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2024.04.19(2024.04.19 更新)

自然環境上問題のある場所で複数の環境アセス手続きが進行 絶滅危惧種サシバに悪影響のある風力発電計画に事業見直しを求める

サシバの画像

絶滅危惧種の渡り鳥サシバ(写真:与名正三氏)

  • 日本自然保護協会(NACS-J)は、「(仮称)出水ウィンドファーム事業(事業者:日本風力サービス株式会社)」の環境影響評価準備書に対し、事業の一部中止を求めて意見書を提出しました。
  • 計画地は、2023年に環境アセス手続きのあった計画地と全く同じ範囲で、絶滅危惧種の猛禽類・サシバやクマタカなど、鳥類のバードストライクのリスクが極めて高いことから、風車設置の再考を求め意見しました。

公益財団法人日本自然保護協会(理事長:亀山 章)は、自然環境に配慮した立地での再生可能エネルギーの推進を提唱しています。
当会は、今回、熊本県水俣市と鹿児島県出水市の県境で計画されている「(仮称)出水ウィンドファーム事業(事業者:日本風力サービス株式会社)」の環境影響評価準備書に関する意見書を提出しました。

提出した意見書全文はこちら(NACS-J資料室へ移動します。)

「(仮称)肥薩ウインドファーム事業」と同じ場所、同じ自然保護上の問題

  • 本事業の計画地は、2023年5月に環境影響評価準備書の縦覧のあった「(仮称)肥薩ウインドファーム事業(事業者:電源開発株式会社)」と全く同じ範囲である。
  • すでに「(仮称)肥薩ウインドファーム事業」において、クマタカや絶滅危惧種の渡り鳥サシバの悪影響が指摘されているにも関わらず、本事業の環境影響評価では影響を過小評価している点がある。
  • 本アセス図書は、多くの図表を非公開にしており詳細が不透明な上、不透明な調査の結果、環境影響が低く見積もられている。これはよりよい事業計画を作るための環境影響評価の理念を裏切るものである。再度現地調査を行い正確な評価が求められる。

(参考)「(仮称)肥薩ウインドファーム事業(事業者:電源開発株式会社)」の環境影響評価準備書へ意見書を提出(2023年6月)

なぜ、同じ場所で再び環境影響評価準備書?

昨今、同じ計画地で複数の事業者が環境影響評価手続きを進めている事案が増えている。これは、国内で風況が良く、送電網への接続性が良いといった風力発電を建設する上で費用対効果のよい立地が少なくなっており、事業者同士の場所の取り合いが起きていることが考えられる。
再生可能エネルギー(再エネ)電気の固定価格買取制度(FIT/FIP)の事業計画認定は、本来、同一地の認定は一事業に限られている。FIT/FIP認定には計画地の所有権や使用権を証明する書類が必要だが、今回のように国有林が含まれる場合、貸付契約には法令手続きや環境影響評価手続きが求められる。そして、これらの手続きには時間がかかるため、書類提出には3年間の猶予が与えられている。そのため、同一地で計画を進める他事業者の期限切れを期待して、同一地で複数事業者が環境影響評価手続きを進める事例が増加していると考えられる。

風況や送電線への接続など費用対効果の点だけが重視され事業者が場所を取り合う構図が生じると、生物多様性上の重要地域が常に開発の脅威にさらされることとなる。日本自然保護協会は、自然環境に配慮した立地での再生可能エネルギーの推進を提唱する立場から、今回のようなサシバの渡りのルート上での計画といった生態系へ甚大な影響を及ぼしうる立地はそもそも不適であり、こうした場所で事業を実施すべきではないと主張する。さらに、こうした構造上の問題を防ぐために、生物多様性保全上の重要地域を避けるよう早急な立地適正化の法整備が求められている。

絶滅危惧種の渡り鳥・サシバをはじめ生物多様性への影響が甚大

  • 本アセス図書の調査結果によると、対象事業実施区域付近の上空は、秋季のサシバの主要な渡りルートであることが示されており、風力発電機を設置した場合、相当数のサシバが毎年バードストライクのリスクに晒されることになる。
  • サシバは、各地で生態系の指標種として重要な猛禽類となっており、サシバがこの地でバードストライクに遭遇することは、計画地周辺だけでなく、広域の生態系へ影響をもたらしうる。
  • その他、ヤイロチョウ(環境省レッドリストⅠB類)やミゾゴイ(環境省レッドリストⅡ類)、キエビネ(環境省レッドリストⅠB類)などの希少種が確認されており、工事による悪影響が懸念される。

サシバのルートと予定地を示した地図

風車設置予定地の画像風車設置予定地の稜線(熊本県側から)

これまでの動き

ご参考

公益財団法人 日本自然保護協会について

自然保護と生物多様性保全を目的に、1951年に創立された日本で最も歴史のある自然保護団体のひとつ。ダム計画が進められていた尾瀬の自然保護を皮切りに、屋久島や小笠原、白神山地などでも活動を続けて世界自然遺産登録への礎を築き、今でも日本全国で壊れそうな自然を守るための様々な活動を続けています。「自然のちからで、明日をひらく。」という活動メッセージを掲げ、人と自然がともに生き、赤ちゃんから高齢者までが美しく豊かな自然に囲まれ、笑顔で生活できる社会を目指して活動しているNGOです。山から海まで、日本全国で自然を調べ、守り、活かす活動を続けています。
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