2024.06.17(2024.06.17 更新)
知床岬の携帯基地局整備による影響を懸念 世界遺産センターなどに通知書を提出
- 日本自然保護協会と北海道自然保護協会は、「世界遺産条約履行のために作業指針」174項に基づき、携帯電話基地局整備が世界遺産の”顕著な普遍的価値”に影響を及ぼす可能性があると緊急的に通知書を6月12日にユネスコの世界遺産センターとIUCNへ提出した。
- 工事における環境影響の事前調査の不備、オジロワシの生息への影響など、保護地域制度の運用を歪める最悪のケースとなる等の懸念を示した。
- 我々は、通知書をもとに、環境省が「世界遺産条約履行のために作業指針」172項に基づき、世界遺産センターおよびIUCNとの協議を進め、携帯基地局整備の再検討に向けて、地元自治体と調整していくことを期待している。
公益財団法人日本自然保護協会(理事長 亀山 章)と一般社団法人北海道自然保護協会(会長 在田 一則)は、世界遺産条約の仕組みに則り、知床における携帯電話基地局整備について、現在の状況と懸念点をまとめた通知書を、諮問機関の国際自然保護連合(IUCN)を通じて世界遺産条約事務局のユネスコ世界遺産センターへ6月12日にメールで提出しました。
主な内容
知床世界遺産の貴重な自然環境を守るために適切な協議が行われることを期待し、通知書では、整備計画の概況(立地、計画、現況)と顕著な普遍的価値(OUV)への影響への懸念を英文で述べました。
- 1.オジロワシの繁殖活動が示唆されるなか、1日間の現地観察では不十分である。また、工事や保守管理作業によって採餌行動や繁殖活動などへの影響が懸念される。
- 2.環境省は、計画段階で希少野生生物に関する調査を事業者へ指示をせず、許認可したことは大きな問題である。
- 3.国立公園特別保護地区や森林生態系保護地域での土地改変は、今後の保護地域制度の運用を歪める最悪のケースとなる。
- 4.太陽光パネルは火災や延焼の危険性があるため、知床の普遍的価値への影響が懸念される。
この通知書は、ユネスコ世界遺産センター「世界遺産条約履行のための作業指針」174項に基づく手続きです。
174項:事務局が、記載資産の状態に重大な劣化があったとの情報又は必要な改善策が予定期間内に実施されなかったという情報を、関係締約国以外の情報源から入手した場合は、当該締約国と協議の上、情報源及び情報の内容について可能な限り確認を行い、締約国からのコメントを求める。
(参考)
172項:世界遺産委員会は、条約締約国に対し、資産の顕著な普遍的価値に影響する可能性のある大規模な復元又は新規工事を、条約の下に保護されている地域において実施する場合もしくは許可しようとする場合は、その旨を、事務局を通じて委員会に通知するように招請する。資産の顕著な普遍的価値の十分な保存を担保するための適切な解決策の検討について委員会が支援を行うことが可能となるように、できるだけ早い段階で(例えば、具体的な事業の基本計画書を起草する前に)、また、変更不可能な決定を行う前の段階で、通知することが求められる。
通知書本文
(和訳)知床世界自然遺産における携帯電話基地整備局問題に関する緊急通知書
参考
世界自然遺産・知床半島の携帯電話基地局の整備に対する意見書(2024年5月)
本リリースに関するお問合せ
日本自然保護協会 担当:大野・道家
Tel: 03-3553-4101(受付時間:平日10~15時)
Email: ohno@nacsj.or.jp
〒104-0033 東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F
北海道自然保護協会 在田一則
TEL 011-876-8546
E-mail:info@nc-hokkaido.or.jp
〒003-0026 北海道札幌市白石区本通1丁目南2-3