日本自然保護協会は、生物多様性を守る自然保護NGOです。

  • 文字サイズ

日本の絶滅危惧種を守る

Home 主な活動 日本の絶滅危惧種を守る イヌワシの狩場創出実験の経過報告

<イヌワシ>絶滅危惧種を守る 一覧へ戻る

2018.06.05(2019.07.08 更新)

イヌワシの狩場創出実験の経過報告

調査報告

専門度:専門度3

急降下するイヌワシ

▲2017年11月4日 第1次試験地内の獲物に向かって急降下するイヌワシ雄

テーマ:生息環境創出

フィールド:森林

人工林伐採後、イヌワシの出現が増加

群馬県みなかみ町“赤谷の森”で生物多様性の復元に取り組んでいる赤谷プロジェクトは、2014年9月から、絶滅の危機にあるイヌワシの生息環境の質を向上させるための試験を進めてきました。まず、2014年にイヌワシの行動範囲内からイヌワシが狩りをすることができない人工林165haを試験候補地として抽出。2015年に約2haのスギ人工林を伐採し、イヌワシが狩りをする環境をつくるとともに、人工林を地域本来の自然林に戻していく第1次試験地を設定しました。
2017年9月で伐採から2年が経過し、伐採前の1年間と、伐採後の2年間のイヌワシの行動を比較することで、第1次試験地の伐採の効果を評価しました(観察時間約1000時間/年)。その結果、2017年11月には第1次試験地に向かってイヌワシが急降下する行動(狩行動)が伐採後初めて確認されたほか、イヌワシが獲物を探す行動の回数は、伐採前の0回から伐採後の2年間で増加を続けました。第1次試験地周辺にイヌワシが出現する頻度も伐採前よりも高い状況が2年間維持されました。これらの状況から、伐採した第1次試験地がイヌワシの生息環境の質を向上させている可能性が高いと考えています。

 

イヌワシが獲物を探す行動した回数▲イヌワシが第一次試験地の上空で獲物を探す行動をした回数

新たに1haの人工林を伐採

これらの結果を踏まえ、2017年11月に第2次試験地として新たに約1haのスギ人工林の伐採を行いました。第2次試験地の伐採は楽天株式会社の社会貢献活動「楽天の森」の支援により実現しました。今後、第1次試験地と同様にイヌワシの行動や、伐採後の植生の様子についてモニタリング調査と評価を続けていきます。
また、会報1・2月号で報告した通り、赤谷の森のイヌワシは2年連続で子育てに成功しました。2haのスギ人工林の伐採がどの程度繁殖成功に寄与したかは明らかではありませんが、赤谷プロジェクトのひとつの成果だと考えています。

 

伐採を終えた第2次試験地▲2017年11月に伐採を終えた第2次試験地


カシオ「プロトレック」

カシオ計算機㈱より、NACS-Jが保全活動を行うイヌワシをモチーフにした本格アウトドア時計「プロトレック」特別モデルが3月に発売されました。前号同封のチラシでご案内した数量限定の会員特別価格分は、おかげさまで完売しました。ありがとうございます。一般のお店では引き続き販売しています。

 

 

出島誠一

生物多様性保全室 出島誠一

早いもので、イヌワシ試験地の取り組みも開始から3年が経過しました。皆様からのご支援に心より感謝します。

 

この記事のタグ

<イヌワシ>絶滅危惧種を守る 一覧へ戻る

あなたの支援が必要です!

×

NACS-J(ナックスジェイ・日本自然保護協会)は、寄付に基づく支援により活動している団体です。

継続寄付

寄付をする
(今回のみ支援)

月々1000円のご支援で、自然保護に関する普及啓発を広げることができます。

寄付する