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2019.11.08(2019.11.11 更新)

責任はどこに?屋久島入山協力金横領問題

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▲入山協力金の納入を呼びかける看板

テーマ:世界遺産

世界自然遺産・屋久島では、環境整備のため「山岳部環境保全協力金(入山協力金)」を任意で募っています。この協力金を管理する協議会の元職員による横領が発覚しました。事件の詳細を地元ジャーナリストに伝えてもらいます。

※会報『自然保護』2019年11・12月号 話題の環境トッピクス「屋久島の入山協力金はどこに?」より転載


3000万円の横領発覚

世界遺産の環境を守ろうと、登山客が寄付した3000万円が消えても、誰も責任を取らない。そんな「異常事態」が鹿児島県の屋久島で続いている。

発端は今年2月、屋久島町や環境省、林野庁などで構成する屋久島山岳部保全利用協議会(会長=荒木耕治町長)の元職員による入山協力金の横領が発覚したことだった。元職員は会計を1人で担当。約3000万円をパチンコやインターネット競馬に使ったという。

協力金は町条例に基づく制度で、2017年に始まった。縄文杉や宮之浦岳などに入る登山客を対象に、日帰り1000円、山中泊2000円を任意で徴収。主に山小屋のトイレからし尿を運び下す費用などに使っており、年間6000万円ほどを集めている。

町が収納業務を委託し、協議会が集めた協力金の不祥事である。元職員が弁済するまでは、町などが一時的に被害額を補填するなどの対応をすると思われたが、意外な展開が待っていた。

被害額を寄付金で補填

事件発覚を受け、協議会は臨時総会を開き、「任意団体の協議会に法的責任はない」ことを確認。条例を制定した町も「協議会職員が起こした問題で、町に法的責任はない」と主張した。さらに被害額は補填せず、前年まで使われずに残っていた寄付金2700万円で、損失を補うことを決めたのだ。

横領された寄付金を、寄付金で穴埋めする事態に、ネット上には「世界遺産という金のなる木に群がる金の亡者」「自然を商材にした商売島」など、1000件以上の非難の投稿が相次いだ。町議会でも、会計を1人だけに任せるなど、ずさんな管理を続けた町に対し早急な補填を求める声が上がった。

だが、町と協議会は自身の責任で被害額を補填することなく、協力金制度を継続。協議会が徴収する態勢も見直さず、「責任が取れない任意団体」のまま、今現在も協力金を集めている。

協力金の収納率は約8割で、年間の協力者は5万人近くだ。だが、そんな大勢の善意に対して、町などが責任を一切取らないという事実を、大半の登山者は知らされていない。

10月8日、150万円の業務上横領罪に問われた元職員は懲役2年執行猶予4年の判決を受けたが、告訴容疑3300万円の大半は、証拠が揃わず立件されなかった。今後、町は民事訴訟で立証する方針だが、全被害額を回収するめどは見通せていない。

協力金は先例の富士山に続き、今後も大雪山や妙高戸隠、大山といった国立公園で導入を検討中だ。屋久島の不祥事を教訓に、責任の所在や管理運営のあり方などを明確にした制度にすることが求められている。

武田 剛(屋久島在住ジャーナリスト・元朝日新聞編集委員)

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