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2022.06.08(2023.06.07 更新)

6月8日は World Ocean Day(世界海洋デー)

解説

専門度:専門度2

瀬戸内海西部 周防灘の端に位置する上関の海。真ん中に黒く見える点は、カンムリウミスズメ。

テーマ:生息環境創出自然資源海の保全

フィールド:

今日6月8日は、 World Ocean Day(世界海洋デー) です。
2008年に国連総会で制定され、海や海と人とのつながりに思いを馳せ、海の大切さについて考える日とされています。

ここでは、私たちの生活を支え、文化を創ってきた海に、今起こっていることについてご紹介していきます。
World Ocean Day である今日、皆さんにとっての身近な海を思い浮かべながら、海や海とともにある暮らしを未来につないでいくためのアクションを起こしませんか?


日本は海に囲まれた国です。

日本の国土面積は、約38万 ㎢。
それに対して、日本の領海は約43万 ㎢、海洋の調査や環境保護などの管轄権も認められる排他的経済水域(EEZ)は、約405万 ㎢で、世界第6位の広さと言われています(※1)。
海岸線の長さは約35,293km(※2)。
地球1周が約4万kmと言われていますので、その長さに驚きます。


▲早朝の海に浮かぶ漁船。瀬戸内海では、1人で漁に出る小型漁船を1日中見ることができる。

私たち日本人は、この地の利を生かし、古くから海とともに生き、海の恵み(海洋の生態系サービス)を利用してきました。

2011年3月に策定され、現在見直しが進められている海洋生物多様性保全戦略では、海洋生態系が私たちにもたらすサービスを、以下の4つにまとめています(※3)。

  • 魚介類等の食料や薬品などに使われる遺伝資源等の資源の「供給サービス」
  • 気候の安定や水質の浄化などの「調整サービス」
  • 海水浴等のレクリエーションや精神的な恩恵を与えるなどの「文化的サービス」
  • 栄養塩の循環や光合成などの「基盤サービス」

おいしいお寿司も焼き魚定食も、ワカメが入ったみそ汁も、健全な海洋生態系と、それを支える生物多様性によって、もたらされています。
それ以外にも、海は文化や人を運ぶ道として、日本の歴史を支えてきました。


▲上関の食堂のメバル定食


▲日本一、現役海女の数が多いと言われている三重県鳥羽市石鏡の朝焼け。目の前の海は、伊勢湾の入り口にあたり、強い海流が豊かな藻場を育んでいる。


▲石鏡の海でとれたイセエビ

私たちの生活を支え、文化を創ってきた海が、各地で瀕死の状態に陥っています。
水平線を見ると、青くて美しい海の中では、海の砂漠化ともいえる状態が広がっています。

この写真は、佐賀県唐津沖にある松島の海です。
海藻の森に魚が群がり、豊かな海に見えますが、よく見ると、海藻には食べられた跡があります。
磯焼けの原因としてウニの仲間による食害が有名ですが、アイゴやイスズミの仲間など、藻食性魚類による影響は大きく、各地で行われている藻場再生の取組を困難にしています(※4)。


▲藻食の魚に食べられた海藻の森。佐賀県唐津沖の松島で2021年10月に撮影。


▲食害を受け、浮泥に覆われたノコギリモク群落。佐賀県唐津沖の松島で2021年10月に撮影。

藻場は、一見地味で、あまり注目を浴びません。
しかし、私たちが暮らす日本近海の海では、生物多様性の基礎を支える重要な役割を担っています(※5)。
藻場が消失すれば、多くの海洋生物が産卵と生育の場を失い、ウニやアワビなどの貝類はエサを失い、ある時、一斉に姿を消します。
私たちが2021年度に奄美大島で実施した、昔の海の様子を知るための聞き取り調査でも、同様の証言が複数聞かれました。


▲最近注目されている藻場の役割の一つに、二酸化炭素の固定機能がある。植物である海草/海藻類は、光合成で二酸化炭素を固定し、酸素を排出する。

それでは、私たちに、何ができるでしょうか。

持続可能な開発目標(SDGs)14「海の豊かさを守ろう」では、7つのターゲットに対して、3つの実現のための方法が示されています(※6)。
3つの方法の中で、開発途上国における知識・技術の向上(14-a)、法的枠組みによる海と海洋資源の保護、持続可能な利用(14-c)とともに、小規模で漁業をおこなう漁師たちが、海洋資源や市場を利用できるようにする(14-b)があげられています。

生活の一部として海に携わる漁師の数が減ると、海を見続ける目がなくなり、海中で劇的な変化が起こっても、誰も気づかないことが起こり得ます。
日本の海でも、沿岸で操業する小規模漁業者を取り巻く状況は厳しく、高齢化が進んでいます。
海をモニタリングし、関わり続ける人たちを応援することは、今日からでもできそうです。


▲佐賀県の松島の若手漁師により行われている塩づくり。島の周辺海域から生物が減少して漁獲量が減る中、海とともに生きる生業づくりの模索が続いている。


▲昔ながらの方法で作られた塩はミネラル分を多く含む。東京のレストランなどからも引き合いがある人気商品になっている。

6月8日は、World Ocean Day。
まずは、海を応援するなにかを、日々の生活の中に取り入れてみることから始めてみるのはいかがでしょうか。

  • ペットボトル、使い捨てプラスチックごみをなるべく出さないようにする
  • 自治会や地域の清掃活動に参加する
  • 生態系に負荷をかけない方法で作られた農産物、畜産物を購入する
  • 藻場再生や資源管理などに取り組んでいる漁師さんから海産物を買う
  • 海外から輸入されるメジャーな魚介類ではなく、地元でとれた見たこともない魚介類を食べてみる

いま、日本の海には、あなたの助けが必要です。
豊かな海を次世代に継承するために、海と、海と共に生きる人たちへのサポートをお願いします。

(生物多様性保全部 中野)

引用

※1
海上保安庁. “日本の領海等概念図”.
https://www1.kaiho.mlit.go.jp/JODC/ryokai/ryokai_setsuzoku.html
※2
国土交通省水管理・国土保全局 編. 海岸統計 令和3年度版. 国土交通省.
https://www.mlit.go.jp/river/toukei_chousa/kaigan/pdf/20220418.pdf
※3
環境省. “第3章 海洋の生物多様性及び生態系サービス”. 海洋生物多様性保全戦略公式サイト.
https://www.env.go.jp/nature/biodic/kaiyo-hozen/guideline/05-1.html
※4
熊谷直喜. 気候変動に伴う藻場群集の地理的分布変化. 藻類. 2020, 68, 91-97
※5
水産庁. “藻場の働きと現状”.
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/tamenteki/kaisetu/moba/moba_genjou
※6
日本ユニセフ協会. “14 海の豊かさを守ろう”. SDGs CLUB.
https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/14-sea/

NACS-Jでは 日本の海を守る活動を進めています

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