2022.10.31(2023.09.20 更新)
奄美大島の集落における自然と文化の多様性
調査報告
専門度:
▲▲宇検村焼内湾の湾口から湾奥を見た様子。集落はそれぞれの入り江の奥に位置する。
テーマ:海の保全生物多様性地域戦略自然環境調査伝統文化
フィールド:集落海
昨年度から実施している奄美大島(鹿児島県)の海を調べるプロジェクトでは、笠利湾、大島海峡、焼内湾で、現在の海の状態を調べる調査と、過去の海の姿を調べる聞き取り調査を行っています。7月23日〜28日に笠利湾と焼内湾周辺の計6集落にご協力をいただき、今年度1回目の聞き取り調査を実施しました。
この調査から、集落を取り巻く自然環境と自然利用のあり方の多様性、それらがもたらす言葉、食、生業、祭りなど文化の多様性が、集落間に存在することが分かりました。自治体単位などで一律に規定される施策が、生物多様性保全の現場で機能しづらい原因の一つと考えられます。
聞き取り調査から〜宇検村焼内湾
宇検村の焼内湾は、湾奥から湾口まで直線距離約10kmの閉鎖性海域で、周辺に13集落が点在しています。
かつて、湾奥の集落周辺には、マングローブ林、干潟が発達し、現在より流量が豊富だった川には、リュウキュウアユもすんでいました。海では、ハマグリの仲間やマングローブガザミ、季節によって湾の奥まで入ってくるアジの仲間もとっていましたが、子どもたちの主要な遊び場は水量も豊かな川でした。
湾口の集落周辺には、サンゴ礁の海が広がります。かつては、ホンダワラ類やフノリの仲間など海藻利用も盛んだったほか、ベラ、ブダイ、ハタの仲間、シャコガイなどをとっていました。子どもたちは、海で船団を作って漁をするのが遊びでした。集落によって自然環境、海との関係はさまざまで、それぞれ独自の人と自然との共生のかたちがあります。そのため、守りたい海の姿、目指したい海の姿も異なります。
宇検村では現在でも集落ごとの自治組織があり、教育などの分野で個別の取り組みも行われています。私たちのプロジェクトも、集落ごとの自然環境の特性や利用のあり方を明らかにし、それに基づく海域保全のあり方の取りまとめと提案を行う予定です。
▲宇検村田検集落の轟川。かつては子どもたちの遊び場だった。
担当者から一言
リポーター
生物多様性保全部 中野 恵
奄美大島にすむ妖怪・ケンムン。海でも漁の分け前を取られたとか。誰もいない海辺に立つと、確かに気配が!