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2023.03.13(2023.04.04 更新)

三菱地所、みなかみ町と3者協定を締結。ネイチャーポジティブの実現を目指し、生物多様性の定量評価にも挑戦

三菱地所株式会社、群馬県みなかみ町

対象:一般市民ファミリー子ども学生

貢献:自然を活かした地域づくり自然の守り手拡大日本の絶滅危惧種を守るSDGs愛知ターゲット

各代表三者による締結の写真

▲三菱地所 執行役専務 中島篤(左)、みなかみ町長 阿部賢一(中央)、 日本自然保護協会 執行理事、事務局長 志村智子(右)

日本自然保護協会(以下、NACS-J)は、2023年2月27日、三菱地所株式会社(以下、三菱地所)、群馬県みなかみ町(以下、みなかみ町)との3者で10年間の連携協定を締結しました。

これまでNACS-Jは、みなかみ町で赤谷プロジェクトなどさまざまな生物多様性保全の活動を進めてきました。そのみなかみ町を舞台に、長年会員として連携する三菱地所、そして、みなかみ町の皆さまと一緒に、ネイチャーポジティブ※1 な社会の実現を目指して、NbS(Nature-based Solutions)※2 の実践、生物多様性の定量的な評価にも挑みます。

世界では生物多様性の損失が止まらず、今後10年で最も急速に悪化するリスクのひとつといわれる中、生物多様性保全へ大規模な資金動員が求められています。そんな中、資金面からも影響力としても、企業の生物多様性保全に対する役割が非常に注目されています。

今回本取組みでは、三菱地所が、企業版ふるさと納税制度(正式名称:地方創生応援税制)を活用し、協定期間内に、みなかみ町に6億円の寄付を予定しています。日本から生物多様性保全を前進させる大規模な取組みとなります。

※1 ネイチャーポジティブ:人と地球のために、生物多様性の損失に歯止めをかけ、自然を回復させること。生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)でも2030年までにネイチャーポジティブな社会を実現することが国際社会の使命とされ、そのための世界目標が定められた。

※2 NbS(Nature-based Solutions):「自然に根差した解決策」と直訳され、社会課題解決におけるアプローチとして世界的に注目されており、国連環境計画でもその重要性が訴えられている。


生物多様性の損失は、気候変動とも並ぶ地球環境についての世界的な重要課題となっています。課題解決に向け、政府、企業を含むあらゆるセクターによる一層の取り組みが必要とされています。

今回、関東圏の水源である利根川の源流部に位置するみなかみ町、その流域である丸の内エリアを中心に事業を営む三菱地所、環境NGOとして生物多様性の保全に高い専門性を持ち全国で活動する日本自然保護協会の3者が協定を結び、新たに生物多様性の保全、復元へ取り組みます。企業・行政・NGOが一体となって連携し、それぞれの知見を活かしながら、ネイチャーポジティブな社会の実現を目指します。

ネイチャーポジティブのための3者連携協定のイメージ▲クリックすると大きくなります(別ウィンドウで表示)

主な取り組み

生物多様性が劣化した人工林を自然林へ転換する活動(約80ha)

管理の行き届いていない人工林は、自然の林よりも生物多様性が低いことがわかっています。この取り組みでは、そのような人工林を本来の植生等を踏まえた自然の林へ戻していくことで、生物多様性の保全と回復を目指します。みなかみ町内を舞台に10年で約80haを目標に活動予定です。自然林へ戻していく過程では、植樹や除伐などの手法を用います。また、イヌワシやクマタカなど、生態系の指標種にもなる動植物の保全と一体となった取り組みを推進します。

活動イメージ

1)管理の行き届いていない人工林のイメージ

2)除伐や植樹による転換活動のイメージ

3)再生途中の地域本来の自然林のイメージ

生物多様性豊かな里地里山の保全と再生活動

里地里山は、長い年月をかけて人と自然が関わり合い形成された日本の特長的な自然環境のひとつで、水田やため池、草地などの多様な環境に、多くの動植物が生息しています。しかし、耕作放棄や外来種の移入などに起因した里地里山の荒廃は、日本の生物多様性を保全する上で大きな課題となっており、みなかみ町も例外ではありません。本取り組みでは、みなかみ町の里地里山を舞台に、ため池の外来種防除などに取り組み、生物多様性豊かな里地里山の保全と復元を目指します。

ニホンジカの低密度管理の実現

ニホンジカの増加は、農林業への被害や森林生態系の破壊など、全国的な課題となっており、みなかみ町でも増えつつあることからその対策が急がれます。森林生態系のバランスを保ち生物多様性の損失を防ぐだけでなく、増えすぎてからではその対策に膨大なコストと時間を要することから、科学的なモニタリングと効率的な捕獲技術の開発を急ぎ、ニホンジカの低密度管理を実現させます。

NbS(Nature-based Solutions)の実践

①~③までの取組みを通して、生物多様性を活かした防災減災、水源涵養、獣害対策、持続的な地域づくりなど、NbSを実践していきます。具体的には、人工林を自然林へ転換する活動のなかで出た木材の利活用や、生物多様性豊かな里地里山で育まれた一次産品の高付加価値化、低密度管理実現に向けたシカ肉の利活用などの検討を進めていきます。また、自然の守り手を増やすべく、本取組みへの市民参加や教育への活用の検討も進め、関係人口の増加や特色のある教育の推進にもつなげていきます。

生物多様性保全や自然の有する多面的機能の定量的評価への挑戦と活用

生物多様性保全の定量的評価は、COP15においてもネイチャーポジティブな社会を実現していく上で重要議題となりました。本取り組みでは、研究機関や大学等とも連携し、国際的な先駆事例にもなり得る生物多様性の評価手法を開発して定量評価に挑戦します。評価は、適時開示やユネスコエコパークの定期報告などに活用し、世界に向けて発信していきます。

参考

群馬県みなかみ町

群馬県最北部に所在し、町(広さは東京23区の1.2倍)の約90%が山林。豊かな生態系を有し、地域の自然資源を活用した持続可能な経済活動を進めるモデル地域であるユネスコエコパーク(生物圏保存地域)に認定されている。利根川の源流を存しており、その水の一部は武蔵水道・荒川を経由して丸の内を含む首都圏3千万人の暮らしを支えている。

公益財団法人日本自然保護協会

日本で最も歴史のある環境NGO。三菱地所は2015年より企業会員。皇居外苑の水辺環境の復元に取組む「濠プロジェクト」、宮古島での環境保全活動にて継続的に連携。みなかみ町では、国や地域の三者で連携して生物多様性の保全と持続的な地域づくりに取組む「赤谷プロジェクト」を実施。「自然のちからで、明日をひらく。」という活動メッセージを掲げ、人と自然がともに生き、赤ちゃんからお年寄りまでが美しく豊かな自然に囲まれ、笑顔で生活できる社会を目指して活動している。

三菱地所株式会社

130年以上にわたり丸の内エリア(大手町・丸の内・有楽町地区)をはじめとしてさまざまな場所でまちづくりを推進している総合デベロッパー。三菱地所グループは、2050年に目指すべき姿として「三菱地所グループのサステナビリティビジョン2050~ Be the Ecosystem Engineers」を制定。立場の異なるあらゆる主体が、経済・環境・社会の全ての面で、持続的に共生関係を構築できる場と仕組み(=エコシステム)を提供する企業(=エンジニアズ)であることを目指している。


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