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2022.07.13(2022.07.12 更新)

AIを使った動物画像の自動検出アプリが完成。モニタリング調査の大幅な労力削減が実現。日本自然保護協会とニコンが共同開発

株式会社ニコン

対象:一般市民

貢献:自然を活かした地域づくり日本の絶滅危惧種を守るSDGs

画像解析アプリが判別した動物の画像

日本自然保護協会(以下、NACS-J)は、会員としてNACS-Jの活動を支えてくださっている株式会社ニコン(以下、ニコン)と事業連携し、センサーカメラで撮影した画像から動物を自動検出するアプリを共同開発しました。

本アプリの開発は、NACS-Jが取り組む野生動物のモニタリング調査において、数万枚におよぶセンサーカメラの画像データから、動物が写っている画像と写っていない画像を目視で判別するのにかかっていた膨大な時間の短縮を目指したものです。2021年4月から行った実証実験では、「動物が写っていない」とアプリが判別した画像の検出精度は、99.6%を達成しました。

これにより、画像データの仕分けに要していた労力と時間の大幅な削減を実現しました。この結果を踏まえ、2022年4月からは本アプリを活用する対象地点を増やし、さらなる労力削減と作業効率化に努めていきます。


NACS-Jは、全国の活動地で自然環境のモニタリングを実施しています。モニタリングでは、センサーカメラを使った動物の調査も実施しており、撮影枚数が年間で数万枚に及ぶ活動地もあります。

センサーカメラは熱を発する動物の動きに反応して撮影するものですが、風による植物の揺れなどに反応して、動物が写っていない写真を撮影することが多くあります。これまで撮影した写真に動物が写っているかどうかの判別は、人の目でチェックしており、膨大な労力と時間を要していました。

NACS-Jとニコンは2018年6月から、センサーカメラ画像に対する動物検出技術の共同研究をスタートしました。ニコンは、NACS-Jが群馬県みなかみ町で取り組む生物多様性の復元と持続的な地域づくりを目指すプロジェクト「赤谷プロジェクト」の活動を2006年から継続的に支援しています。ニコンが同社らしい協力の方法を模索するなかで、NACS-Jから協力を打診したことをきっかけに共同研究をスタート、今回のアプリの開発に至りました。

開発と検証

自動検出アプリの開発にあたっては、画像解析技術を有するニコンが、アプリの技術的な開発を担いました。NACS-Jは動物画像データの提供と、AI(人工知能)が学習するために必要な大量の教師データを作り出すアノテーション作業を担いました。

2020年3月までの約2年間に、約22,500枚の画像データを用いて開発を行いました。本来であれば2020年4月から検証開始となる予定でしたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で思うように検証作業が進められず、2021年4月から検証を開始しました。

検証では赤谷の森に仕掛けたセンサーカメラのうち、2,000枚を超える画像が撮影された地点8か所を対象に、計30,809件の画像データでアプリを使って処理しました。そして、アプリが処理した画像データを目視で確認し、精度を検証しました。

アプリの処理は、撮影した画像データに対して「動物が写っていない」ものを正確かつ効率よく仕分けることを主目的にしつつ、「動物が写っている」ものの判別と「動物の種類」の判別にも挑戦しました。

雪の上のうさぎの写真

シカの顔だけが写った画像

結果

30,809件の画像データのうち、「動物が写っていない」とアプリが判断したデータは30,108件。それらを人がチェックしたところ、動物が写っていなかった画像データはそのうち29,983件で、正解率は99.6%でした。

一方、計30,809件の画像データのうち、「動物が写っている」とアプリが判断した画像データは701件。人がチェックしたところ、動物が写ってる画像データはそのうち147件で、正解率は21.0%でした。

また、アプリが「動物の種類」を判別した画像データは147件で、そのうち109件の種は正しく判別しており、正解率は74.1%でした。

本アプリの開発では、動物が写っていない画像データを正確かつ効率よく仕分けることを重視しているため、その目的は大きく達成できたと言えます。

実際に、通常だと3万枚の画像データを、人の手でチェックして整理するのに約1週間かかっていましたが、アプリを使うことで2日間に短縮することができました。

今回の検証では、本アプリの使用を2,000枚以上撮影されたセンサーカメラ設置地点に限定しました。この結果を踏まえ、2022年4月からはすべての地点で活用し、さらなる労力の削減と作業の効率化に努めていきます。

 


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