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モニタリングサイト1000里地調査

Home 主な活動 自然の守り手を増やす モニタリングサイト1000里地調査 関連イベント 【報告:前編】モニ1000里地調査 全国交流会2019@兵庫を開催しました!

2020.02.14(2020.02.21 更新)

兵庫県神戸市
2020年1月12日

【報告:前編】モニ1000里地調査 全国交流会2019@兵庫を開催しました!

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専門度:専門度2

展示会場の風景

こんにちは、日本自然保護協会でインターンをしております東京農工大学3年の稲田真夕です!

こちらでは、2020年1月12日(日)、兵庫県立のじぎく会館で開催した「市民調査がとらえた身近な里山の危機~モニタリングサイト1000里地調査10年の成果~」の様子を報告いたします。

※長文となったため、記事を分割しています。後編の報告は>>こちら


モニ1000里地調査では年に一度、調査員の皆さんや検討会委員の先生方、環境省生物多様性センターなど関係者が一同に集まって、全国各地の調査サイトでの活動の様子を共有したり、今後に向けての意見交換をしたりするために交流会を開催しています。

2019年度の全国交流会は、初めて兵庫県で開催しました。地元である兵庫県や、石川県・愛媛県など遠方の調査員の皆さま、市民調査に関心のある一般の方など、約100名もの方々にお集りいただき、活発な交流が行われました。

今回、午前にNACS-Jの藤田と専門家の先生方によるシンポジウム、午後には全国で実際に調査をしている調査員の方々によるポスター発表会を実施しました。

「第3期とりまとめレポートから見えてきた里山の現状」-藤田卓

最初にNACS-Jの藤田から、モニ1000里地調査の概要と、5年区切りで発行している「第3期とりまとめ報告書」から里山生態系の変化と里山保全の今後に向けた提案について講演を行いました。

本とりまとめ報告書から、里山で普通にみられていた生き物の多くが減少傾向にあることがわかり、特にチョウ類や鳥類、哺乳類(テン・ノウサギ等)の個体数に関する解析結果をもとに紹介しました。

近年、海外でも地球上の生物種の減少が報告されていることに触れ、報告例の少ないアジアでの知見として、また、絶滅危惧種などではなく普通種の減少の可能性に触れた報告としても貴重ということで、これまで全国各地の調査員の皆様が熱心に調査されてきた結果が世界的にみても重要な知見になっているのだとわかり、市民調査の重要性というものを改めて感じました。

次に、市民による保全活動の紹介と、里山保全の現状の課題についての話がありました。各サイトでのアンケート結果から、多くのサイトで草地やため池などの管理活動や企業・地域住民・教育機関への連携活動など、様々な保全活動が行われていることがわかりました。

その一方で、今後継続的なモニタリング体制を構築していくために多くの課題があることもわかりました。具体的な課題としては、調査員の確保が難しいことや、調査頻度の多さやデータ入力が負担になっていることが挙げられました。

また、農林業における環境保全行為に対する直接支払制度の受給をしているサイトは8.4%と低く、モニ1000里地調査の保全活動とも親和性が高い制度であるのにもかかわらず、あまり普及はしていないという点にも触れました。

このことから、例えば、データ入力の方法の簡易化といった調査員の負担を減らす手立てや、各サイトの保全活動に合わせた交付金制度情報の提供といった取り組みを、さらに進めていく必要があると思いました。

シンポジウムの写真▲シンポジウムの様子

「普通種もいなくなる?チョウの全国調査と世界的な昆虫の現状」-石井実

次に、大阪府立大学名誉教授・学長顧問で里地調査の検討委員でもある石井実氏より、チョウの種類や生態系での役割などの基本的なお話から、第3期とりまとめ報告書で重大なトピックであった「チョウ類の減少」について詳しくお話しいただきました。

まず、日本におけるチョウの種数クイズから発表が始まりました。参加者の皆さんもチョウという身近な話題ということもありグッと発表に引き込まれている様子でした。

私も、石井氏の話術に引き込まれ、チョウが生物指標としてなぜ最適であるのかというお話から、モニ1000においてチョウ類を調査することの意義をよく理解することができました。

チョウ類の減少に関しては、調査データから解析した87種のうち約40%(34種)が年間3.5 %以上の割合で減少しており、その大部分は環境省レッドリストのランク外の種であったということを種ごとにご紹介いただきました。

例えば、イチモンジセセリというチョウは、今回の解析結果から環境省レッドリストの絶滅危惧Ⅱ類の評価基準に相当するほどの減少率であったことがわかりましたが、かつては、都市部なども含めて日本中を大群で移動していたことが目撃されていたのが、近年は石井氏がされていた調査でも記録数が非常に減っているということでした。

普通種のチョウ類の減少が深刻なレベルで進んでいるということが、聞いていた多くの方々にも衝撃をもって受け止められたのではないでしょうか。

大阪府立大学石井氏の写真▲大阪府立大学 石井氏

「森から里まで 鳥類の全国調査の結果から」-植田睦之

続いて、バードリサーチ代表で里地調査検討委員の植田睦之氏より、里地同様、市民調査で行っている全国鳥類繁殖分布調査の結果から、日本の普通種の鳥が減少していることや土地タイプごとの鳥類の種数変化について分布図と写真を織り交ぜてわかりやすくご紹介いただきました。

全国鳥類繁殖分布調査は、環境省事業として1970年代と1990年代に実施されている調査で、その調査地点は約2300地点にものぼります。本調査は、全国的な鳥の分布とその変化が明らかになるため、生物多様性の評価やレッドリストの改訂に利用されています。

今回のシンポジウムでは、過去2回の調査結果に加え、2016年から実施されている3回目の調査の最新データも交えてお話しいただきました。

森林に生息する鳥が分布を拡大していることや、小型の魚を食べる鳥が減少していることなど、土地や生態系によって鳥類の種数変化の要因が異なるというお話は非常に参考になりました。

特に、下草を食べるシカが増加することで、藪にすむ鳥であるウグイスの種数が減少し、ウグイスに子育てをさせるカッコウ類もそれに伴い減少しているという事例は興味深かったです。

バードリサーチ 植田氏の写真▲バードリサーチ 植田氏

「地域の農業者との連携で、里地の生物多様性の守り人を増やそう」-古谷愛子

シンポジウムの最後には、NPO法人オリザネット事務局長の古谷愛子氏より、里地里山に関連する各種交付金制度の特徴や、農業地域の生物多様性保全の重要性をどのように農家や地域の方々に伝えていくのかということについて、オリザネットの実際の活動とともにご紹介いただきました。

交付金制度については、里地調査ともかかわりの深い農林水産省の日本型直接支払制度や林野庁の森林・山村多面的機能発揮対策交付金などについて詳しくご説明いただきました。

NACS-Jの藤田の講演にもあった通り、各サイトでの保全活動に対する交付金の受給率は低かったため、交流会に参加された調査員の方々の中には非常に関心をもって聞かれていた方も多かったようです。

実際に交流会後のアンケートでも、「交付金について知らなかったので調べて活用していきたい」との感想をいくつかいただきました。私自身、交付金も含め、保全活動を持続的に行っていただけるような社会的なサポートの重要性を改めて感じました。

次に、直接支払い制度の取り組みの中で、地域の農業者の方と一緒に生きもの調査や生きものマップ作りなどを行った事例をご紹介いただきました。

特に、生きもの調査をすることで農業と生きものは密接に関係しているということに気づき、農業者の方々が生きものへの意識をもって農地の管理をしてくれるようになる、というお話が印象に残りました。

最後に古谷氏から参加者の皆さんへ、「交付金制度を利用して現場に入り、モニ1000里地調査で培った経験を活かして生物多様性豊かな農村づくりに協力してほしい」というメッセージが送られ、第一部シンポジウムは幕を下ろしました。

オリザネット古谷氏の写真▲オリザネット 古谷氏

>>後編に続く