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2020.08.11(2020.08.25 更新)

社会的距離を保ちながらできる自然観察会プログラムの事例紹介

お知らせ

専門度:専門度2

テーマ:環境教育人材育成

ここでは、新型コロナウイルスの感染予防のために参加者同士の社会的距離を保ちつつも、五感を使って観察して気付いたことを共有でき、楽しみながら自然との距離を縮められる、自然観察プログラムを紹介します。みなさまの活動の参考になれば幸いです。

※ 2019年以前に撮影された写真を使用しているため、人の距離が近かったり大人数で実施している写真も含まれていることにご留意ください。

☆観察会では、最後に無理に気付いて欲しいことをまとめたり解説したりしなくても構いません。挙がった発言や気づきをまとめて紹介するだけでも十分ですよ。

1.森の音いくつ

ねらい

  • 森の中から発せられる音の多様さを実感する。
  • 目を閉じて、聴覚や多様な感覚を総動員して森という生態系を五感で観察する。
  • また、私たちが日常忘れている多様な感覚があることへの気付きを得る。

進め方

(1)導入
参加者には、森の中で、リーダーの声が届く範囲に自由に散らばってもらい、目を閉じて1本の樹になりきってもらいます。

導入説明の例:「森の中にも色々な音があります、虫や鳥の声、木々の音、笹の擦れる音、森の外からの音がいくつ森の中に入ってくるのか、森の巨樹になりきって森の音を聞いてみましょう。」

(2)展開
目をとじて、声を出さず動かずに、聞こえてくる音の種類や数を数えていただきます。(約2~3分間)。姿勢は座っていても立っていても構いません。1分を越えたあたりから、森に溶け込むような感じになるので、1分以上続けることをおすすめします。

(3)まとめ
リーダーの終わりの合図で終了し、距離をとりつつ輪になって、感じたことを共有します。まずは野鳥の声や虫の声、人の声など、どんな種類の音がいくつ聞こえたかを共有します。次に、匂いや、温度、湿度、微風といった皮膚感触など、聴覚以外の感覚で気づいたことがあったかを問いかけ、気づきを共有します。外と森の中とでなぜそのような違いがあるかを考えていただくことで、森という生態系のしくみについても気付きを促します。

 

2.雨の流れる道をたどろう

ねらい

参加者全員で降った雨がどこに流れるかを再現して共有することで、水が流れ集まる様子や、地形の微妙な高低差の存在を実感するとともに、水の流れが植生などに及ぼしている効果を考えます。

進め方

(1)導入
広場などの平らで開けた場所に、参加者になるべく散らばって立ってもらい、それぞれが「そこに降った雨粒の水」になりきってもらいます。
通常は多人数で実施するプログラムですが、少人数で実施してください。

(2)展開
参加者には、周りを見渡しながら「そこに降った雨が地面に沿ってどこに流れるか」を予想し、水が流れると思う方向に歩いていただきます。この際、徐々に人が集まるため、それぞれの距離を十分保ってもらうよう事前に注意をしましょう。事前に範囲を決めておき、全員がその範囲を外れるか、動く(水が流れる)余地がなくなったところで終了です。

(3)まとめ
一見平らに見えた場所で、水の動きを再現したことでどのような気づきがあったかを共有します。また、水が流れる道や水が最後に集まる場所で、地形や植生にどんな変化があったかについても互いに気付きを共有します。
参加者にさらに視野を広げていただくために、「今回は小さい規模で観察しましたが、もっと大きな範囲で見ても、川の周りには川の流れを活かした植物が、水がたまる田んぼにはそれにあった植物が、そして動物もその環境に合わせた生きものが住みついています」といった話をしてもよいかもしれません。

 

3.枝の広がりを感じよう

ねらい

  • 1本立ちの木の場合:大きな木の枝の広がり、根の広がりを五感で実感する。
  • 隣の木が近い木の場合:木が隣の木と光を分け合っていることを感じる。

どちらも想像と実際では大きく異なっていることを実感してもらい、枝の広がり方が幹を中心にした単純な円ではないことや、地形や他の木との競争など様々な理由で広がり方が変わることへの気付きを得ます。また枝がある範囲には根が張っているので、目で見えない根の広がりを五感で感じて想像を促します。

進め方

(1)導入
参加者に大きな木を1本選んでもらいます。場所は森の中でも公園の開けた場所でもかまいません。森林の中であれば、森の一番上(林冠)まで枝がでている背の高い木を選びます。選び終わったら、互いの距離を取りながら、樹の幹を背にして囲むように集まっていただき開始です。

(2)展開
幹から外側にむかって、その木から延びる枝の一番先端(の真下)まで各自移動してもらいます。講師は幹のところにとどまります。全員が枝の先の位置まで移動したら、立ち止まって幹の方を向いてもらいます。この時、できるだけ等間隔になるように立ってもらいます。参加者が立っている場所を見ることで、幹を中心にどの範囲まで木が枝を張り出しているかが分かります。ここで、枝の広がりの下までは根も広がっていることを伝え、地下も想像してもらいましょう。

追加の展開として数名には枝の先端の下から、幹に戻ってきてもらい、目をつぶってもらいます。その後、枝の先端の下に立っている人に、順番に「ここです」と声をだしてもらうことで、声の音で枝の広がりを実感してもらうことも可能です。この方法は、目に見えない根の広がりを想像したり、目の不自由な人が参加者にやおられる場合や、地形に高低差があって幹の向こうの参加者が見えない場合に特に有効です。
場所や木を変えてやってみると、樹種や隣接する木や人工物などの環境の影響も見えてきます。

(3)まとめ
満足いくまで観察したら、少し近くに集まってもらい、木の枝がどんな形でどんな範囲に広がっているか、なぜそんな形となっていそうかなど、参加者同士で気づきや考えを共有しましょう。
枝は幹を中心にした単純な同心円でないことや、隣の木との光をめぐる競争によって枝の範囲がいびつに歪むこと、今は見えないが隣の伐採された木や倒木の影響も受けているといたことに気づいてもらえるはずです。根の広がりを想像してもらうことで、目に見えない木の生命力や自然のしたたかさを感じてもらえるかもしれません。

 

4.木の親子さがし

若い木を探す観察会イメージの画像

ねらい

森林内で最も大きな木や、高い位置に最も多く葉を茂らせている木を選んでもらい、その木の芽生えや若木を探してもらいます。そうすることで木も、子孫を残し子どもがまた大きな木となる「一生」を持った生き物であることを実感してもらいます。また、森林の高い位置を占める木の子どもが、森林の地面にも沢山みつかるのか、あるいはほとんど・全く見つからないのかを見てもらうことで、その森林の将来の姿や、あるいは過去なぜその高い木が大きく成長できたかを考えてもらい、時間軸をもって森林を捉えてもらいます。

進め方

(1)導入
森林内で行います。距離を保って集まっていただいたら、まずは参加者に今立っている場所から見て一番大きな木を指さしてもらい、その木に近づいて枝や葉が広がっている範囲を観察してもらいます。続いて、その木が何という名前の木か、その木のタネや実はどういったものかを問いかけてみましょう。(本州では多くの場合はナラ・カシなどのどんぐりの仲間やサクラの仲間、アカマツなどです。)参加者から答えが出なければ、木の名前をお伝えしても大丈夫です。

(2)展開
続いて、その大きな木がお母さんの木だと仮定して、その周りに赤ちゃん(ドングリなどの実)や小さな芽生えが生えていないかを見つけてもらうことを伝えます。まずはお母さんの木の葉の形をじっくり観察し、同じ形の葉をつけた芽生えが林内のどこに生えているかを見つけてもらいます。なかなか見つからない場合も多いので、時間をかけてじっくり探して歩いてもらいましょう。もしすべての人がタネや芽生えを見つけられたら、次は幼児や小学生の木(樹齢数年の木)も探してもらいます。もし芽生えがあまり見つからなかった場合は、見つけた一つを皆でじっくり観察するのがよいでしょう。

(3)まとめ
10分程度時間が経過したところで終了し、再度お母さんの木の周りに集まってもらいます。どこでタネや芽生えを見つけたか、どこが多かったかを共有します。また、なぜ場所による偏りがあるのかも参加者に問いかけてみましょう。タネが親木から落ちる方向や、地面の土の様子、また上に葉がどれくらい生い茂っているかで日当たりが異なっていることが影響していることなどに気が付いてもらえるかもしれません。

また、もしタネが全くない場合や、タネはたくさんあるのに芽生えが無い場合、芽生えはあるのに数年の樹齢の幼い木がほとんどないような場合は、将来この森林で目立っていく木がどれになるか、現在の大木はどうなるかなど、森の将来について考えてもらいましょう。「タネから芽生え、幼樹が育って親木になる」という生き物としての一生のサイクルが何らかの理由で止まっており、違うタイプ木が生い茂る森に移り変わっている、という可能性に気が付けるかもしれません。

 

「コロナ禍における自然観察会の手引き(ガイドライン)」はこちら