道が残っていますが、その中で唯一地下水が流入している坑内には、調査の結果、中池見湿地ではここでしか見つかっていないミジンツボの仲間(写真1)やメクラミズムシモドキ(写真2)など、地下水性の生物が生息していることが工事前からわかっていました。この場所はトンネルにも近い場所にあるため、工事の影響が懸念されていました。

▲写真1:ミジンツボの仲間(藤野勇馬氏撮影)

▲写真2:メクラミズムシモドキ(左)とメクラヨコエビ(右) (藤野勇馬氏撮影)

幸い、今回のトンネル掘削工事では、発破をほとんど使わなかったため、坑道が崩れるなどの直接的影響はありませんでしたが、トンネル内に地下水が排出されていることに加えて、夏~秋にかけて降雨量が少なかったこともあり、市民団体の方の調査では2020年10月には坑内の水がなくなる状態となっていました。

▲写真3:2019年以前の様子(藤野勇馬氏撮影)

▲写真4:2020年10月の様子。水がほとんどなくなっている(藤野勇馬氏撮影)

そこで2020年12月11日に、トンネル工事によるマンガン廃坑の水環境の状況を調査するために、ここで調査・観察を続けている自然観察指導員の藤野勇馬さんと一緒に、坑内に入ることになりました。

坑道の入口は周囲の土が崩れて狭くなっていて、足から大人1人が入るのがやっとの状態でした。
入り慣れた藤野さんがササっと入るのに続いて、私も意を決してマンガン廃坑に入りました。今回自分が入ることを想定していなかったため、懐中電灯の準備もなく、明かりは携帯電話のライトのみ。狭い入り口からやっと体制を整えて辺りを照らしてみると、古い坑道ではあるものの、中はしっかりした作りで、10mくらいで行き止まりとなっていました。

「いつもは行き止まりの岩盤から水が流れ込んでいて、水が溜まっています。10月はまだ地面が湿っていたけど今日は乾いています」と藤野さんは言いながら、地面を掘っていましたが、地下水性の生き物を見つけることができませんでした。携帯電話のライトを壁面に照らしてみると、湿って水滴がついている岩陰に直径4cmほどのコアシダカグモが1匹はりついていました(狭い空間に一緒にいるだけでも、少々怖い。)

「今までこの坑道でコキクガシラコウモリやアナグマなどにも会ったことがあります」と藤野さん。

今日は大きな動物はいませんでしたが、足元を照らすとコキクガシラコウモリらしき白っぽい糞を見ることができました。

今回のマンガン廃坑の調査結果は、翌日行われた事業者と市民団体との意見交換会でも関係者に共有され、水環境の変化により中池見湿地ではここでしか見られていない稀少な地下水性の生物が死滅してしまわないよう、今後も市民団体で調査を続け、関係者で共有しながら保全対策を検討することになりました。

 
その後、中池見湿地では年末年始の積雪で降水量が増え、1月中旬には藤野さんからマンガン廃坑の水位が戻り、生き物も見られるようになったとのご連絡を頂きました。しかし、今後の天候もどうなるか読めず、トンネル建設により水みちが変わる可能性があるため地元の市民団体の方々と一緒に監視を続けていきたいと思います。

今後も各地の貴重な自然を守るため、NACS-Jの活動へのご支援・ご協力をよろしくお願い致します。

中池見湿地の水環境調査のモニタリング結果は以下から見ることができます。
中池見湿地付近に関する情報(JRTT・外部サイト)

市民活動推進部 福田真由子

※私たちの活動は皆様からの会費やご寄付で支えられています。日本自然保護協会の活動にご支援をよろしくお願いいたします。日本自然保護協会の貴重な自然を守る活動に寄付をする

 


ご参考

北陸新幹線が貫通するラムサール条約湿地「中池見湿地」のトンネル工事現場を視察しました!(2020年4月)

北陸新幹線トンネル工事で中池見湿地のマンガン採掘坑の生き物はどうなる?(2017年7月)

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