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モニタリングサイト1000里地調査

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2018.11.12(2018.11.13 更新)

愛知県瀬戸市
2018年11月2日

コアサイト海上の森で調査講習会を開催しました!

関連イベント

専門度:専門度3

モニ1000里地調査 コアサイト海上の森

こんにちは、NACS-J自然保護部の後藤ななです。

NACS-Jでは全国の市民の方とともに、「モニタリングサイト1000(以下、モニ1000)里地調査(環境省事業)」という里山市民調査を実施しています。

全国の市民調査で大切になるのが、同じ調査の手法で記録をとることです。そして、その調査手法をお伝えする場が調査講習会です。

今回は、11月2~3日にコアサイト海上の森(愛知県瀬戸市)で開催した調査講習会の様子をお伝えします!


調査講習会@コアサイト海上の森(写真)

 

はじめに

コアサイト海上の森は、1990年代初頭、愛知万博の会場候補地として、関連施設や会場に関連する道路建設、跡地の住宅地開発などの様々な開発計画が発表された場所でした。しかし、地域の市民の方々の熱心な交渉とともに、海上の森の自然環境の重要性が認知され開発計画は変更されることとなりました。現在では大部分が県有林の自然環境保全地域に指定され、愛知県「あいち海上の森センター」が管理しています。保護運動の落ち着いたあと、保全されることとなった海上の森の自然環境を見守るために、2008年からはモニ1000里地調査のコアサイトとして、海上の森モニタリングサイト1000調査の会と山口ホタルの会、あいち海上の森センターの皆さんで、現在、5項目の調査が実施されています。

今回の調査講習会では、この自然豊かなコアサイト海上の森を会場として、2日間で植物相、鳥類、チョウ類、哺乳類、水環境の調査講習を行いました。地元愛知県や岐阜県などの近隣県、そして広島県や大分県などの遠方からも調査員の皆さんにお集まりいただき、さらには名城大学の学生さんたちも参加し、2日間で50人強の方にお越しいただきました。

調査講習会のはじめには、現地調査員の曽我部行子さんに海上の森での今までの活動の経緯、現在の調査活動がどのように実施されているかお話いただきました。万博に関連した保護活動が落ちついたのちに、モニ1000をはじめとした自然環境調査がこの森を見守るために大事な役割を果たしていること、活動を継続していく上で、自然観察を織り交ぜながら調査を楽しむ仲間がいるからこそ続けていけること等を伝えていただきました。

1日目

1日目の鳥類調査の講習は、バードリサーチの植田睦之さんに講師を担当いただき実施しました。鳥類調査では、前後左右50m半径の半球のなかに含まれる鳥を記録していきます。実際の屋外実習の冒頭では、参加者みんなで距離計を使って50mの範囲がどれくらいの範囲なのか確認をしました。そこから、田んぼの脇の開けた環境の区間と森林のなかの区間、2つの区間を歩きながら実際に確認された鳥の種類・個体数を記録していきました。目視だけではなく鳴き声も含めて記録する実際の調査手法を確認しました。

 

鳥類調査の様子(写真)
▲鳥類調査の様子。どんな鳥が記録されたでしょうか?

 

午後は、講師に中部大学の村上哲夫先生を招き水環境調査の講習を行いました。

屋内では、水環境調査の意義について説明したあと、水環境のタイプ(ため池や小川、湧き水など)ごとに、測定する項目とそのために使う機材の取り扱い方についても解説いただきました。後半は実際に野外に出て、ため池や小川で実習を行いました。

講習のなかでは、海上の森には「赤池」と呼ばれるため池があり、実際に水(水底)が赤く見えるところがるのですが、先生からは、これは水に含まれる鉄分が析出して赤色になっているという解説いただきました。また、地元の参加者の方からは、この地域では地名に「久手」とつく場所が多く(海上の森にも“広久手”と呼ばれる場所があったり、近くには歴史上の舞台ともなった “長久手”があります)、これらはくねくねした谷地形を指すことなどもご紹介いただきました。こうした呼び名・地名からも、昔からこの地域では水環境や地形を呼び分けるなどして、人々の暮らしと密に関わりをもっていたことが伺えました。

 

水環境調査、pH測定の様子(写真)
▲水環境調査、pH測定の様子。採水の前には機材の共洗いをお忘れなく!

 

2日目

2日目には、チョウ類、哺乳類、植物相の講習を行いました。

哺乳類の調査講習では、東京でモニ1000里地調査の一般サイトをされているフュージョン長池の片山敦さん・小林健人さんに講師をしていただきました。

哺乳類調査は、今まで使用していた機材から、第4期の開始する今年度より新たな機材への切替があり、既存の調査サイトも含めて多くの調査員の方に受講いただきました。

屋内での講習後、野外では獣道を探したり、実際に雑木林のなかでカメラを設置する実習を行いました。カメラを設置する際には、哺乳類が使いそうな獣道に対して垂直になるようにカメラを設置すること、安全に設置・回収できるように斜面などは避けたほうがよいことなど、調査を実施する上で注意すべきポイントを押さえながら説明いただきました。

 

哺乳類調査の様子(写真)
▲哺乳類調査の様子。カメラ設置後は、はじめに地点名・記録開始日時を書いたボードを持って記念撮影しましょう!

 

チョウ類調査講習では、信州大学名誉教授の中村寛志先生を講師にお招きして実施しました。

屋内講義では、中村先生に、記録したチョウ類相に基づいて海上の森の自然環境の特徴を解析したり他の環境との比較を行った実際の事例をご紹介いただき、チョウ類の環境指標性などについて解説いただきました。

モニ1000里地のチョウ類調査では、鳥類調査と同様に、半径5mの範囲内に含まれたチョウ類の種数と個体数を記録していきます。後半の屋外実習では、11月のはじめということもあり実際に見ることのできたチョウ類は少なかったですが、見られた種を一度捕獲して同定ポイントなどについてじっくり観察しました。

 

信州大学名誉教授 中村寛志先生(写真)

 

最後に植物相調査の講習を行いました。

講師はNACS-J藤田と、急きょ助っ人にフュージョン長池の小林健人さんにも来ていただきました。

植物相調査は、自ら動くことのできない植物を記録することで、その環境変化をみていくものです。植物の種数も多いことから難しいと思われがちな調査ですが、モニ1000里地調査では、主に草本を対象とし、さらにそのなかでも花や実など繁殖器官のあるもののみに記録する種数を絞ることで、市民でも参加しやすい調査となっています。また、種同定にも重要なポイントとなる花などで見分けることで、誤同定を減らすような調査設計としています。

実習では、地元の調査員の方々に加えて広島や大分、東京と様々な地域からの参加者の皆さんとともに、森林のなかや湿地を歩きました。地元の方の解説や、他地方の方の新鮮な驚き・発見を交えながらの実習となりました。

 

植物相調査の様子(写真)

 

おわりに

2日間の講習を通して、参加者の皆さんととても楽しい時間を過ごすことができました。また、参加者からは、地域のおすすめの植物図鑑などをご紹介いただいたり、岐阜・愛知県境で特に話題となっている豚コレラの流行状況などを教えていただいたり、貴重な情報交換の場ともなりました。

お集まりいただいた皆さま、各調査項目で講師をしていただいた皆さま、会場となったあいち海上の森センターの皆さま、そして海上の森の日頃の自然環境の様子をご紹介いただいた地元調査員の皆さま、誠にありがとうございました。

これから全国のそれぞれの調査サイトでの調査がはじまるかと思いますが、「がんばりすぎない」を掛け声に、気長に今後もモニ1000里地調査をよろしくお願いいたします!

 

【番外編】実は、5年前の2013年にも、コアサイト海上の森では、同じく調査講習会を開催しています。お時間のあるときに5年前の様子もぜひご覧ください。
https://www.nacsj.or.jp/archive/2013/06/2211/