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2023.02.02(2023.02.02 更新)

自然保護上重要な保護林に影響大!島根県での風発計画にアセスやり直しを求め意見書を提出

樹齢木の写真

  • 日本自然保護協会は、島根県の浜田市と益田市で計画されている「(仮称)新浜田ウィンドファーム発電事業」について、事業計画の一部を取りやめ、および、調査に重大な誤りがあることから準備書の作成をやり直すことを求めて、株式会社グリーンパワーインベストメントに意見書を提出。
  • 本事業の計画の一部は、林野庁が特に希少価値が高く特徴的な森林群落を恒久的に保存することを目的に設置した「保護林」に隣接。保護林隣接の計画は全国で類を見ず、影響が多大であることから、一部計画をとりやめるべきである。
  • 動植物の評価の際に用いている重要な植生の調査に大きな誤りがあることから、植生の調査をやり直し、準備書の作成をやり直すべきである。
  • イワミサンショウウオなど希少サンショウウオに影響の多大な場所での計画を行うべきではない。

公益財団法人日本自然保護協会(理事長 亀山 章、以下NACS-J)は、自然環境に配慮した立地での再生可能エネルギーの推進を提唱しています。

NACS-Jは、森林の生物多様性の保全を目的として、保護林制度の改善などを働きかけ実現してきた立場から、島根県の浜田市と益田市で計画されている「(仮称)新浜田ウィンドファーム発電事業」について、一部計画を中止すべきと株式会社グリーンパワーインベストメントに意見書を提出しました。また同時に、重要な森林群落の植生の状況把握に重要な誤りがあるため再調査をおこない、準備書の作成をやり直すことを求めました。

提出した意見書全文はこちら(NACS-J資料室へ移動します。)

意見書のポイント

1.本事業で設置が計画されている風力発電機14基のうち4基は、林野庁近畿中国森林管理局が設置した「保護林」に近接している場所に計画されている。保護林制度は、特に希少価値が高く特徴的な森林群落を恒久的に保存し、その生態や推移を観察して学術研究や森林施業の参考とする目的の林野庁の制度である。保護林の林縁部を伐採し切土および盛土を行う当計画は、全国で類を見ず、保護林の機能を著しく損なうことにつながることから、14基の風力発電機のうち4基の設置は実施すべきではない。

保護林の一を示した地図
地図データにNACS-Jが作図(Maps Data: Google, ©2023 / SIO, NOAA, U.S. Navy, NGA, GEBCO, Image Landsa, Copernicus, Japan Hydrographic Associoation)

2.当準備書では、保護林指定地周辺の森林はクリやミズナラ等を主とした植生自然度7の若い二次林が広がっていると記載されている。しかし、当協会の現地調査および林野庁のモニタリング調査の結果では、100年生のブナやミズナラが林冠を形成している。さらには、環境省の植生図では植生自然度8および9となっており、準備書の保護林指定地周辺の植生調査結果は大きな誤りがある。
このような誤りがあるにもかかわらず、本準備書の事業影響の予測結果では自然度が高い植生の造成を回避していると断言し、これらデータに基づいて動植物や生態系の影響を評価している。本準備書の動植物への影響評価は不十分であることから、植生の再調査をおこない、準備書の作成をやり直すべきである。

環境省植生図を示した図
地図データ(Google©2023)にNACS-Jが環境省植生図を基に作図

準備書植生図を示した図
地図データ(Google©2023)にNACS-Jが準備書植生図を基に作図

3.改変区域内および対象事業区域内で環境省レッドリストⅠB類のイワミサンショウウオ、対象事業区域内で環境省レッドリストⅡ類のチュウゴクブチサンショウウオの生息が確認されている。サンショウウオは移動能力が低く、またイワミサンショウウオやチュウゴクブチサンショウウオの分布は限定的であることから、希少サンショウウオの生息している場所での事業はおこなうべきではない。

本リリースに関するお問合せ

日本自然保護協会 保護・教育部 若松伸彦
Tel: 03-3553-4101(平日10:30 ~ 15:00)
Email: wakamatsu@nacsj.or.jp
〒104-0033 東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F

ご参考

公益財団法人 日本自然保護協会について

自然保護と生物多様性保全を目的に、1951年に創立された日本で最も歴史のある自然保護団体のひとつ。ダム計画が進められていた尾瀬の自然保護を皮切りに、屋久島や小笠原、白神山地などでも活動を続けて世界自然遺産登録への礎を築き、今でも日本全国で壊れそうな自然を守るための様々な活動を続けています。「自然のちからで、明日をひらく。」という活動メッセージを掲げ、人と自然がともに生き、赤ちゃんから高齢者までが美しく豊かな自然に囲まれ、笑顔で生活できる社会を目指して活動しているNGOです。山から海まで、日本全国で自然を調べ、守り、活かす活動を続けています。
http://www.nacsj.or.jp/

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