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2021.04.28(2021.04.30 更新)

ユネスコエコパークが SDGsの実現を推進

読み物

専門度:専門度3

テーマ:ユネスコエコパーク

フィールド:ユネスコエコパーク

 

若松さんの顔写真

保護部 若松伸彦
2021年は、日本のユネスコ加盟70周年、ユネスコのMAB計画開始50周年の記念の年です。MAB計画は、「ユネスコエコパーク」を中心に生態系の保全と持続可能な利活用の調和に取り組む国際的な科学プログラムです。ここでは、日本のユネスコエコパークの現状と展望を報告します。

 
ユネスコエコパーク(生物圏保存地域)は自然保護と持続可能な利用の両立を目指す、地域主体の自然保護区です。1971年にユネスコ(国連教育科学文化機関)により、人と自然の良い関係を模索するMAB(Man and the Biosphere)計画が開始しました。ユネスコエコパークは、MAB計画の活動を行う中心として1976年に登録が始まりました。ユネスコエコパークはあくまでも日本での通称で、世界的には「生物圏保存地域 Biosphere Reserve」と呼ばれ、「BR」と略します(以下、BR)。

 

日本のBRの歴史

現在、日本にはBRが10地域あります。1980年、日本で最初のBRが登録されましたが、当時、MAB計画の委員を務め、日本国内の推進を行っていたのが、NACS-Jの会長も務めた沼田眞氏でした。その後30年以上日本のBRは冬眠状態に入ります。長い冬眠の後、2012年に宮崎県の綾BRが新規登録され、その後日本のBRは息を吹き返します。綾BRの登録で特に評価されたのが、綾の照葉樹林プロジェクトでした。国内の照葉樹林が消滅・寸断される中、綾町には、まとまった照葉樹林が保たれていました。NACS-Jを含む官民5者は協定を結び、この貴重な照葉樹林を保護し、周辺の二次林や人工林を照葉樹林に復元する取り組みが綾の照葉樹林プロジェクトです。

綾BRの登録を皮切りに、過去10年で綾BRを含む6地域が登録され、この間NACS-Jは国内のBRの活動を中心的に盛り上げ、支えてきました。最近だと、2017年にみなかみBRと祖母・傾・大崩BRが、2019年に甲武信BRが登録されています。

みなかみBRは、首都圏の約8割、3000万人の暮らしを支える、利根川の最上流域に位置する群馬県みなかみ町を中心とするエリアです。NACS-J、林野庁関東森林管理局、地域住民で組織する赤谷プロジェクト地域協議会、の3者が協働して進めている赤谷プロジェクトは、みなかみBRの中核的な取り組みの一つとして位置づけられています。

甲武信BRは、荒川、多摩川、笛吹川、千曲川の水源地である甲武信ケ岳などの奥秩父主稜を中心としたエリアです。上流域と下流域の水のつながりを意識した森づくりや自然保護に取り組んでいる団体や地域住民が多いのが特徴です。

祖母・傾・大崩BRは、九州最高峰級の急峻な山岳地形と美しい渓谷を有するエリアです。貴重な動植物が生育・生息する生物多様性の高い二次的自然環境が点在しています。

 

SDGsの実現に向けて動くBR

現在世界129カ国714のBRが、2015年採択の「MAB戦略(2015-2025)」、2016年採択の「リマ行動計画(2016-2025)」に沿った管理運営を求められています。MAB戦略は国連が採択した、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の実現を掲げ、リマ行動計画はその効果的な実施を目指す行動を示したものです。

SDGsは、 2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓っています。最近は日本においても自治体や企業などで、その理念が浸透しつつあります。

NACS-JはBRでのSDGsへの取り組みを促進するため、昨年7月より文部科学省の委託事業「ユネスコ未来共創プラットフォーム事業」を行っています。この事業では、日本のBRの活動、BR間の交流を活発にし、各BRが抱えている課題の解決のために、互いに学び合うための会議やセミナーを企画運営しています。また他のユネスコプログラムとの連携を図っていくことも目指しています。

 

里山・海をBRへ

日本におけるBRの活動は活発になりつつある一方で、大きな課題もあります。それは日本の里山や海を中心としたBRがないことです。現在、保護が強く求められる核心地域が国立公園などに限定されており、国立公園などがない地域では登録ができていません。里山や海は、自然資源の持続的な利用こそが重要であり、まさにBRの理念にぴったりなはずです。

NACS-Jは今後、国内の登録のルール改正などを提案しながら、里山や海が中心となる新規登録地が作られることを目指していきます。

森林と田んぼの画像うっそうとした亜高山性針葉樹林と、チョウ類の希少種の多さが特徴。古くから首都圏や周辺地域の水源林として守られている。

傾山と登山者の画像照葉樹林からブナ林まで幅広い植生が見られ、希少種も生息。山麓では地域住民の持続的な自然資源の利活用や、環境保全活動が行われている。

伐採した人工林の画像多様で希少な動植物、独特の生態系が見られる。写真は使われなくなった人工林を伐採しイヌワシの狩場を創出している現場。

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