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2019.01.07(2020.04.27 更新)

【配布資料】今日から始める自然観察「冬の移ろいを告げるフユシャク類」

観察ノウハウ

専門度:専門度1

テーマ:自然観察ツール

【今日から始める自然観察】冬の移ろいを告げるフユシャク類(PDF/799KB)

<会報『自然保護』No.567より転載>
このページは、筆者の方に教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可)。ダウンロードして、自然観察などでご活用ください。

虫たちの姿の少なくなった冬の森には、雌の翅が退化して飛べない「フユシャク類」という不思議な蛾が現れます。

身近な都市公園などでも出会える、魅力的な冬の昆虫の世界をのぞいてみましょう。

矢崎英盛(NACS-J自然観察指導員/首都大学東京大学院博士前期課程で蛾を研究中)


雄は氷点下でも飛べ、雌は翅が退化した特殊な蛾

「蛾」は国内で記録があるだけで6000種以上(蝶は300種前後)を数える、魅力の尽きない昆虫です。そのうち約900種を占めるシャクガ科(一般に幼虫がシャクトリムシの形態のグループ)のうち、成虫が冬だけに出現する35種を「フユシャク類」と呼んでいます。

このフユシャク類は、なんと雌は翅が退化して、飛ぶことができません。さらに雌雄とも口吻が縮小しており、多くは成虫で餌を取らず、シャクトリムシ時代に蓄えた栄養を使って生きていると考えられています。

氷点下の寒さでも活動可能で、冬の間に繁殖活動を行って、ほかの昆虫たちの姿が目立つにようになる春の盛りまでに、成虫の姿は見えなくなります。どの種にも毒はなく、昆虫の少ない冬には格好の観察対象です。

こんなところを探してみよう:フユシャク類の雌は主に夜間に木の幹などを歩いて上り、高さ1m前後(例外あり)の位置で、フェロモンで雄を呼ぶ「コーリング」を行う。雄は飛び回りながら雌を探し、交尾する。日中は落ち葉の下などでじっと...

フユシャク類の観察の最大の魅力は、動植物が眠りについたように見える冬の森で、ふと前触れもなく現れる彼らとの出会いの、驚きと喜びそのもの、と言ってよいのではないでしょうか。

雌が木の幹をよちよちと上っている姿に出会った瞬間の喜びは、いつも新鮮なものです。大きく膨らんだ腹には、卵がいっぱいに詰まっています。

またフユシャク類は、冬の間に次々に種が入れ替わりながら出現するため、同じ場所でも時期が違えば、異なる種のフユシャク類に出会うことができます。翅がほぼ消失しているものから、比較的大きな翅を持つものまで、種ごとに雌の翅の退化の程度が異なることも観察できるでしょう。

一見、変化を感じとりにくい冬の森で、フユシャク類の存在は、季節が静かに、しかし着実に歩みを進めていることを、我々に教えてくれているようです。

 
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身近なフユシャク類の成虫の出現時期(&雌の翅の形):クロスジフユエダシャク、クロテンフユシャク、シロフフユエダシャク、チャバネフユエダシャク、ナミスジフユナミシャク、トギレフユエダシャク

 

※写真は著者撮影

 

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