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2021.12.03(2021.12.09 更新)

【現場レポート】すべてのこどもに自然を!未来の自然観察指導員、保育士さんたちとともに

イベント報告自然観察指導員

専門度:専門度1

テーマ:環境教育人材育成子育て

こんにちは。広報会員連携部に今年度から仲間入りした須藤です。今回は取材・撮影のため、市民活動推進部の自然観察指導員チームが開催した講習に同行したので、感想とともに、様子の一部を紹介させていただきます。

11月5日~7日、「第582回自然観察指導員講習会・富山県 すべてのこどもに自然を!0歳からのネイチュア・フィーリング実践保育者育成講座」が開講されました。40年以上にわたって全国各地で開催し、今回、第582回を迎える自然観察指導員講習会ですが、今回は特別編、自然観察会等を保育現場で実践する保育者育成講座として、保育士を目指す学生の皆さん40名、趣旨に賛同する一般19名が参加されました。また、富山県では自然観察指導員講習会自体、今回が初めての開催で記念すべき日となりました。

すべてのこどもに自然を!

NACS-Jが取り組む「すべてのこどもに自然を!プロジェクト」(以下、こどもプロジェクト)は、貧困や親の関心事などの家庭の境遇に関係なく、すべての子どもたちが自然の原体験を得られることを目指しています。より広く多くの子どもたちに自然に深く接する機会を届けるために保育園や幼稚園の役割が重要です。そこで、今回は保育士を目指す学生さんたちと一緒に開催した経緯があります。自然や自然保護の大切さ、人と一緒に自然観察をする楽しさや方法を保育学生の皆さんに学んでいただき、そこから多くの子どもたちに自然を深く体感してもらえる機会が生まれること期待して実施されました。富山福祉短期大学幼児教育科2年生の学生さん40名と、現役保育士や子どもとの活動に関心がある一般の方19名が参加されました。学生さんの多くは来年4月から保育士として働くことになっています。

すべてのこどもに自然を!プロジェクト詳細

学生さんたち

今回は保育を学ぶ学生の皆さんが授業の一環として参加されました。既に自然保護に関心があり受講を希望されたわけではないという点でいつもと違うところでした。中には虫やカエルが苦手だったりと、自然への関心から受講を希望される“いつもの受講生”とはちがう感性を持った学生さんたちが自然を前に何を思うのかドキドキでした。

一般参加の受講生の皆さん

学生のほかにも一般から19名が参加されました。現役の保育士さんや乳幼児を育てるお母さん、琉球民謡歌い手の方、狩猟に挑む若者まで、色々な地域から多種多様な方々に参加いただきました。本プロジェクトに賛同いただき、遠くからご参加いただいた方も多く、うれしく思いました。

自然観察の実習

講習会1日目、最初は富山市郊外の里山にある自然公園「富山県自然博物園ねいの里」では、実際に自然の中で、自然を“観る”方法を学びました。スケッチをして森を遠景から観察した後、森の中に入って、いろんな視点から自然を観ることを学びました。はじめはあちこちで虫に驚く学生の悲鳴が聞こえましたが、いつの間にかみんな夢中で探していました。

講習会2日目、ところ変わって「せんだんのHILL」では、自然観察をするときの素材探しを学びました。旧栴檀野幼稚園園舎を利用した多目的施設となっています。園庭のある身近な自然を材料に目で見、においをかいで、触って、音をきいて五感を使った自然観察の方法を学びました。

自然を学ぶ、自然の学び方を学ぶ

今回の講義では、特別に、乳幼児を想定した自然観察や自然保護に関する教育の内容が盛り込まれました。
講習会2日目の最初の講義では、乳幼児との自然観察とはどういったものか。五感を使った自然観察会「ネイチュア・フィーリング」の創設から関わり、盲学校で教鞭をとられていた鳥山講師に教えていただきました。続いて、大阪大谷大学の井上講師の講義では、乳幼児に対する環境教育の意義について大阪からのオンライン講義で教えていただきました。自然観察会でのリスク管理や海外の自然を生かした保育の事例については富山福祉短期大の藤井講師に体操も交えて教えていただきました。


3日目には、自然観察指導員講習会講師である佐野講師より、私たち人間が自然や生態系からいかに恩恵を受けているのか、それらを持続させるためには何をして何を伝えていくべきなのかを教えていただきました。

初めての自然観察会

本講習会最後の実習は、ここまでの実習と講義を踏まえて、実際に自分たちでミニ自然観察会を企画・開催してもらいました。園庭で自然観察会のテーマを探し周りオリジナルの自然観察会を考えました。

一般の受講生さん、学生さんたちを混ぜた3~4人のグループに分かれ、観察会を実施しました。さすがは保育学生さん、子どもたちとの遊び方にはとても手慣れた様子でした。ある学生さんは、落ち葉をみんなで集めて「葉っぱじゃんけん」という遊びを取り入れていました。しかも、出した葉っぱを見比べて「この穴は何だろうね?」と観察してみたりと自然観察もしっかりと兼ねていました!また、ある学生さんは4人いる観察参加者に目を配り、範囲から離れてしまわないように気を配るなど、予想外の動きをする乳幼児を想定した配慮はさすがです!他にも、カラーチャートを使って自然の色探しをしてみたり、園庭に芽吹く“子どもたち”を探してみたりと皆さん思い思いの楽しい自然観察会が開催されていました。

自然観察講習会を終えて

最初は生きものに近づくのも恐る恐るだった学生さんたちも、終わってみると、「苦手だった昆虫にも少しだけ歩み寄れた」「自然に関心はなかったけど関心が持てた」「保育士として働く上で、ためになった」という感想も多く、自然との距離を縮められたことを実感しました。表情も自信に満ちているように感じました。一般参加の皆さんは、講習会を修了し、自然観察指導員の仲間になっていただきました。保育士や子どもさんと関わる活動実施者として、皆さんのそれぞれの今後の活躍を楽しみにしております。

広報取材を終えて

今回のすべてのこどもに自然を!プロジェクトにおける最初の保育者向け講習会として、協会としても重要な意味がありました。まだまだ改善の余地はあるかもしれませんが、保育学生さんと一般参加のとくに子育て世代の方々や保育現場の方々の交流も生まれ、思いがけない効果があったのではないかと感じています。今回の講習で生まれたこういった交流が将来の保育士さんたちにとっても働く上での手助けに繋がればいいなと感じました。広報担当としては、こういった社会的な意義にもスポットライトを当てていきつつ、プロジェクトを広め、盛り上げていきたいと思います。

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