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2023.05.22(2023.05.22 更新)

【砂浜ムーブメント2022】生きものしらべ結果レポート速報版「貝からみえたこと」

株式会社バイオーム、株式会社ピリカ、こくみん共済coop、株式会社サニクリーンなど

対象:一般市民ファミリー子ども学生

貢献:自然の守り手拡大SDGs愛知ターゲット砂浜ムーブメント

速報板:買いから見えたこと(速報板)

日本自然保護協会(以下、NACS-J)は、多くの企業や団体の皆さまと連携して、自然海岸の減少や海ごみの問題など、海や砂浜が直面している課題の解決を目指して「全国砂浜ムーブメント」(以下、砂浜ムーブメント)を主催しています。

2022年度の活動の1つ「砂浜のいきものをしらべよう!」では、「砂浜を知る手がかりになる貝など8種」をはじめ、砂浜の生きものしらべを実施しました。お寄せいただいた情報はなんと計54,000件以上!ご参加くださった皆様、ありがとうございました。

今回NACS-Jが実施した生きものしらべでは、千葉県立中央博物館の黒住耐二先生(貝類学)に学術協力をいただきました。黒住先生には2012年にNACS-Jが実施した「自然しらべ2012 貝がらさがし!」でもご協力をいただいています。

今回は10年前との比較も踏まえ、まずは速報版として、分析結果を3つのポイントにまとめご紹介します。


砂浜ムーブメントでは、1人でも多くの方に海や砂浜の魅力や課題を知り、守る力になっていただくべく、3つのアクションを掲げ、全国の皆さまに参加、活動いただきました。

砂浜を守る3つのアクション

  • Act1.砂浜ノートを子どもたちに届けよう!(結果:20,000人)
  • Act2.砂浜のいきものをしらべよう!(結果:54,025件)
  • Act3.砂浜や街中でごみを拾おう!(結果:10,002,067個)

2022年度の活動まとめこちら

「砂浜は生きものが少ない」と思われがちですが、実はいろんな砂浜ならではの生きものが暮らしています。そこでAct2.では、NACS-Jが主催する自然の健康診断調査「自然しらべ」の一環として「砂浜のいきものをしらべよう!」を実施。砂浜の「自然しらべ」を通して、海や砂浜の魅力を知っていただき、お寄せいただいた情報をもとに、砂浜の自然環境の現状を知ることを目的に実施しました。

「砂浜のいきものをしらべよう! 砂浜いきものクエスト ~自然しらべ2022~」概要

調査期間:
2022年5月30日(ごみゼロの日)~2022年12月31日
対象種:
砂浜を知る手がかりになる貝など8種を含む、砂浜の生きもの
調査方法:
生きものの写真を、いきものコレクションアプリ「バイオーム」に投稿する
ポイント:
2012年に実施した「自然しらべ2012 貝がらさがし!」結果との比較
学術協力:
黒住耐二(千葉県立中央博物館[貝類学])

お寄せいただいた生きもの写真情報

報告総数:
砂浜450地点以上から計54,025件
貝類の報告数:
7,863件(養殖等を除く)
8種の報告数 :
654件

8種の貝の写真

△砂浜を知る手がかりになる貝など8種(以下、クエスト対象種)

いきものコレクションアプリ「バイオーム」についてはこちら

自然しらべ2012 貝がらさがし!」についてはこちら


貝からみえてきた日本の砂浜の現状(速報版)

黒住耐二:千葉県立中央博物館[貝類学]

ポイント1.10年前との比べてみると?!

 ~「自然しらべ2012 貝がらさがし!」との比較~

一部の種は個体数の減少から十分に回復していない可能性

オオモモノハナ、ベニガイ、ヤカドツノガイは、高度経済成長期後に激減した種です。この3種は、10年前に実施した「自然しらべ2012 貝からさがし!」(以下、自然しらべ2012)でも対象としましたが、今回の報告では、数が減少していました。当時、ベニガイ等は回復しつつあると判断しましたが、今回のデータからはそのように読み取ることができず、この3種は未だ十分に各地で個体数が増えていないようです。

分布域の大きな変化はみられず

今回のデータでは、各種の従来の分布域を大きく拡大したものはありませんでした。クエスト種に熱帯性の種ではなく暖温帯に分布する種を選んだことなどが要因と考えられます。自然しらべ2012の分布プロットと比較すると、データ数は少ないものの、いずれも分布域に大きな変化はなかったという結果でした。
ただ、一部の種で分布域が拡大していたものも認められたことから、こちらは総まとめ版で紹介をしていきます。

△お寄せいただいた生きもの写真

ポイント2.分布域なのに貝がいない?好みの砂浜”でなかった!?

 ~生息地点の不均一性や個体数変動~

年による生息数の変化が推測された

フジノハナガイ、ナミノコガイ、ダンベイキサゴの分布は、図鑑では「茨城・男鹿半島~九州」等となっています。これを見ると、この地域の砂浜に満遍なく生息し、“どこでも見ることができる”と思われるかもしれません。
しかし、実際には、これらの種が生息している地域は限られており、各種の“好みの砂浜”が存在します。主に砂粒の大きさ(粒度)や粒の均一性、汚染の状況等によります。

今回のデータと自然しらべ2012との比較では、上記の3種に関して、年による生息数の変化(=個体数変動)が推測されました。各種の生息地は分布域内に均一ではなく、個体数の変動があることで、普通種だと思っていても砂浜の粒度等が変化すると、個体数が激減してしまうことがあります。砂浜は存在していたとしても、貝はなかなか復活してこないということが推察されるわけです。

△お寄せいただいた生きもの写真

ポイント3.貝からわかる砂浜の環境に影響を与える要因

沖のテトラポッドやダム等の設置

貝類の生息を変化させる究極的な原因には、砂浜の粒度等の変化が考えられます。これらの変化の要因には、沖のテトラポッド設置や河川からの土砂の流れ込み等が想定されます。テトラポッドによる影響は、波の力が弱まることで、テトラポッドの内側は穏やかとなり、打ち上げられる砂粒も細かくなると予想されます。また、河川からの土砂自体が砂の大きな供給源ですが、上流でのダム等の建設は、やはり土砂の量と粒の大きさを変えてしまう原因といえるでしょう。

砂浜を後世に残していくために

今回の報告の中では、海水浴場として人気な海岸で、状態の良い環境に生息するベニガイが記録されました。この海岸には護岸もあるのですが、わずかに残った一部の砂浜にベニガイが棲めるような環境が温存されていたと推測します。
ベニガイは準絶滅危惧種(環境省レッドリスト2020)のため、保護の観点から地点は非公開とさせていただきます。

護岸は、砂浜の減少を食い止める手立ての1つではありますが、大前提として、砂浜が現況と変わらず存在することが保障でき、そこに棲む生き物が永続的に見られるようにしなければいけません。

そのためには、まずは事前に砂浜や周辺の生き物を中心とした自然環境を調査することがとても大切です。そのうえで、様々な行為・改変の程度、面積・設置のゾーン等を検討し、地域の方々との合意の元に、砂浜という場所の永続的な利用を考えていくべきでしょう。

失われつつある砂浜をせめて今の状況のまま、後世の子供たちに残していくべきだと思います。

△お寄せいただいたベニガイの写真


現在、総まとめ版を作成中!

お寄せいただいたデータの詳細やアプリ(AI)を使った生物調査について、総まとめ版として近日中に結果レポートを公開します。

砂浜ムーブメント2023が5月30日(ごみゼロの日)からスタートします!

「貝からみえてきたこと」をふまえ、今年も1人でも多くの砂浜を見る目を増やすべく、さまざまな活動を実施してまいります。ご注目の上、今年も多くの方のご参加をお待ちしております!

全国砂浜ムーブメント特設サイトはこちら!

5月30日に2023バージョンに切り替わります。

企業・団体様へ

砂浜ムーブメントは、多くの企業や団体の皆さまと連携して実施しております。ご支援、ご協力いただける企業や団体の皆さまを募集しています。海や砂浜の自然環境の問題の解決を目指してNACS-Jと連携しませんか!?ご連絡お待ちしております。

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