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2019.01.07(2018.12.27 更新)

東京都中野区の哲学堂公園の樹木を守るためにどんな活動をしたか、紹介していただきました

募集自然観察指導員

専門度:専門度1

参加者と一緒に斜面林に生える樹木を観察

テーマ:環境教育

フィールド:森林公園

会報『自然保護』1・2月号で、NACS-J自然観察指導員東京連絡会の髙野丈さんに、哲学堂公園の樹木を大伐採から守るための活動についてご紹介いただきましたが、その詳しい方法については、誌面の都合で全文をご紹介できませんでした。どんな活動を展開したのか、ノーカット版を掲載します。(編集室)


 

『自然観察会を通して、一緒に「哲学堂公園」の自然を守りませんか?』

 

NACS-J自然観察指導員東京連絡会(NACOT)
髙野 丈(たかの じょう)

 

「公園再生」のための樹木整理?

哲学堂公園は東京・中野区の閑静な住宅街にある区立公園です。東洋大学の創設者である哲学者の井上円了が精神修養の場として設けた公園で、随所に設けられた哲学にかかわる施設が、今も残っています。公園には野球場やテニスコートなどの施設が整備された区域がある一方で、緑地が残されている区域もあります。公園は落合・目白崖線とよばれる河岸段丘にあり、南側には妙正寺川が流れています。この崖線沿いにうっそうとした斜面林が残っています。

この林に危機が訪れました。管理者である中野区が、東京五輪が開催される2020年に向けて外国人観光客を誘致するためという名目で「公園を再生」させるというのです。2017年に策定された「哲学堂公園再生整備基本計画」には、ヒマラヤスギの大木7本を伐採しての学習展示施設建設、見通し確保のための樹木伐採、公園全体の「樹木整理」などが含まれていました。2018年、同じ区内の平和の森公園で樹木が大量に伐採され、中野区の「公園再生」と「樹木整理」の問題が表面化しました。

自然観察指導員の中村芳生さん(樹木を守る会・中野)は、このままでは哲学堂公園の樹木も危ういと考え、行動を起こしました。平和の森公園の整備を問題視する団体や、地域の子育て支援団体などに連携を呼びかけました。井の頭公園などで中村さんと一緒に活動している私も協力することにしました。

 

クスノキの香りをかぐ参加者たち
▲クスノキの香りをかぐ参加者たち

 

樹木を大伐採から守るためのあの手この手

私は、この問題を広く多くの人に知ってもらうことが先決だと考えました。計画を推進する中野区が市民の意見に聞く耳をもたないというので、平和の森公園の樹木伐採の前後を比較できる写真を効果的に使い、こういった問題をよく取り上げているテレビ番組、TBS「噂の東京マガジン」に連絡してこの問題を紹介してもらい、ツイッターやFacebookなどSNSでも発信しました。

ツイッターでの発信はミュージシャンの坂本龍一さんもリツイートしてくれるなど、広く拡散されました。私と中村さんは同時進行で自然観察会を開催し、哲学堂公園に残された自然の貴重さと楽しさを、地域の方々にお伝えしました。観察会ではオオルリが美声を披露してくれ、夏鳥の渡りを支える市街地の貴重な緑地であることを実感しました。

さらに今回の問題が表面化するのと時期を同じくして中野区長選挙が控えていました。4月の自然観察会には、計画を推進する中野区長(当時)の対立候補も参加してくれ、私たちは計画に反対するこの候補者を応援することで一致しました。その後「公園再生計画」を選挙戦の争点にすることに成功しました。

哲学堂公園で鳥類相や昆虫を調査したデータをもとに、中野区に対して「再生計画」見直しを求める意見書を提出しました。すでにNACOT(自然観察指導員東京連絡会)に協力を呼びかけていましたが、日本野鳥の会・東京もこの「公園再生計画」を問題視し、9月に自然観察会を共催することが決まりました。

6月、区長選が実施され、私たちが応援する候補者が見事に当選を果たしました。これで「公園再生計画」は見直される可能性が一気に高まりましたが、区議会議員や区職員には「公園再生計画」推進派もいるらしく、予断を許しません。私たちは気を緩めずに活動を続けています。夏にはセミの抜け殻調査や羽化の観察会を開催。都内の公園ではそうそうない、ミンミンゼミの割合がとても多いという傾向が分かりました。

 

写真:タブレットPCを使って、セミについて解説
▲タブレットPCを使って、セミについて解説

 

自然観察会を一緒にやってくれる指導員募集中!

9月には野鳥の会・東京と共催の自然観察会も無事に開催できました。あいにく本降りの雨でしたが、それでも13種の野鳥を観察し、渡り途中のエゾムシクイもじっくり観察できました。11月にもどんぐりと木の実をテーマに観察会を開催、2019年1月には野鳥の会・東京と共催の観察会を再び開催する予定です。

この間、新区長によって「哲学堂公園再生整備基本計画」の見直しが正式に発表され、哲学堂公園の樹木を大伐採から守る目的は達成されました。しかし私たちの活動は続きます。それは、区内には野遊びする環境が少ない上、自然観察会の開催がとても少ないため、小学生くらいの子どもをもつ親御さんたちから「もっとやって欲しい」という強い要望をいただいているからです。

市街地に残された緑地の大切さを広く多くの市民に知っていただき、将来に備えるために必要な活動です。今、観察会を案内するメンバーはたったの3人。これに対して参加者は数十人にものぼります。この活動に賛同し、協力してくれる指導員を求めています。ご興味のある方はぜひご連絡ください。

 

ご連絡先

inokashira.joe@gmail.com(高野丈)
※スパムメール対策のため@を全角文字にしています。半角文字に修正して送信してください。

<ご参考>NACS-J自然観察指導員東京連絡会(NACOT)
http://www.nacot.org/

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