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モニタリングサイト1000里地調査

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2017.07.27(2017.08.08 更新)

【イベント報告】新しい調査サイトを募集するための地方説明会を山形で開催しました

関連イベント

専門度:専門度3

 

全国約200ヵ所の里山で、地域の市民が主役となりモニタリング調査を行う「モニタリングサイト1000里地調査」。全国調査が開始してから10年が経ち、今年、来年度から新たに5年間調査に参加してくださる新しい調査サイトを募集 することとなりました。
それに合わせて、今年は、全国3ヵ所で、調査サイトの募集のための説明会を開催します。

 

その第一弾として、7月22日、山形大学で、地方説明会「里山の長期モニタリングからみえた生態系の変化と市民調査の可能性」を開催しました。
このイベントでは、現在起こっている野生動物や生態系の変化を切り口に、市民調査の重要性や、今までのモニ1000里地調査で明らかとなった全国結果などを伝えました。

 

はじめに、山形大学農学部の江成広斗先生より「東北での野生動物の現状と生態系への影響」というタイトルでご発表いただきました。
江成先生からは、ニホンジカやイノシシなどの大型哺乳類は、長い歴史の中で、人との関わり合いとともに分布が大きく変化していること、現在の分布の変化も、そうした長い時系列で捉えてみる必要があることをご発表ただきました。印象的だったのは、大型哺乳類について、近年、負の生態系サービス(農業被害など)にばかり注目されがちだが、正の生態系サービス(毛皮、種子散布、童話や信仰など文化的サービスなど)の両方の面をみながら、どのように付き合っていくべきか考えることが大切だ、ということです。近年よく耳にする“獣害”という言葉も一側面でしかなく、哺乳類たちが生態系の中でどのような役割を担っているかを理解することが大切であるということでした。
また、市民モニタリングへの期待として、行政・一部の専門家だけで哺乳類の分布変化などへの対策を講じることは難しく、多くの人の目で見て情報収集をすることの重要性、そして地元住民・市民とともに保全にどう結び付けられるかを考えることが大切だということをお伝えいただきました。

 

モニ1000里地調査でも、里山の自然環境を総合的に把握するために、9つの調査項目を用意しています。哺乳類の調査で、直接、その里山にどのような哺乳類が分布しているか把握することもできますし、例えば、ニホンジカが増えることで食害などの影響を受けうる植物相の調査や、アライグマなどの外来種の侵入によって影響を受けうるアカガエルの調査など、さまざまな視点から調査することができます。また、まだ何も大きな変化の起きていないような段階でも、その現状をしっかり記録しておくことが非常に重要になります。
今回の説明会では、私たちNACS-J職員から、こうしたモニ1000里地調査の概要や市民調査の意義、調査の具体的な手法についても発表させていただきました。

 

また、講演会では、現在、山形県で唯一の調査サイトであるコアサイト「天狗森」の佐久間憲生さんにもご発表いただきました。天狗森は、山形県鶴岡市に位置し、日本海側多雪地域の代表サイトとして10年以上前からコアサイトとして調査を続けられています。調査サイトは標高600mほど人里から少し離れていますが、調査サイトにはブナの立派な“あがりこ”(写真)など、昔から人と関わりがあった形跡がみられる場所です。

▲天狗森のブナのあがりこ。木を薪炭等のために腰ほどの高さで切ると、木は脇から新しい芽を出し成長する。これを繰り返すことで奇妙な形になり、これを“あがりこ”という。この木は枝が鼻にみえることから「天狗ブナ」と呼ばれているのだとか。

 

発表では、地域の草花や鳥などに少し関心があれば、気軽に参加できること、地域の一般市民や家庭の主婦の皆さんも参加されていることなどをご紹介いただきました。発表の最後には、調査サイトで見つけた「桑園開発の碑」についてご発表いただきました。その碑には、地域の神様に感謝し、地域の桑を使った養蚕の発展を願う気持ちが込められているそうです。調査をしながら、ふと偶然見つけた碑から、この地域の歴史を知ることができたとして「繰り返し調査をすることで、地域の財産となる様々なことを発見できます」とご発表いただきました。

 

 

説明会の後半では、現在調査サイトの少ない山形・東北で、里山の自然環境を保全していくために、参加者一人ひとりがどのように関わっていくことができるか、グループごとに分かれて全員で話し合いを行いました。

全体共有では「山形県内の調査をはじめようとしても、過去を比較できるデータが本当に全くない。しかし、今、自分が調査をすることで10~20年後に子供たちの世代が調査をしようとしたときに貴重なデータになる」「ここに集まった人は皆、自然が好きだということが共有できている人たちだ。だけど、もっと外にいる関心はあるけどきっかけがない人などが、活動に関われるような、交流の場を作っていくことが大切ではないか」といった沢山のコメントが出ました。

 

今回、説明会を山形で開催したのは、山形県には過去から今まで鶴岡市にあるコアサイト「天狗森」の1ヵ所しか調査サイトがなく、また東北全体を見渡しても調査サイトが少なく(福島県も1ヵ所、秋田県は0ヵ所!)、豊かな自然があるにも関わらず現状把握のされていない場所の多い東北・山形で調査サイトが増えるように、という理由からでした。
今回、説明会を行って、県内各地や県外から、沢山の、本当に熱心な意欲のある皆さまにお集まりいただいて、これから一緒に東北の市民調査・モニ1000里地調査を盛り上げていくことを確かめ合える場となりました。お集まりいただいた皆さま、本当にありがとうございました。

モニ1000里地調査の新規サイト募集 は今年度10月中旬まで実施しています。
東北の皆さまからの多くのサイトのご応募をお待ちしております!

※次の地方説明会は、8月19日(土)に東京 で開催します。関心のある方はぜひお越しください!

(エコシステム・マネジメント室 後藤なな)