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モニタリングサイト1000里地調査

Home 主な活動 自然の守り手を増やす モニタリングサイト1000里地調査 関連イベント 【報告】2022年度モニ1000全国講習/交流会を開催しました(後編)

2023.02.08(2023.02.10 更新)

オンライン開催
2023年1月14日

【報告】2022年度モニ1000全国講習/交流会を開催しました(後編)

関連イベント

専門度:専門度2

こんにちは、日本自然保護協会インターンで東京大学大学院2年の黒島綜一郎です。

本日は、2023年1月14日土曜日に開催されたモニタリングサイト1000里地調査 2022年度全国講習会/交流会「楽しく調査を続け、新たな仲間を得るために」@オンラインについて、当日の内容(講習会部分)をお届けします!!

講習会部分は当日の録画もございます。ご興味のある方は事務局(moni1000satochi★nacsj.or.jp *★を@に変えてください)へご相談ください。

長文となったため、記事を分割しています。前編の報告は>>こちら<<

全国の事例紹介

後半は、モニ1000里地調査を行っている全国3か所のサイトから、調査員の皆さまに事例紹介をいただき、楽しみながら継続的な調査を行うための工夫についてご共有いただきました。先の白川様のご講演でも話題提供のあったカスタマージャーニーを活用して、各々のサイトで工夫を凝らしながら活動を展開し、調査員の獲得に繋がっている過程を学ぶセッションとなりました。

事例紹介:「滑川浜周辺の里山(茨城県)」

— 山本朝男 氏(七色自然くらぶ)

滑川浜周辺の里山は、モニ1000里地調査初期から、長年に渡り調査していただいているサイトです。山本様が代表を務められている市民団体では、海岸沿いの里山というサイトの特徴を活かし、自然観察や清掃活動、樹木のネームプレート作成など、調査の延長として関連する活動を展開されてきました。この活動を通して、参加者の自然への興味関心が深まったり、高校の先生や学習センター職員等を通じて幅広い分野・世代の組織間ネットワークが広がることにより、参加者の満足度が高まると同時にモニ1000調査参加へと繋がり、ひいては継続的な調査参加へも繋がっている事例をご紹介いただきました。

事例紹介:「県立森林公園ドングリランド(香川県)」

— 河合洋人 氏(NPO法人ドングリネットワーク)

香川県のサイト「県立森林公園ドングリランド」は、河合様の所属する市民団体が、複数のボランティア活動をコーディネートしながら管理されています。河合様からは、そのボランティア活動の参加者がモニ1000調査員へとステップアップするケースと、近隣大学の学生さんが授業で興味を持ちモニ1000調査へ参加するケースによって、継続的な調査活動に繋がっている事例をご紹介いただきました。ドングリネットワークさんは香川県における環境系NPO法人の第一号として、創意工夫に富んだ様々な活動を日頃から行っておられましたが、調査員の獲得に繋がったきっかけとなったのが、調査地ドングリランドの『ボランティア活動や大学の教育の「場」としての提供』だったそうです。ドングリランドをフィールドとして活用するこのような多様な活動が、参加者の潜在的な自然に対する興味を刺激し、その結果幅広い年代の調査員の獲得に繋がったことが報告されました。調査に参画するきっかけづくりという点で示唆に富む事例でした。

事例紹介:「穂谷の里山(大阪府)」

— 木村進 氏(大阪自然環境保全協会)、山口隼平 氏・渋谷柊威 氏(大阪産業大学・森・川・田んぼプロジェクト)

穂谷の里山は、モニ1000里地調査開始以来、長年調査を実施いただいているサイトで、コアサイトとして多くの項目の調査を実施しています。木村様からは、NPO法人として穂谷の里山において保全活動を実施する中で、学生組織を含めた様々な団体と連携しながら調査をしていることや、調査の成果をご紹介いただきました。また、連携した大学のプロジェクトの山口様(プロジェクトOB)・渋谷様(プロジェクト代表)からは、その活動内容やご自身がモニ1000調査へ参加した経緯の紹介とともに、若者目線から調査参加へ対し感じるハードルとその解消に向けた提案を具体的に提示いただきました。多くの調査団体が目指す調査への若い世代の参加に向けて、大変示唆のあるお話でした。

おわりに

モニ1000里地調査は、日本全国の里山生態系の現状を把握するために重要な役割を担っていますが、その役割を長期にわたって担保し続けるためには、「いかに継続的に調査を続けることができるか」が重要です。その問いの答えを探るきっかけを、今回のイベントを通して垣間見ることができました。

調査員の皆さまがモニ1000里地調査以外の場面で、工夫を凝らした魅力的な活動を実施して新たな調査員を獲得した事例や、そこで培った主体間のネットワークが調査を続けるきっかけとなった事例を拝見し、市民団体の日常的な活動が結果として調査員の獲得にも繋がることが分かりました。モニ1000里地調査は大変重要な市民科学調査ですが、自然環境への興味を持った人をいかにして活動や調査に引き込むかは、調査を実施する市民団体の裁量に委ねられるところも大きいため、各団体でそれぞれの状況に応じた工夫のし甲斐があると感じられ、モニ1000里地調査の奥深さを学びました。

また、今回の全国講習会/交流会では、10代、20代の学生の皆さまにもご参加いただきました。特に、実際に調査に関わられている学生の方にも事例発表をいただいたことで、今後の里地調査の可能性も感じました。若い世代が今後、主体的に里地調査をはじめとして保全活動に参加し、数年先を見据えた里山の未来をつくる創意工夫がなされることに期待しています。

その意味で、若い世代が環境保全活動に参加することは重要な意義があり、NACS-Jでもそのような若い世代をサポートできる体制を整えていければいいのではないかと思いました。個人的には、若い世代を対象にしたイベントもいつか実施できたらと考えています!!

改めて、本年度の全国講習会/交流会にご参加いただいた皆さまへ、心より御礼申し上げます。

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