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2023.03.06(2023.03.06 更新)

「自然と共生する工場」の発展的な取組みを目指し、トヨタ自動車とSDGs勉強会を協働開催

トヨタ自動車株式会社

対象:従業員

貢献:自然を活かした地域づくり自然の守り手拡大日本の絶滅危惧種を守るSDGs愛知ターゲットネイチャーポジティブ

屋外講習の様子

公益財団法人日本自然保護協会(以下、NACS-J)は、トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)と協働し、「自然共生に取組む工場のSDGs勉強会2022」(以下、SDGs勉強会2022)を昨年に引き続き開催しました。

持続可能な社会の実現に向け、企業による生物多様性の取組みの重要性が世界的にも叫ばれる中、トヨタが力を注ぐ「自然と共生する工場」の取組みをしっかりと社内に定着させ、発展させていくことを目指しました。


NACS-Jはトヨタと協働し、“自然と共生する工場”を目指し継続的に活動してきました。主な活動としては、2019年に「自然共生を推進する社員教育プログラム(以下、2019年プログラム)」、2021年に「自然共生に取組む工場のSDGs勉強会2021」を行いました。これらの活動はトヨタが掲げる「トヨタ環境チャレンジ20501」のうち、「人と自然が共生する未来づくりへのチャレンジ」に沿った取組みでもあります。

2022年12月に開催した「SDGs勉強会2022」は、前年の勉強会の内容を踏襲しつつ、2部構成で実施しました。トヨタが進めている自然共生の取組みをしっかりと社内に定着させ、今後の活動をより発展させるための土台作りを目的としました。

第1部ではNACS-Jによる講演とトヨタによる衣浦工場と上郷工場の事例発表を実施。今回はその様子をトヨタ社内にオンラインでも配信し、多くの従業員の方にも同時に視聴いただきました。新たに加えた第2部では、屋外での取組みとして、2019年のプログラム2に参加いただいた皆さまがどのようなことを学んだのかを知っていただくため、当時のプログラムのポイントを解説。トヨタの堤工場にある“びおとーぷ堤“を舞台に、工場で自然共生を推進しているリーダーや管理職の方々を中心に参加していただきました。

第1部

第1部の講演は、NACS-Jの国際担当でもある道家哲平が、生物多様性条約第15回締約国会議(以下、COP15)で採択された「昆明-モントリオール生物多様性世界枠組み(以下、GBF)」も踏まえつつ、企業を取り巻く最新の生物多様性事情を解説しました。

最初に生物多様性がなぜ重要なのかを改めて共有。そして、生物多様性の損失が“種数”、“個体数”のどちらの側面でも大きくなっていること、その損失が経済的にも多大な損害を及ぼす可能性があることなどを学んでいただきました。

次にCOP15を経た今後の世界の動向を解説。GBF (Global Biodiversity Framework)の目標として2030年までにネイチャーポジティブ達成、2050年には人と自然の共生社会実現が据えられたことを伝えました。

企業に関する指針はGBFの行動目標15を軸に解説。企業が生物多様性へ及ぼすリスクと生物多様性の損失により企業に降りかかるリスク、その両方を低減していくことの重要性や、情報開示に向けたルール作りが加速していくことを伝えました。また、これらに取組む中で生まれるビジネスチャンスについても検討していく必要があることも話しました。

生物多様性をめぐる世界最新動向

室内講習の写真

トヨタによる事例発表では、衣浦工場と上郷工場の2拠点に活動報告をしていただきました。どちらの工場も調査リーダーを中心に指標種を定めながらモニタリングを行い、自然共生を推進している工場です。発表いただいた工場へは、それらの活動が生物多様性にとってより発展的な活動となるようNACS-Jからもコメントをしました。

衣浦工場からは、絶滅危惧種であるコアジサシの保全活動について発表いただきました。かつて衣浦工場近隣の沿岸に飛来していたコアジサシを呼び戻すため、工場の未利用地をコアジサシが営巣できるような環境へ整備する活動です。その成果として2018年には営巣とヒナの確認にも成功したと報告いただきました。また、この活動は近隣のグループ会社と連携した取組みであるとのこと。今後は工場構内にあるビオトープも含めて、生物多様性の保全を行いつつ、地域交流の場としても活用できる場所作りを進めていく予定とのことです。

上郷工場からは、生物多様性の危機の直接的要因の一つと言われている、外来種に対する取組みを報告いただきました。具体的には、工場周辺を流れる猿渡川に生息している外来種のミシシッピアカミミガメの防除です。また、防除後のミシシッピアカミミガメは資源の有効活用やCO2削減の視点から、堆肥化にも挑戦しているとのこと。完成した堆肥は、上郷工場と地域の協働活動場所である工場東グラウンドでの植樹等に活用されています。今後はこのような取組みの情報発信にも力を入れていく予定とのことです。

各工場の取組み詳細はこちら(外部サイト)からご確認いただけます。 

事例発表者の写真

事例発表者の写真

第2部

第2部はトヨタの堤工場にある“びおとーぷ堤“にて実施。自然共生に取組むリーダーや管理職の方々10名に2019年プログラムで実施したことをいくつか体験していただきました。

まずは、マクロな視点を持つため、離れたところからビオトープを観察。どのような種類の木や草で成り立っているのか構成要素を捉えてもらいました。観察をしていくと、中にはビオトープ設営当初に植えた木々だけでなく、鳥などが運んだ種が芽を出し成長してきたであろう稚樹も含まれていることが分かり、ビオトープ全体の生物多様性が月日の流れとともに変化していることが伺えました。

次に、ミクロな視点を持ってもらうため木に注目。その木の年間成長幅をたどることで、ビオトープを構成している1本1本の木も年々変化していることを感じてもらいました。このような自然の構成要素の追加や変化で自然遷移が起こること、里山を模したビオトープは自然遷移の途中段階であることを知ってもらいました。今後も変化し続けるビオトープを、どのような形で維持し、自然共生を推進していくのか考えるきっかけとしていただきました。

ビオトープの講習風景

ビオトープの講習風景


トヨタは、今後も「自然と共生する工場」の推進に向けて力をいれていくと力強いコメントを社内に向けて発信。今回実施した「SDGs勉強会2022」の様子は、後日トヨタ社内の従業員へ共有され、一人一人の学びの機会として活用されます。

NACS-Jとトヨタは今後もネイチャーポジティブとその先の人と自然の共生社会の実現に向け、活動を展開していきます。引続きご注目ください。

 

自然共生に取組む工場のSDGs勉強会 2022

日 程:
2022年12月23日
場 所:
トヨタ自動車 堤工場(愛知県豊田市)
有識者:
志村智子(NACS-J)、道家哲平(NACS-J)
主な内容:

第一部

  • 講演会(COP15を終えた生物多様性を取巻く世界情勢の変化について)
  • 取組み事例紹介1(衣浦工場)
  • 取組み事例紹介2(上郷工場)
  • 有識者コメント

第二部

  • 自然共生教育プログラムの体験 @びおとーぷ堤(堤工場)

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