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2020.02.05(2020.02.07 更新)

【報告No.2】砂浜しどういんサミット2019 in表浜〜日本で絶滅危機とされている砂浜での自然観察指導員研修会〜

イベント報告

専門度:専門度1

テーマ:環境教育人材育成

フィールド:砂浜

>>【報告No.1】砂浜しどういんサミット2019 in表浜(インターン乙幡雄介さん編)

2019年10月、日本自然保護協会は、陸に比べて遅れている海辺の自然保護を、自然観察の力で進めようと、「砂浜しどういんサミット」を開催しました。全国各地から集ってくださった参加者のお一人、田中広樹さんが参加報告をおよせくださったのでご紹介させていただきます。

なお、日本自然保護協会の砂浜を守る活動は、多くの方のご寄付・会費によって実施できました。 こんどはあなたも次世代に自然を手渡すためにご支援いただけませんか。当会への会費や寄付は、所得税の控除対象になります。

砂浜の自然を守る活動を支援する!


砂浜しどういんサミットに参加してきました。

大阪自然環境保全協会/自然観察指導員大阪連絡会 田中広樹

2019年10月19日(土)~20日(日)の1泊2日で公益財団法人日本自然保護協会(NACS-J)の「自然観察指導員研修会2019 ~砂浜を見る目を持つ仲間を増やそう!(砂浜しどういんサミット)」が愛知県豊橋市の「表浜まるごと博物館」にて開催されました。

神奈川県、三重県、徳島県、愛媛県などから集まった参加者10名が、充実した2日間をともに過ごし、語りあい、たくさんのことを学びました。

会場となった表浜まるごと博物館は、NPO法人表浜ネットワークの活動拠点施設で、表浜の自然の情報ステーションとして数々の標本や展示物、文献等が集められているほか、古民家を改装した宿泊施設としても利用されています。

表浜は、渥美半島の太平洋側、伊良湖岬から浜名湖までの約50kmも続く遠州灘に面した海岸で、そのほとんどが自然海岸や自然度の高い半自然海岸としての砂浜海岸であり、アカウミガメの産卵地となるなど豊かな砂浜の自然環境が残されています。

この表浜は全国に残された砂浜の中でも年間を通じて安定した風があることで大規模洋上風力発電の候補地ともなっていることから、NACS-Jとしても重点的に保全活動を展開していくべき砂浜と考えているとのことでした。

研修会の講師は自然観察指導員佐賀県連絡会会長の前田修之さん、海の生き物を守る会代表の向井宏さん、NPO法人表浜ネットワーク理事長の田中雄二さん、そしてNACS-Jの高川晋一さんという豪華メンバーで、砂浜についての講義と砂浜でのフィールドワーク(約2時間×3回も!)、またそれぞれの参加者の活動報告やフィールド紹介もたいへん有意義なものでした。

砂浜は生物観察がしにくいことなどからこれまであまり観察会活動の場として活用されてこなかったのですが、全国で砂浜の消失、海面上昇などの問題が表面化してきており、今後もっと力を入れて保全に努めていかなければいけないフィールドと認識されています。

NACS-Jでは『全国砂浜ムーブメント2019』として、「豊かな日本の砂浜を守り続けるために、砂浜を見る目を増やしたい。目指せ10万人のムーブメント!」というキャンペーンを9月20日から12月31日までの期間で展開されています。「砂浜ノート」というとてもわかりやすい小冊子を作成され、海辺での観察会活動を支援してくださっているところです。

私は、大阪自然環境保全協会で、いろいろな海辺の観察会活動に取り組んでいます。砂浜での活動としては、「微小貝プロジェクトチーム」というグループで行っている「須磨海岸での貝がら拾い」「尾崎海岸での標本箱づくり」などの観察会、また「微小貝さがしサポート図鑑」という参加型WEB図鑑の運営をしています。

今回の研修を受け、これまでは砂浜に打ちあがっている貝がらばかりを観て、砂浜の環境というものを観ていなかったなあということを実感しています。それぞれの砂浜に、どこからやってきたどんな砂がどれくらい堆積していて、どこへ運ばれていくのか、海の中はどうなっているのか、海辺の消波ブロックなどの構造物は何のために設置され、砂浜にどんな影響をもたらしているのか、台風や大雨の影響で砂浜がどのように変化するのか、そういうことに非常に興味が出てきました。

私も砂浜ムーブメントに乗っかって、大阪連絡会主催の砂浜観察会を阪南市の尾崎海岸や神戸市の須磨海岸で開催してみようと考えました。そして保全協会の微小貝プロジェクトとも連動して、大阪湾の砂浜環境を観察する活動を拡大していきたいと思います。

もう一つ、今回の研修で思い至ったことがあります。「守るべき砂浜」という言葉がありますが、須磨とか尾崎とかは、いろいろな問題はあるとはいえ、現時点で開発や破壊の危機に瀕しているというわけではないと私は考えています。

私がその言葉で思い出したのは、石川県の増穂浦のことです。増穂浦は日本三大小貝の浜の一つということで、2015年と2016年に訪れ、微小貝さがしを楽しんだのですが、この海岸のある富来(とぎ)という町には、「三十六歌仙貝」という風習が残されているのです。

これは、この海岸で拾える36種の貝を拾い集めるとともに、それぞれの貝が詠み込まれた36首の和歌を覚えるという遊びです。今では36種類すべてを拾うのは難しくなってきているといわれ、また伝承の努力をしなければもしかしたら風習としてもなくなってしまうのではないかと心配しています。

そこで、大阪から少し距離はあるのですが、増穂浦をマイフィールドの一つとして、つながりを持っていきたいと思いました。そう思ったことは、私の中でとても大きなことです。

私は最近ウミウシ探しに夢中になっていて、貝がら拾いに以前ほど熱心ではなくなっていましたが、この研修でいろいろなことを学び、また表浜で拾った貝がらを観察していると、やはり貝がら拾いが一番幸せだなあと思い出しました。とてもいい機会となったことを喜んでいます。今後も、NACS-Jとの連携や大阪連絡会での活動に取り組んでいきたいと考えています。

写真1 表浜

写真2 海浜植物が根を張って崖を作っている

写真3 砂浜の内側にできる水たまりのような環境もある

写真4 自然にできた砂の崖を観察

写真5 波打ち際から山まで砂丘がつながる

写真6 砂丘を登るのはかなりたいへん

写真7 砂丘の裏側は落ちくぼんだようになっている

写真8 風によって削られてできた崖には化石がたくさん見つかる

写真9 スナガニ類のマンション

写真10 スナガニかミナミスナガニかナンヨウスナガニかで盛り上がる

写真11 朝からキスを釣る人たち

写真12 砂浜のことはサーファーが一番知っているのかもしれない。

写真13 表浜まるごと博物館

写真14 貝がらとビーチグラスで作られている

写真15 表浜まるごと博物館の表札の裏

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