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2020.09.11(2020.12.08 更新)

レジ袋有料化でも海洋プラスチックの問題は解決されない理由

解説

専門度:専門度3

排出源ごとのプラスチック生産量と排出量を示した円グラフ

テーマ:海の保全

フィールド:海、砂浜

こんにちは、自然のちから推進部の志村です。

レジ袋有料化によって、メディアの注目度も挙がった海洋プラスチック問題。レジ袋有料化で「問題は解決したか?」の答えは、残念ながら”まったく解決していない”となります。本当の解決の道筋を考えるためには、問題の全容を理解することが大事です。

そのような中、2020年1月に、『The marine plastic footprint』と題するレポートがIUCN(国際自然保護連合)から発表されました。

9月12日から18日まで、日本財団その他が呼び掛ける「海ゴミゼロウィーク」の賛同アクションとして、海洋プラスチックごみ問題について、ご紹介します。

 


1年間で4億トンものプラスチックが生産され、1200万トンが海に流れる

私たちの生活に欠かすことのできないプラスチック。

大量に捨てられたプラスチックが海に流れ出てしまっており、海洋プラスチック問題として現在大きな問題となっています。

そもそも、どれくらいの量のプラスチックが生産され、それがゴミとして、海に流れているのでしょうか?

IUCNによると、世界におけるプラスチック生産量は約4億1500万トン、そのうち海へ流出しているプラスチックは年間およそ1200万トンと言われています(IUCN, 2020)。つまり生産量のうち3%が毎年海へ流れ込んでいることになります。

90%以上のプラスチックは化石燃料から生産され、これは全石油消費量のおよそ20%を占めています。 気候変動の視点からみても、対策が必要なプラスチックですが、さらに、プラスチックの生産は2050年までに世界の一年間の炭素排出量の15%を占めるようになると予測されています。

排出源ごとのプラスチック生産量と排出量を示した円グラフ▲排出源ごとのプラスチック生産量と排出量:現在の世界における推定量


3%でも、大問題。プラスチックはどんどん積もる

プラスチックを作ったうちの3%しか海ゴミにならないなら、大した問題にならないでしょうか? 残念ながら、その答えもNO。

環境条件に左右されますが、プラスチックは、分解されるまでに時間がかかります。例えば、タバコのフィルターは、1~5年、プラスチックバックは10~20年、ペットボトルは450年も分解までに時間がかかるとされています。建物用断熱材になると、なんと6500年です。

2020年のプラスチックの生産量は4億1500万トンと紹介しましたが、2016年のプラスチック生産量は3億3500万トン。過去4年間で、1.3倍にまで拡大しており、海に排出されるプラスチックの量も拡大していると推測されます。

1200万トンは、東京都で年間出るゴミ442万トン(平成29年度実績。環境省平成31年度調査)の約3倍!そんなゴミの量が年々増加し、分解されずに海を漂うと考えると大問題と分かっていただけるのではないでしょうか。この「3%」を限りなくゼロに近づけていく努力がとっても大事なのです。

(IUCN 2020、Table 12: Conventional degradation rates of different categories of plastic and plastic applications. Sources: (1) MOTE Marine Laboratory Marine Debris
Biodegradation time line, 1993. (2) BIOTEC Environmental, 2019)

 


リサイクルされたのは7%。ほとんどが捨てられてきたプラスチック

なぜこんなにも多くのプラごみが、海へ流れ出ているのでしょうか?

それはプラスチックの生産が増えた一方で、使い終わったプラスチックが適切に廃棄・再利用されず、プラスチックごみが増え続けているからです。

プラスチックはその軽さと万能生、耐久性、そして自由に形を変えられる便利さゆえ、社会に多くの利益をもたらしています。様々なプラスチック製品、包装、道路などのインフラ、乗り物、塗装、衣服の生地など、多くの場面で用いられ、今や私たちの生活とは切り離せないものとなりました。

プラスチック生産量は1950年代以降伸び続け(Geyer et al., 2017)、次の20年間で生産量は二倍になると見込まれています((Ryan, 2015)。しかし、1950以降生産されたプラスチックのうち、これまででたった7%しかリサイクルされていません(Geyer et al., 2017)。最近では、多くの国でリサイクルは増えているものの、まだまだ大部分のプラスチックは捨てられているのが現状です。

こうして海に流れ出たプラスチックは、魚や鳥など海に関わる生き物に大きな被害をもたらすことが心配されています。捨てられた漁網が絡まったり、プラスチックを飲み込んで死んでしまったりする例が既にいくつも報告されています。また、こうしたプラスチックには、有害な化学物質が付着している場合もあります。

プラスチックが脅威になるのは、生き物だけではありません。実は私たち人間にとっても危険なものなのです。

海には目に見えるプラスチックだけでなく、目には見えない微細なプラスチックがたくさん存在しています。この目には見えないプラスチックを取り込んだ魚を食べることで、私たちの体にプラスチックが蓄積されている可能性が指摘されています。(IUCN issues briefs Mrine Plastic, May 2018)

 


2種類あるマイクロプラスチック。先進国でも対策に遅れ

「プラスチック」と一言で言っても、その種類は多種多様です。しかし、ゴミとして、海に流れ込んだプラスチックは、大きく分けて2種類に分類されます。

一つは目に見える「マクロプラスチック」。適切に処理されなかったごみや、漁網など捨てられたペットボトルなどプラスチック製品などがこれに含まれます。

もう一つが5mm以下の小さな「マイクロプラスチック」と呼ばれるものです。これには、意図的に造り出されたもの(化粧品に含まれるマイクロビーズなど)や、意図せず自然と発生したもの(衣服の糸くずやタイヤの摩耗により生じたものなど)が含まれます。大きな排出源となっているのが、生地繊維、タイヤくず、化粧品、ペレット(プラスチックの素となる粒)の4つです。

▲プラスチックの分類と一次・二次マイクロプラスチックのゆくえ

マイクロプラスチックは、さらに、第一次マイクロプラスチックと呼ばれる、海に流れ込んだ時点で既に微小な状態だったものと、第二次マイクロプラスチックと呼ばれる、自然の中に流れ出た大きなプラスチックごみの破片から発生したものとに分けることが対策を考えるうえでは、大事とされています。

沿岸国、特に廃棄物処理の進んでいない発展途上国では、マクロプラスチックの海への排出対策に比重を置くべきですし、先進国ではマイクロプラスチックへの対策により比重を置くべき(場合がある)からです。

先進的な廃棄物管理施設を持つ国では、海への流入を考える場合、プラスチック排出量のうち、マイクロプラスチックが割合で言えばマクロプラスチックより多いと思われます。また、マイクロプラスチックは、家庭排水や道路排水などの処理施設を通過して、川や海へ注がれているなどマクロプラスチックよりもより複雑なルートをたどって海にたどり着くことを想定した総合的な対策が必要です。

 


ビーチクリーンは大事なアクション

ビーチクリーンは、廃棄されたプラスチックを回収する取組であることから、「そもそもの廃棄量を減らすのが先決」という声が上がることもあります。

しかし、プラスチックが「マイクロプラスチック」になって海洋に流れ出すと、もはや、回収することが非常に難しいのです。

そして、第一次マイクロプラスチックは世界のプラスチック排出量のうち15%にあたる150万トンと考えられる(Geyer et al.,2017)のに対して、残りの85%はマクロプラスチックの形で海洋に流れ出ます。

マクロプラスチックが、海で破砕されて、第2次マイクロプラスチックになる前に回収する、すなわち、ビーチクリーンは、対処療法ではありますが、プラスチックが分解までに長い時間を必要とすることを考えると、やはり、重要な取り組みといえるでしょう。

(翻訳・編集チーム:道家哲平、松代大輝)

出典:The marine plastic footprint(2020)

 

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