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2022.06.15(2024.03.21 更新)

国立・国定公園の新規指定・大規模拡張について

解説

専門度:専門度2

▲今回、国定公園の新規指定候補地となった御嶽山

テーマ:国立公園

こんにちは、自然のちから推進部の後藤です。

皆さんは「国立公園」と聞くとどんなイメージを持ちますか?

尾瀬や知床、屋久島や小笠原など、自然が豊かな場所をイメージする方も多いのではないでしょうか。
自然公園法では「我が国の風景を代表するに足りる傑出した自然の風景地」と定義されています。

国立公園は、その風景の美しさや豊かな自然を求めて、観光や登山などで訪れる方も多いかと思いますが、日本の生物多様性を保全するための重要な「保護地域」でもあります。
そして、近年、生物多様性をとりまく状況が変化する中で、保護地域としての重要性はますます増しています。
 

昨日、環境省は国立・国定公園*の新規指定および大規模な拡張の方針を発表しました。

国立・国定公園総点検事業フォローアップ結果について(2022年6月14日報道発表)

今回の発表の重要性について、NACS-Jの活動とともにご紹介します。

*国定公園とは:今回の環境省の発表には「国立公園」に加えて「国定公園」も含まれています。国定公園もまた、国立公園に準ずる自然の風景地であり、環境大臣が指定しますが、国立公園は国が管理、国定公園は都道府県が管理するという違いがあります。

 

世界の約束「30 by 30」と今回の「国立・国定公園の新規指定・大規模拡張」の意義

日本国内の生物多様性をとりまく現状は、乱開発や気候変動などによる影響が日ごとに大きくなり、絶滅危惧種の増加や生態系バランスの崩れなど、さまざまな課題が生じています。

生物多様性の劣化は、日本だけではなく世界的にも喫緊の問題となっており、今年2022年開催を予定している生物多様性条約第15回締約国会議(CBD-COP15)においては、生物多様性を回復に導くために「30 by 30目標」を含む「ポスト2020生物多様性枠組案」が採択されるべく、議論が進められています。

「30 by 30」(サーティ・バイ・サーティ)という言葉は、少し前にニュースでも話題になったことを覚えている方もいらっしゃるかもしれません。
昨年2021年6月にフランスで開催されたG7サミットで、G7各国が2030年までに自国の陸域と海域の少なくとも30%を保全することを約束した、ということで話題になりました。

この「30%」というのは、とてつもなく広い面積です。

例えば、日本の陸域は 37万8000 ㎢ ですから、その30%とはつまり 11万3400 ㎢ 。
これは、東京都の 51.7 個分の広さです。

この国際的な約束をどのように守るのかということで、日本では主に2つの戦略が考えられています。
そのひとつが、国立・国定公園等の拡充、そしてもう一つはOECM認定によるものです。

*OECMについては、今回説明を割愛しますが、こちらをご参照ください。

人と自然の共生地域OECM

つまり、今回の環境省の発表は、陸域・海域の保護地域を30%にまで増やしていく一歩を踏み出すための大事な発表なのです。

 

NACS-Jは、設立以来、国立・国定公園をはじめとした「保護地域」を重要なテーマとして、日本の貴重な自然環境の保護地域化に向けた様々な取り組みを行ってきました。

今回、新規指定・拡張の候補地のなかには、NACS-Jが地域とともに取り組んできた御嶽山をはじめ、宮古島沿岸海域、八幡平周辺、奥只見・奥利根、南アルプス、三河湾などが幅広く含まれました。

今週末6月18日(土)には、その一つ、御嶽山にて「シンポジウム 御嶽山の価値と未来 ~国立・国定公園に向けて~」を地元自治体(木曽町・王滝村)とともに開催します。

基調講演では皇學館大学の中山郁教授をお招きして「日本の山岳信仰と御嶽の宗教文化」についてお話いただくとともに、パネルディスカッションで、地元の人とともに御嶽山の価値を見つめ直し、今後の自然公園としての保護と利用のあり方を議論する予定です。

6/18 シンポジウム 御嶽山の価値と未来 ~国立・国定公園に向けて~

 

これからに向けて

今回の環境省による国立・国定公園の新規指定・大規模拡張の方針の発表は、日本における保護地域拡張に大変に意義があることです。

一方で、全国を見渡すと、まだ見過ごされている重要な自然環境が存在し、国立公園としての価値を有する地域もまだまだ存在しています。今後も引き続き議論・検討されていくことが望まれます。

また、今後、生物多様性保全の実効性を高めるためには、保護地域として「規制」だけが強調されるのではなく、地域の保全活動・自然回復の推進を通じて、地域の社会課題の解決にもつながるような国立・国定公園のあり方も推進されていく必要があります。


▲今回、国定公園の大規模拡張候補地になった能登半島。棚田や谷地田、塩田などの人の営みと自然との関わりが評価された。

これからの夏山や海のシーズンに、国立・国定公園を訪れる方も多いかと思います。
お出かけの際には、ぜひ日本の豊かな自然に目を凝らしてみてください。そして、さらに一歩深く、その地域の自然保護の課題に目を向けてみてはいかがでしょうか?

 

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