2022.12.17(2023.09.20 更新)
閣僚級会合のはじまった9日目:COP15(12月15日)の進行
報告
専門度:
テーマ:国際生物多様性条約
フィールド:国際会議COP15
カナダ・モントリオールで開催されている生物多様性条約COP15は、15日より閣僚級会合が始まりました。
会場を歩いていると、金色のバッジを付けた方(閣僚級会合に入れる方)が歩いていて、時には、SPを連れているのを見ると、どこかの国の大臣なのだな~と、また新しい風景の会場となっています。
毎朝、日本(オンライン)と現地のメディアに向けてレクチャーを行っています
9日目(15日)は、主にポスト2020枠組み(GBF)*について議論をする第1作業部会は、「主流化」、「資金メカニズム」、「能力養成」のそれぞれコンタクトグループ*を、主にそれ以外について議論をする第2作業部会は、政府関係者のみのコンタクトグループとして「気候変動」の議題を扱いました。お昼に報告枠組み、午後に、資源動員、ポスト2020枠組み(GBF)(行動目標15と17)、夜にGBF(行動目標19.1)、名古屋議定書4条4項の特別アクセスを議論しました。
*GBF:the Post-2020 Global Biodiversity Frameworkの略称。ポスト2020生物多様性世界枠組み。愛知目標の後継目標に位置づけられる、日本と世界の生物多様性に関する共通目標で、今後10年間の生物多様性施策に大きな影響を及ぼします。
*コンタクトグループ:特定議題を集中的に議論するために、関係する国関係者のみで設定される会合。
再び議論となった行動目標15「企業や金融活動と生物多様性」
行動目標の15「企業や金融活動と生物多様性(企業への主流化)」は、注目を集めた “ 義務的要求によるものも含む(including with Mandetory requirement)” に、再び焦点が当たりました。ABS関連のレポートと一緒でないと義務を認めないとしていた国は、その文章が解決したので、同意に動いたのですが、今度は別の国が異議を申し立てはじめ、再度、 “ 義務(Mandetory)” にブラケット*がかかる状況になりました。議長からもイライラした様子が見受けられました。
行動目標15「企業や金融活動と生物多様性」におけるドラマティックな交渉場面(12月13日)
*ブラケット:まだ合意がなされない文言箇所に [ ] をつけること。 “ 再びブラケットがかかる ” は、合意されていた箇所が再び合意されていない状態に戻ること。
その他の行動目標についての議論の進捗
行動目標17「バイオテクノロジーと生物多様性」は、「遺伝子組み換え生物(生物多様性条約の用語では、Living Modified Organism:LMO)」、「バイオテクノロジー」、「合成生物学」と、複雑なキーワードが並ぶ目標だったのですが、クリスマスツリーの飾りつけ(参照はこちら)によって、適正手続きを進める対象と、推進する対象とがバランスが悪くなり、小グループで文章を再構築することになりました。
行動目標19.1「資金動員」は、民間からの資源、国内の資源動員、気候変動資金との連動(ダブルカウントを削除)、非資金的資源動員(コミュニティー主導手法の記述)、革新的手法の模索などについて表現の修正に集中しました。
新規の目標(ワンヘルス)という議論もありましたが、行動目標にするには議論が熟してないことと、基本原則に反映させることで解決しようとの折り合いも見られたので、行動目標は22だけになりそうです。
セクションH(支援メカニズムや条件整備)は、当初長い文章だったのですが、能力養成や資源動員戦略などを重要な計画等をリストアップし、その実施によって進めるといった短い文章でまとめていく方針が決まり、作業が加速しそうです。
15日から始まった閣僚級会合(ハイレベルセグメント)には、126の環境大臣、77 副大臣が140ヶ国から参集し、60名の国際機関や団体の事務局長級が参加しているそうです。
閣僚級会合における各国大臣のスピーチでは、COP15以前の国際会議と同様に、ポスト2020枠組み(GBF)について “ 意欲的(Ambitious)” で、 “ 堅固な(Bold)” ポスト2020枠組み(GBF)が必要だとの説明がなされると同時に、ここでは少し加わり、 “ 実践的 ” で “ 達成可能な ” ポスト2020枠組み(GBF)というキーワードが加わるようになったそうです。“ 実践的 ”というのは、今のポスト2020枠組み(GBF)交渉のブラケットを外すための判断基準として出始めたと分析する人もいました。
日本自然保護協会 保護・教育部 国際担当
国際自然保護連合日本委員会事務局長
道家哲平
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