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モニタリングサイト1000里地調査

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2018.07.09(2018.07.13 更新)

神奈川県横浜市
2018年6月29日~7月1日

横浜自然観察の森でモニ1000里地調査の調査講習会を開催しました!

関連イベント

専門度:専門度4

▲鳥類調査講習。青空教室で実習!

こんにちは、モニタリングサイト1000(以下、モニ1000)里地調査の事務局の後藤ななです。

この6月29日・30日および7月1日に、モニ1000里地調査の説明会と調査講習会を実施しました。ここでは、調査講習会のいくつかの項目について様子をご紹介します!


調査講習会の会場となったのは、一般サイトの「横浜自然観察の森」。10年前からモニ1000里地調査に参加されているベテラン調査サイトです。

宮城県や愛媛県、静岡県など全国から調査員の方にお集まりいただき、3日間で約50名の方にご参加いただきました。

この3日間で、植物相・鳥類・チョウ類・哺乳類・ホタル類そして水環境という6つの調査項目の講習と、市民調査の意義やモニ1000里地調査の事業内容について伝える説明会を実施するという大ボリュームの内容だったのですが、項目ごとに専門家の先生方を講師に招き、会場となった横浜自然観察の森のスタッフの皆さんや友の会の皆さんにサイトの様子を解説していただきながら無事終えることができました。お集まりいただいた皆さま、ご協力いただいた皆さま、本当にありがとうございました。


水環境の調査

1つ目が水環境調査です。モニ1000の水環境調査では、池や用水路などの小川、湧き水など、里山のなかに存在する様々な水環境を対象に調査を行います。講師の村上哲夫先生(中部大学)からは、市民が水環境を調べる意義や調査結果の数値から水環境の変化の読み解き方などについて講義をしていただきました。

解説のなかでは、有名な科学者ファラデーが産業化により汚れてしまったテムズ川の水の精に、白いカードを渡すという風刺画が出てきます。この絵は、テムズ川の中に、先端に白いカードをつけた棒を沈めることで「どのくらい濁っているのか」を指標化し、その濁り具合を記録することで、水質改善を促すための根拠にしたことを描いたものなのですが、“水環境”という一見変化を読み解きづらいものを、声のない水の精と意思疎通をとるというシーンに当てはめて表現したものなのだそうです。モニ1000でも、水環境の透視度(透明の筒の一番下に目印を沈めた上で試験水を入れて、上から覗いて、目印が見えるまで水を抜くというもの)の調査を行います。とても単純な調査ですが記録をしていくことで、水の濁りが変化したときになぜそのような変化があったのか気づくことができます。

その後の屋外実習では、調査で使う機材の使い方の解説と実践を行いました。実習では、実際の調査では使いませんが、お子さんなどとも一緒に水質の変化などを体験できるような、紫キャベツなどのごく身近な食材などを用いたpHの変化を可視化する簡単な実験も紹介いただきました。

 

水質の変化を可視化する実験(写真)

▲紫キャベツの溶液に塩飴を溶かした試験水を混ぜる様子。色がみるみる変わる!

 

チョウ類の調査

次に、チョウ類調査では、講師に帝京科学大学の江田慧子先生を招いて実施しました。日本でみられる多くのチョウ類は、研究者や愛好家も多く、幼虫の食草をはじめとした生態が事細かに調べられています。ある種類のチョウがその場所に飛んでいるということは、そこにどんな植物が生えているのか、どんな環境なのかなど、沢山の情報を読み解くことができます。また、ガの仲間ほど種類が多すぎず、市民でも調べることのできる程よい種数であることも、市民調査として優れている点でもあります。

モニ1000のチョウ類調査では、草地や林縁・林内などの異なる環境ごとに区間を分けたルート上で、前方5mの半球内の範囲にいたチョウの種類と個体数を記録します。

野外実習では、参加者みんなで5mは自分の歩幅何歩分なのかを確認してみたり、模擬調査を行いました。冒頭でも述べたように、横浜自然観察の森はモニ1000を開始して10年以上も調査が行われており、現地の調査員の方から、日頃の調査の様子や10年間のサイトの環境の変化などについても紹介していただきました。

江田先生からは、調査日以外にみた貴重なチョウの記録など、モニ1000の調査記録としてはこぼれてしまうものも地域のチョウ類相の記録としては非常に重要であることや、簡単な解析でもそのサイトの環境を読み解くことができ、データを取るだけで終わるのではなく読み解きを進めていくことの重要性などもお伝えいただきました。

 

目撃したチョウを図鑑で調べる参加者(写真)

▲チョウ類調査の様子。見られたチョウを図鑑で確認!

 

最後は説明会

最後に行った説明会では、新しいサイトの方、すでに調査を続けてこられてきた方、そして、これから調査に参加したいと検討している方など、様々な方にご参加いただきました。

説明会では、モニ1000里地調査は全国の傾向を読み解き、里地生態系の変化を迅速に把握しながら保全に役立てていくことも大事な目的ですが、一つ一つのサイトが調査結果を活かしてそのサイトの保全管理に役立てていくこともとても大切なことであることを事務局からお伝えしました。

実は、いま現在、調査員の方々に「モニ1000里地活用事例収集アンケート」にご協力いただいており、全国から実に様々な活用事例のご報告が集まってきています。今回の説明会では、アンケート結果についてはご紹介しきれなかったのですが、まさにこうした一つひとつの事例こそが、モニ1000里地調査の本質であり、市民調査の力です。これから調査をはじめられる方も、「モニタリング調査は自然の健康診断」として、モニ1000を基盤として、定期健診を進めながら何か変化がみられたときには現場の自然の治療と経過観察を進めて、地域の順応的管理に活かしていただければ幸いです。


3日間におよぶ説明会と調査講習会は、炎天下でしたが、皆さんとともに充実して実施することができました。また、遠方で参加できなかったという調査員の方々に向けても、今回の調査講習会の内容を、動画でお届けできないか検討をしています。また準備ができましたらご案内しますので、今しばらくお待ちください。

説明会・調査講習会を終えて、これからは各サイトで調査がはじまります。実際に開始してみて感じる疑問などもあるかと思いますが、そのときはいつでも事務局までご質問・ご相談をいただければと思います。これからも引き続きどうぞよろしくお願いします!

 

ホタル調査のチーム(写真)

▲ホタル類調査。明るい時間から環境条件をとります。

 

室内で講義で受ける哺乳類調査チーム(写真)

▲哺乳類調査。「センサーカメラを、使ったことありますか?」

 

調査を終えた講師と参加者(写真)

▲植物相調査実習のおわり。暑いなか、お疲れさまでした!