2023.08.25(2023.08.29 更新)
【配布資料】今日から始める自然観察「あのヒヨドリ、遠くから来たかも?!」
観察ノウハウ
専門度:
フィールド:森林住宅地
<会報『自然保護』No.595より転載>
このページは、筆者の方に教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可・抜粋利用不可)。ダウンロードして、自然観察などでご活用ください。
よく見かけるヒヨドリが、春と秋に移動している個体がいることをご存じですか? 実は渡りをしている意外な鳥や、いろいろな鳥たちの渡りをする時間帯について紹介します。
先崎理之(北海道大学大学院 環境科学院)
鳥類の中には、遠く離れた異なる場所で夏と冬を過ごす種類がいます。こうした鳥類は渡り鳥と呼ばれ、豊富な食物や快適な気候を求めて、毎年数百~数千キロを移動します。
ヒヨドリは緑の多い住宅街や都市公園で四季を通して見られる鳥類ですが、必ずしも一年中同じ場所で生活をしている個体ばかりでなく、渡りをする個体も多いと思われます。従って、同じ場所で一年中見られるヒヨドリでも、実は夏と冬とで全然違う個体になっている、なんてことがあるかもしれません。
ヒヨドリの渡りは、津軽海峡や鳴門海峡、関門海峡沿いの渡り観察地を始めとして全国の海沿いなどで普通に見られます。渡りを行うヒヨドリは、朝から昼にかけて数十から数百羽の密集した群れとなり、「ヒヨヒヨ」とにぎやかに鳴きながら比較的低空を移動していきます。
どのくらいの割合のヒヨドリが移動しているのかなどまだ不明なことは多いのですが、脚輪の回収記録によると夏と冬とで北海道から九州まで各地のヒヨドリが移動しているようです。
渡り途中のヒヨドリの特徴
ところで、渡りをしないヒヨドリと、どこかから渡ってきたヒヨドリを見分けることはできるのでしょうか。実のところ、これはかなりの難題ですが、渡っている最中のヒヨドリの群れが立ち寄っただけという場合は見分けられるかもしれません。
渡りをしないヒヨドリは縄張りを持っており、縄張り内の食事場に別のヒヨドリが現れると執拗に追い払うのですが、渡ってきたヒヨドリは縄張りを防衛する意欲が低く、複数でにぎやかに過ごしている傾向がありそうです。また、渡ってきたヒヨドリは食物が減るとすぐにいなくなってしまいます。ぜひ近所のヒヨドリを観察してみてください。
ヒヨドリってどんな鳥?
全長約28cmの中型鳥類で、体型は細身で、尾羽がやや長いのが特徴。全身が灰褐色で、頬の赤褐色が目立つ。サハリン、日本、朝鮮半島南部などの低地から山地の森林や緑の多い住宅街に分布。繁殖期はペアで子育てを行い、それ以外の時期は単独または群れで過ごす。無脊椎動物から木の果実、ニンジンや白菜などの農地の野菜まで何でも食べる。写真左:食物が乏しくなる冬には、ナナカマドなどの実のなる木が、ヒヨドリの格好の食事場となる。
ヒヨドリの渡りは密集した群れで、主に午前中に行われる。海に面した岬などでは、10~11月ごろまたは5月ごろになると、ヒヨドリの群れが鳴きながら地上付近を移動し、意を決したように海上に飛び出る光景が見られる。
実こんな鳥も渡りをしている
ヒガラ
本種を含むカラ類の仲間は、ヒヨドリと同じように日中に群れで渡りを行う。北日本のヒガラの数が多い場所では、数十から数百のヒガラの群れが次々に海岸沿いを移動したり、海に飛び出したりする光景が見られる。
ハシブトガラス
カラスの仲間は、日中に単独または群れで渡りを行う。日本では一年中同じ場所に生息していると思われがちなハシブトガラスも、北日本を中心に、渡り鳥の多い岬では1~数十羽程度の群れで海上に飛び出していく。
※ヒガラもハシブトガラスも、渡りをする個体もいれば、一年中移動しない個体もいる。筆者のフィールドの北日本での観察例で、それ以外の地域の渡りについては詳細不明。
渡りの時間
ヒヨドリは主に午前中に渡りを行うが、他の鳥たちはいつ旅しているのだろう?
昼夜問わず渡る鳥
ハクチョウ類やガンカモ類は昼も夜も渡りを行うが、夜が明けてから渡り始める個体が多数派。オオソリハシシギなどの一部のシギ・チドリ類は、何日もノンストップで飛び続けることが知られる。写真右:シギ・チドリ類は羽ばたきながら飛ぶが、翼の先が尖っており、長距離を飛ぶのに適している。
【昼も夜も渡る鳥のリスト】ハクチョウ類、ガン・カモ類、サギ類、キツツキ類
参考になるおすすめ本
『日本の渡り鳥 観察ガイド』
著者:先崎理之、梅垣佑介、小田谷嘉弥、先崎啓究、高木慎介、西沢文吾、原 星一
発行:文一総合出版
本コーナーは、エプソン純正カートリッジ引取回収サービスを利用されたお客様のポイント寄付によるご支援をいただいております。