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2017.03.30(2019.07.08 更新)

絶滅危惧種・サシバはどんな鳥?(前編)

読み物

専門度:専門度2

写真:小玉和夫

テーマ:生息環境創出

フィールド:里やま

「サシバ」とい鳥をご存じですか? 里やまで人間の近くに暮らす猛禽類です。身近な場所に暮らすサシバですが、日本にいるのは繁殖期で、冬は東南アジアなどに渡っていきます。日本、そして海を渡った越冬地でどんな暮らしをしているのか? なぜ遠くまで渡るのか? 近年少しずつサシバの生態が明らかになってきています。

 

世界を股にかけるタカ

東 淳樹(岩手大学農学部保全生物学研究室 講師)

サシバは、日本では東北地方から九州地方で、低地の農村地帯(里やま環境)から山地で繁殖する。(写真:小玉和夫)

 

 

渡りをする日本のタカの中で最も人気があるサシバ。世界のサシバの仲間(サシバ属)にはサシバのほかに、アフリカサシバ(アフリカ)、メジロサシバ(南アジア)、チャバネサシバ(東南アジア)が知られています。

いずれも熱帯地方に生息しており、サシバもまた、南西諸島から東南アジアにかけて越冬することから、サシバ属4種は南方起源のグループと考えらます。しかし、サシバだけが温帯~冷温帯地方で繁殖するために大規模な渡りを行います。渡りの中継地では、日本だけでなく、台湾、タイ、マレーシア、フィリピンなどの各国で渡りの観察が行われています。

図1 世界のサシバ属4種の生息分布(Brown and Amondon 1968; Kugai 1995から作図)

 

しかし、今このサシバが減少しています。渡りの際に通過する沖縄県宮古島ではその確認数が減少し(図2)、第6回自然環境保全基礎調査鳥類繁殖分布調査(図3)では、繁殖が確認、または可能性のある3次メッシュが1974-78年の233メッシュから、97-02年には147メッシュに激減しており、06年12月に改定された環境省レッドリストでは、絶滅危惧Ⅱ類として指定されました。

 

図2 宮古島における秋の渡りのサシバの飛来カウント数(出典:宮古野鳥の会、沖縄県自然保護課調べ)

 

図3 第6回自然環境保全基礎調査鳥類繁殖分布調査のサシバ調査結果(出典:第6回自然環境保全基礎調査鳥類繁殖分布調査(環境省 2004))

 

日本でのサシバの生活史

日本の里やまで育つサシバの幼鳥。成鳥は胸のラインが横縞だが幼鳥は縦縞。

 

関東地方でソメイヨシノの開花のニュースが聞かれる3月下旬ごろから、半年ぶりに越冬地から日本各地の里やまに舞い戻ってきたサシバの目撃情報が聞かれます。

繁殖地である日本の里やまには一足先に雄が到達し、雄はなわばり防衛をしながら雌を待つようです。雌の到着後、求愛給餌と交尾、そして巣づくりが始められます。巣は、狩場となる水田などの開けた面に接した林の中のアカマツやスギなどの針葉樹や枝ぶりのよいスダジイやコナラなどの広葉樹に架けられます。巣の大きさはカラスの巣よりも少し大きく直径60‌cmほどです。

4月下旬から5月上旬にかけて通常2~4個の卵が産下されますが多くは3卵です。抱卵・抱雛は雌の役目で、1日のうち雄が短時間の交代を数回行います。産卵から約1カ月後の5月下旬から6月上旬にかけて雛が孵化します。育雛初期までは雄がもっぱら餌運びをしますが、雛が成長するにつれて、雌雄で餌運びに忙しくなります。

孵化から約35日前後が経過した6月下旬から7月上旬にかけて雛は巣立ち始めます。巣立ち直後は、営巣地周辺で親からの給餌を受けます。その後しばらくして、親子ともに営巣地を離れますが、本格的に渡りが始まるまでの生息地やそこでの生態はよく分かっていません。おそらく森林性の小動物を狩りながらほとんど林内から出ない暮らしをしているのでしょう。

9月中旬から10月中旬にかけて、成鳥およびその年生まれの幼鳥が群れをなして南へ渡ります。日本各地の渡りの個体数は「タカの渡り全国ネットワーク」のウェブサイトで知ることができます。

 

 

代表的な里やまの指標種

サシバの多くは里やま環境、特に谷津や谷戸と呼ばれる水田や畑、果樹園などを好んで利用します。立木や電信柱、杭などにとまり、地面などに出現する小動物を探し、見つけたら襲いかかる行動を繰り返します。

食物となるのは、ヘビ、トカゲなどの爬虫類、カエルなどの両生類、アメリカザリガニや大型昆虫、ムカデなどの節足動物、ネズミやモグラなどの小型哺乳類、そして小型鳥類などのあらゆる小動物たちです。

つまり、食物が豊富で、とまり場や営巣できる木が豊富にあり、しかも巣と狩場が近接している里やま環境は、繁殖地として絶好です。餌が豊富な里やま環境で繁殖するサシバの行動圏はほかの猛禽類と比較しても概して狭いのが特徴です。
サシバの親は1日に20~50回の給餌を35日間ほど続け、雛が巣立つまでには1羽あたり約5㎏の小動物を与えます。サシバが繁殖できる里やまは、質(種数)、量(個体数)ともに満たされた生物多様性が極めて高い空間なのです。これが、サシバが里やまの指標種と言われるゆえんです。なお、近年は里やまのほかに山岳地帯で繁殖する個体群がいることも明らかになっています。どのような違いがあるか、今後の研究が待たれます。

 

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