2025.07.16(2025.07.16 更新)
日本初!「南三陸イヌワシ野生復帰プロジェクト 実施計画書」を策定。国のイヌワシ保護増殖事業計画との適合認定を受ける。2026年6月頃のイヌワシ野生復帰に向けて本格的に準備を開始!
- 日本自然保護協会と南三陸地域イヌワシ生息環境再生プロジェクト協議会は『南三陸イヌワシ野生復帰プロジェクト 実施計画書』を策定。この計画が、国のイヌワシ保護増殖事業計画に適合している旨を環境大臣が認定
- 2026年6月頃に予定している、動物園で生まれたイヌワシの第1回目の野生復帰に向けて、本格的に準備を開始
- 2025年7月30日に南三陸町で本計画書について説明するフォーラムを開催
公益財団法人日本自然保護協会(東京都中央区)と南三陸地域イヌワシ生息環境再生プロジェクト協議会(宮城県南三陸町)は、動物園で生まれたイヌワシを、南三陸地域で野生下に復帰するために『南三陸イヌワシ野生復帰プロジェクト 実施計画書』(以下、本計画)を策定しました。
本計画は、種の保存法の規定に基づき、国のイヌワシ保護増殖事業計画に適合している旨の認定を環境大臣から受けました。
本計画は、2023年8月に設置した専門家を含めたワーキンググループ ※1によって、国内外のガイドライン ※2に則り、①野生復帰の必要性の検討・評価、②野生復帰の実施可能性の検討・評価、③実施計画、をとりまとめたものです。今後、2026年6月頃に予定している、動物園で生まれたイヌワシの第1回目の野生復帰に向けて本格的に準備を開始します。本計画は、2029年までに3回の野生復帰を予定しています。併せて、2014年から10年以上に渡って取り組んできた、イヌワシが狩りをすることができる環境の再生を継続して実施します。
イヌワシは、環境省第4次レッドリストの絶滅危惧ⅠB類の絶滅危惧種です。かつて、南三陸地域に4つがいが生息していましたが、2009年以降、次々に消失し、現在、つがいが確認されていません。全国的にも、生息環境の悪化等による分布域の縮小、繁殖成功率の低下及びつがい数の減少が確認されている等、本種の安定的な存続が危ぶまれる状況にあります。
本計画で実施するイヌワシの野生復帰は、日本初の取り組みです。野生復帰技術の確立や、イヌワシの生存率・分散についての知見の蓄積、イヌワシ個体群の補強など、イヌワシの保全を進めるための多くの重要な成果が期待できます。
また、東日本大震災以降、南三陸地域では、自然環境の保全を重視した地域づくりを推進してきました。イヌワシの生息環境再生も、官民の森林管理者が連携し、地域の林業振興や多様な森林利用の推進と併せて取り組んできたものであり、本計画は、生物多様性の回復と同時に、地域産業の振興を目指した、日本のネイチャーポジティブ ※3の実現に寄与する取り組みです。
以下の通り、本計画について説明するフォーラムを南三陸町で開催致します。ぜひご参加下さい。
フォーラム概要
※1 イヌワシ野生復帰ワーキンググループ(肩書は2023年8月時点)
井上 剛彦 | 極東イヌワシ・クマタカ研究グループ代表 |
---|---|
小松 守 | 秋田市大森山動物園長 |
佐藤 太一 | ㈱佐久 専務取締役 |
出島 誠一 | 公益財団法人日本自然保護協会 |
内藤アンネグレート素 | 京都市動物園 日本学術振興会PD研究員 |
山﨑 亨 | アジア猛禽類ネットワーク会長 |
鈴木卓也(事務局) | 南三陸地域イヌワシ生息環境再生プロジェクト協議会長 |
野口将之(事務局) | 公益財団法人日本自然保護協会 |
※2「再導入とその他の保全的移殖に関するガイドラインVer1.0(和訳)」国際自然保護連合(IUCN)、及び「絶滅のおそれのある野生動植物種の野生復帰に関する基本的な考え方」2011 環境省
※3ネイチャーポジティブ
「自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させる」ことを指します。いわゆる従来の自然保護だけを行うものではなく、気候変動対策や資源循環等の様々な分野の施策と連携して社会・経済全体を生物多様性の保全に貢献するよう変革させていく考え方です。
以上
本件に関するお問い合わせ先
公益財団法人日本自然保護協会 自然のちから推進部 出島
Tel:03-3553-4101
ご支援のお願い
日本自然保護協会(NACS-J)は、イヌワシの舞う日本の森を未来へ引き継ぐため、皆さまのご支援を活用してイヌワシ保全の取り組みを進めてきました。
今回、NACS-Jと南三陸地域イヌワシ生息環境再生プロジェクト協議会は、動物園で生まれたイヌワシの巣立ち幼鳥を野生に復帰させる、日本初の取り組みを開始します!