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2022.02.04(2022.02.04 更新)

御嶽山の国立・国定公園への昇格を求める要望書を提出

▲夕陽に照らされた御嶽山の摩利支天山(右)(標高2,960m)と継子岳(左)(標高2,859m)(撮影2021年10月岐阜県高山市)

 

公益財団法人 日本自然保護協会(会員約2万4千人、理事長:亀山 章)は、本日2月4日に、飛騨高山ふるさと歩こう会(会長:小野木三郎)、一般財団法人 中村浩志国際鳥類研究所(代表理事:中村浩志)と連名で、環境大臣、岐阜県知事、長野県知事に対して、岐阜県と長野県の県立自然公園に指定されている御嶽山(標高3,067m)を自然公園法にもとづく国立・国定公園に昇格することを求める要望書を提出しました。

御嶽山の国立・国定公園への昇格を求める要望書(PDF650KB)

主な内容

・御嶽山(3,067m)は、学術的価値も高く絶滅危惧種ライチョウが生息するなど、重要な自然環境を有する山岳であるにもかかわらず、標高3,000m以上の山岳(23座)の中で、唯一国立・国定公園になっていない。
・その重要性を鑑み、日本自然保護協会など3つの団体が、県立自然公園から国立・国定公園に昇格することを要望。
・国立・国定公園の指定も含め、今後、廃業したスキー場の植生回復や、安全な登山と火山噴火などの緊急時の対応・避難施設整備の充実なども提言を行っている。


2022年2月4日

環境大臣  山口  壯 様
岐阜県知事 古田  肇 様
長野県知事 阿部 守一 様

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章
飛騨高山ふるさとを歩こう会
会長 小野木 三郎
一般財団法人 中村浩志国際鳥類研究所
代表理事 中村 浩志

御嶽山の国立・国定公園への昇格を求める要望書

長野県と岐阜県の県立自然公園に指定されている御嶽山は、古来、日本の名山として知られ、自然地理学や生物地理学、生態学のうえから重要な自然環境を有しています。一方で、過去には大規模なスキー場開設など数多くのリゾート開発が行われ、自然が改変されてきました。また1979年と2014年に大規模な噴火をして火山災害をもたらせてきました。そのため自然公園としての保護と利用のあり方を国として明確にする必要があります。
2022年に開催される生物多様性条約締約国会議(CBD/COP15)で決定される次期世界目標として「30 by 30」(サーティ・バイ・サーティ、2030年までに陸域・海域の30%を保全・保護地域とすることを目指す目標)が検討されています。保護地域のさらなる拡充は、この世界目標に大きく貢献することになります。
私たちは、御嶽山を自然公園法にもとづく国立・国定公園に昇格することを下記の理由から要望いたします。

理 由

  1.  日本には標高3,000m以上の山は23座ありますが、国立公園でないのは標高3,067mの御嶽山ただ一つだけです。しかも他の22座の山頂周辺の高標高域は国立公園の中でも最も厳重に保護がされている特別保護地区になっています。
  2.  御嶽山は日本の中部山岳地域の最南端に位置しており、また3,000mを超える独立峰のため、中部山岳地域の典型的な植生の垂直分布が低山帯から高山帯まで連続的かつまとまった形でみられます(前田 1958)。特に独特の火山景観が広がる森林限界以上には、コマクサをはじめとした高山植物群落やハイマツ群落が広がり(中条 1983)、森林限界以下の標高 1,600m~ 2,400mにはコメツガ、シラビソなどの発達した亜高山帯針葉樹林が広がり(杉田他 2008)、林床には日本特産のオサバグサ等の希少植物が生育しています(水野他 1975)。氷河期からの遺存植物が多く生育し、自然史のうえからも一級の価値があります。
  3.  御嶽山の高山帯には絶滅が懸念されているライチョウが生息しており、その生息数は125羽と推定されています(中村 2007)。ライチョウは各地で絶滅が危惧されており、御嶽山は本種にとって、極めて貴重な生息地であり、御嶽山の個体群は種の保存法によるライチョウ保護増殖事業のうえでも重要な個体群です。
  4.  前述の御嶽山の独特の景観と生物多様性の豊かさは、学術的価値が高く、特に標高約2,400mの森林限界以上の、長野県の御岳県立公園および岐阜県の御嶽山県立自然公園の第1種特別地域は、より厳正に景観の保護を図る必要性の高い地区であるため、国立・国定公園の特別保護地区に格上げをすべきです。
  5.  御嶽山は、古くから山岳宗教の信仰の山としてあがめられ、庶民の信仰を集めた霊山であり(生駒 1988)、その歴史的・文化的価値もたいへん重要です。
  6.  御嶽山には廃業・休業したスキー場が標高2,000m近くまで散在しています。今後の御嶽山の価値を上げていくためにも、スキー場のコース跡地を自然林に戻す植生回復を行うことが望まれます。
  7.  御嶽山は活発に活動する火山であることから、国立・国定公園の指定により、適切で安全な登山と緊急時の対応・避難のための施設整備等を充実させるべきです。

以上

図1:御嶽山における長野県・岐阜県の県立自然公園の現状の配置

参考文献
岐阜県自然環境保全連合御岳山問題委員会編(1998)「世界的な自然遺産 御岳山の自然」, 岐阜県自然環境保全連合.岐阜.
生駒勘七(1988)御嶽の信仰と登山の歴史. 第一法規出版.東京.
前田禎三(1958)木曽御嶽の植物群落,「御嶽研究 自然編」,569-609,御嶽駒ヶ岳綜合調査委員会.岐阜.
水野瑞夫・田中俊弘・甲谷俊彦・福原裕子・鈴木智子・大内幸雄(1975)御岳のオサバグサ自生地の植生について.岐阜薬科大学紀要,24,21-38.
中条広義(1983)木曽御嶽山高山帯における表面礫の移動と植生:ミヤマタネツケバナ群落の成立要因について.日本生態学会誌,33(4),461-472.
中村浩志(2007)ライチョウLagopus mutus japonicus.日本鳥学会誌,56(2), 93?114.
杉田久志・岩本宏二郎・森澤 猛(2008)御嶽山における密なチマキザサ林床をもつ亜高山帯針葉樹林の構造と動態.森林総合研究所研究報告,7(2), 81-89.

▲雪に覆われた御嶽山の最高峰剣ヶ峰(標高3,067m)(撮影2021年12月長野県木曽町)

 

▲亀山章 理事長から要望書を環境省 奥田直久自然環境局長に提出(2022年2月4日)

 

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hogo@nacsj.or.jp
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