日本自然保護協会は、生物多様性を守る自然保護NGOです。

壊れそうな自然を守る

Home 主な活動 壊れそうな自然を守る ラムサール条約第13回締約国会議に参加してきました!

壊れそうな自然を守る 一覧へ戻る

2018.11.14(2018.11.19 更新)

ラムサール条約第13回締約国会議に参加してきました!

読み物報告

専門度:専門度3

NGOの集合写真

▲NGOの集合写真

テーマ:生息環境保全

フィールド:湿地

ラムサール条約と「海の自然保護」の関係

▲ 日本のラムサール条約登録湿地52箇所(2018/11/16時点)

海の自然保護は、世界的に進みが遅い分野です。海洋保護区の設定や、希少な生物の保護など、取り組まなければいけないことが山積みです。

日本はさらにその中で遅れをとっています。とはいえ海洋保護区の設定を努力していて、政府が2012年に発表した海洋保護区の面積は8.3%。愛知ターゲットの目標10%にずいぶん近づいていることになります。しかし、その内訳は漁業資源の保護区がほとんどで、海の生物多様性全体を守る手立てにはなっていません。

海の生物多様性の全国的な現状把握はようやく始まったばかり。重要海域の発表は2016年、海のRDBの発表は2017年。どこが重要で、なにが危険なのかがわからないので、保護の手立ても遅れているのも当然かもしれません。守るための手段でもある、海を対象にした国立公園や鳥獣保護区などもありますが、届け出だけで開発ができてしまう規制の緩いランクが大半という現状です。

日本自然保護協会は、海のいきものたちがいきいきとくらす、“海の生態系保護地域” をつくって次世代に自然を手渡したい。そんな思いを抱いているのですが、その目標はまだまだ遠く、ずいぶん手前で手探りをしている状況です。しかし、森林生態系保護地域の設立に深くかかわり、森でくらす動物も含めた生態系としての森をまもる保護地域づくりを進めてきたNACS-Jだからこそできることがあると信じています。

海の生態系を守る国際的な保護区のひとつが、ラムサール条約の登録湿地です。「湿地」の定義は幅広く、沼のような環境だけではなく、砂浜や河川も対象になります。日本は水が豊かな国なので多くの登録地がありますが、このしくみをもっと活かすことで海の自然保護を進められるのではないかと、私たちは考えています。

 

ドバイの国際会議に行ってきました

10月21日から29日まで、アラブ首長国連邦のドバイで行われた「ラムサール条約第13回締約国会議(COP13)」に参加しました。ラムサール条約は湿地の生態系の保全に関する国際条約で、1971年にイランのラムサールで最初の会議が開催されました。

正式な名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約(英:Convention on Wetlands of International Importance Especially as Waterfowl Habitat)」です。現在は170か国が加盟し、水鳥の生息地だけでなく多くの重要な2,332の湿地がこの条約に登録されています。NGOはこの会議にはオブザーバーかビジターとして参加することができます。

条約の締約国や関係者が集まる今年、日本ではわずかしか登録されていない「砂浜」についての情報収集、しくみを活かすための関係者とのネットワークづくりのため、会議に参加してきました。


減り続ける世界の湿地

会議に先立ち、ラムサール条約の科学技術検討委員会(STRP:The Scientific and Technical Review Panel)により作成された報告書「世界の湿地の現状(Global Wetland Outlook)」が公表されました。

この報告書では1970~2015年の約半世紀で世界の湿地の35%が消滅したとされており、地球温暖化や人口増加、都市化が主な原因と指摘されています。

湿地は森林の3倍のスピードで消滅が進んでおり、2000年からそのスピードが一層加速し、そのため湿地に生息する魚、水鳥など1万8千以上の種の4分の1が絶滅の危機にあるとのことです。同報告は「湿地には水を浄化したり、温暖化を引き起こす二酸化炭素(CO2)を吸収したりする環境劣化を食い止める働きもあるが、消滅がさらに進めば水質悪化や洪水や干ばつが引き起こされる恐れがあると警鐘を鳴らしています。

COP13の冒頭でもこの報告書の内容が公表され、参加者一同厳粛な気持ちで会議が始まりました。

 

<参考>

世界の湿地、森林の3倍の速さで消滅 ラムサール条約初の報告
http://www.afpbb.com/articles/-/3191165

 

写真1

▲COP13の会場

 

写真2

▲レセプション会場から見えた景色。COP13のテーマ「持続可能な都市の未来のための湿地」にぴったりです。

 

写真3

▲全体会議の様子

 

COP13では26の決議案が検討され、25の決議が採択されました。主なものをご紹介します。

1)ウミガメの繁殖・採餌・生育場の保護と管理を向上させ、重要地域を条約湿地とする決議

この決議案はセネガルとフランスから提案されました。背景には世界に棲息するウミガメ7種のうち6種が危機に瀕しており、ウミガメはその一生のなかで、海草藻場、サンゴ礁、マングローブ、砂浜などさまざまな場所(特に湿地)を必要とし、港の開発や都市化、観光、水質悪化など人間活動の影響を受けやすいことが挙げられます。

この決議では、

  • 生息数を把握するために産卵地と餌場のモニタリングをすること
  • 可能ならば、産卵地および餌場をラムサール条約登録すること
  • 沿岸管理計画に含めること
  • ウミガメ生息地間でネットワークを作ること

が記されました。地域やその他のステークホルダーが協力し、密漁などを阻止し、エコツーリズム等の発展につなげることも含められました。

2)沿岸ブルーカーボン生態系の持続可能な管理に関する決議案

これは、オーストラリア提案でした。人類の活動に伴い排出される二酸化炭素は、森林や海に吸収されており、森林に吸収されるものがグリーンカーボン、海に吸収されるものがブルーカーボンと呼ばれています。吸収量は,海の方が大きいです。

ところが近年、気候変動や人間活動の影響を受け、海草藻場やマングローブ、塩性湿地などが減っています。

この議論のときには、パリ協定やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)など既存の取り決めとの絡みをどうするのか、ラムサール条約が扱うには政治的過ぎるのではないかということが問題となりましたが、対象をラムサール登録湿地に限定することによりこれらの懸念は回避できることとなりました。

最終的に、締約国は該当する湿地のデータを解析し、地図化し、公表することが盛り込まれました。これにより締約国は、自国の二酸化炭素の蓄積量がわかり、温室効果ガスのインベントリー(在庫目録)を更新することができます。ラムサール登録地間やその他の湿地の間で情報を共有することも促されました。

また締約国からは、科学技術検討委員会(STRP)の専門的技術等の支援が求められ、事務局には、気候変動枠組条約(UNFCCC)やパリ協定のガイダンスのもと、キャパシティビルディング(組織や社会が目標を達成するために必要な能力を構築・向上せること)のトレーニングを開催することが求められました。

ピートランド(泥炭地)の大切さは見過ごされがちですが、気候変動の緩和と生物多様性保全のために保全・再生が大切で、この決議案も大きな話題となりました。

 

多岐にわたる決議と活発な意見交換

そのほか、世界湿地の日、ジェンダーと湿地、先住民、湿地の簡易調査法など多様な決議が採択されました。

登録された後の湿地の管理についても活発な意見交換がなされました。登録地2,314 サイトのうち69%にあたる1,592の湿地について “ RISシート ” が更新されていない状況だったのです。RISシートは「ラムサール登録湿地情報票(Ramsar Information Sheet :RIS)」の略で、ラムサール登録湿地の現状について記されています。最新の情報が締約国から条約事務所に届かないのでは、登録後の湿地の状況を把握できていないことになり、これは大きな問題です。決議文では、締約国にモニタリングやアセスメントを行うことを奨励するとともに、最新の技術や既存の調査ネットワーク(GEOS, GEOBONなど)を用いることも検討されました。

中央アフリカにより提案された決議案「平和と条約湿地における生物多様性の持続可能な管理について」については多くの議論がなされたものの、提案者により取り下げられました。

<参考>

第13回締約国会議の決議文一覧(英文)
https://www.ramsar.org/event/13th-meeting-of-the-conference-of-the-parties

 

写真4

▲COP13会場近くにはラムサール登録湿地のRas Al Khor Wildlife Sanctuaryがあり、フラミンゴなど多くの水鳥が見られました。ドバイの高層ビルも背景に映っており、いかに都市と近いかわかります。

 

良いニュースもありました。東京都江戸川区の「葛西海浜公園」(367ヘクタール)と宮城県南三陸町の「志津川湾」(5,793ヘクタール)が新たにラムサール条約登録湿地となりました。これで日本の登録地は52カ所(15万4,696ヘクタール)となりました。また円山川下流域・周辺水田(兵庫県)は既存の登録地が拡大されました。このCOP13の期間中にこの日本の3か所の湿地について登録認定授与式が行われました。

 

写真5
▲ラムサール条約の事務局長を招いて認定授与式が行われた

 

<参考>

ラムサール事務局によりCOP13のサマリー(英文)
Summary of the Thirteenth Meeting of the Conference of the Parties to the Ramsar Convention on Wetlands

 

最終日にはウェブサイトに新たな決議案が掲載されていました。「18.27 Draft resolution: Thanks to the Host Country, the United Arab Emirates(ホスト国、アラブ首長国連邦へのお礼の決議案)」です。満場一致で採択されました。

COP13に先立ち、プレNGO会議が開かれました。世界湿地NGOネットワーク(WWN)に所属している複数のNGOが集まり、全体会議の最初に読み上げられるNGOステートメント(声明)の文案の検討や、各国の取り組み、COP13への取り組み方などについて意見交換を行いました。会議が始まってからは、毎朝NGO会議を開き、その日の戦略について相談しました。最終日にはユースから声明が読み上げられました。次回の締約国会議COP14では「ユースと湿地」というテーマにしたらどうかという提案がなされ、多くの締約国が賛同の意を表していました。

 

写真6
▲ラムサールネットワーク日本のブース

 

<参考>

「世界の湿地の現状(Global Wetland Outlook)」は以下からダウンロードできます。
https://www.global-wetland-outlook.ramsar.org/

壊れそうな自然を守る 一覧へ戻る