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2025.05.20(2025.05.20 更新)

約10年越しの塩漬け計画が復活 抜本的見直しを求め意見書を提出

三陸復興国立公園と事業計画地の位置関係を示した図

  • 日本自然保護協会は、「(仮称)ノソウケ峠風力発電事業(事業者:ENEOSリニューアブル・エナジー株式会社)」のアセス方法書に意見書を提出
  • 本計画は、2015年にアセス手続きの前段階である配慮書を発行後、約10年間停止
  • 当時すでに環境省から計画見直しを求める厳しい意見があったにも拘わらず、今回、規模・範囲ともに拡大、近接する三陸復興国立公園はじめ自然環境への影響が懸念される

公益財団法人日本自然保護協会(理事長:土屋 俊幸)は、自然環境と生物多様性の保全の観点から青森県八戸市及び三戸郡階上町、岩手県九戸郡軽米町及び洋野町で計画されている「(仮称)ノソウケ峠風力発電事業(事業者:ENEOSリニューアブル・エナジー株式会社)」の環境影響評価方法書(作成委託事業者:アジア航測株式会社)に関する意見書を提出しました。

本事業は、アセス手続きを約10年間と長期間停止していた、いわば塩漬けの計画です。こうした計画は、経過した期間に生じた社会状況及び自然環境の変化を踏まえ適切に環境配慮がなされているとは言いがたいものです。さらには、ネイチャーポジティブな社会の実現を目指す現在において、事業者の親会社であるENEOSホールディングス株式会社の生物多様性方針にも反する計画となっているなど、計画そのものに大きな問題があり、事業計画中止を含めた抜本的な見直しが必要です。

提出した意見書全文はこちら(NACS-J資料室へ移動します。)

主な意見書のポイント

意見書の主なポイントは以下のとおり。

1)配慮書発行から10年経過しており、再度アセス手続きのやり直しを行うべき

本計画はアセス配慮書が2015年8月に発行されたが、その後約10年間手続きは停止していた、いわゆる「塩漬けの計画」である。こうした塩漬け計画は、経過した期間に生じた社会状況や自然環境の変化を十分に踏まえたとは言い難く、環境配慮の確保に支障をきたす場合があると中央環境審議会からも問題を指摘している()。こうした長期塩漬けしてきた計画は、地域の合意形成の観点からも不適切であり、アセス手続きを取り下げるべきである。

中央環境審議会「今後の環境影響評価制度の在り方について(答申)」及び「風力発電事業に係る環境影響評価の在り方について(二次答申)」(2025年3月)

塩漬け計画の問題点:全国には、アセス手続きを10年以上止めたままの計画が26件、5年以上止めたままの計画が96件存在する。今回のような計画が、社会状況や自然環境の変化を踏まえず、ただアセス手続きを形式的に行えばよいという前例となってしまえば、他の塩漬け計画に関しても同様の問題点が生じる可能性がある。

2)本計画はENEOSグループの生物多様性保全の取組にも反している計画である

本事業の親会社であるENEOSホールディングス株式会社は、生物多様性保全を重要なテーマとしており、生物多様性のリスク評価も十分に行っている。しかし、本計画は、三陸復興国立公園の区域と近接し、国立公園から広がる生物多様性と生態系ネットワークを毀損しうるものであり、ENEOSグループの生物多様性ガイドラインの基本方針・活動方針に反する計画となっている。

3)配慮書段階で環境大臣から厳しい意見が出ているにも拘わらず、計画の拡大を行っている

本計画は、10年前にも環境大臣から計画の大幅な見直しを求める厳しい意見が出ているにも拘わらず、規模・範囲ともに拡大している。つまり、環境大臣意見を反映するどころか、環境影響を増大させている。

配慮書時点(2015年)の事業想定区域を示した図配慮書時点(2015年)の事業想定区域

方法書での事業実施区域を示した図方法書での事業実施区域

出典:環境省 自然環境調査Web-GIS 国立公園区域、国土地理院 淡色地図

4)既に施行が決定している青森県自然・地域と再生可能エネルギーとの共生条例に沿った手続きを行うべき

本計画は2015年の配慮書段階では岩手県内のみの計画であったが、今回、青森県側をエリアに拡張した。青森県側エリアは2025年7月執行予定の条例において、保全地域に該当している。アセス手続き開始時点で青森県側をエリアに入れていなかったことを留意し、本条例に基づいた手続きを行うべきだ。

ご参考

公益財団法人 日本自然保護協会について

自然保護と生物多様性保全を目的に、1951年に創立された日本で最も歴史のある自然保護団体のひとつ。ダム計画が進められていた尾瀬の自然保護を皮切りに、屋久島や小笠原、白神山地などでも活動を続けて世界自然遺産登録への礎を築き、今でも日本全国で壊れそうな自然を守るための様々な活動を続けています。「自然のちからで、明日をひらく。」という活動メッセージを掲げ、人と自然がともに生き、赤ちゃんから高齢者までが美しく豊かな自然に囲まれ、笑顔で生活できる社会を目指して活動しているNGOです。山から海まで、日本全国で自然を調べ、守り、活かす活動を続けています。
http://www.nacsj.or.jp/

本リリースに関するお問合せ

日本自然保護協会 担当:若松
Tel: 03-3553-4101(受付時間:10時30分~17時)
Email: hogo@nacsj.or.jp
〒104-0033 東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F
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