日本自然保護協会は、生物多様性を守る自然保護NGOです。

  • 文字サイズ

自然の守り手を増やす

Home 主な活動 自然の守り手を増やす 記事一覧 【配布資料】今日から始める自然観察「もっと知りたい!名ハンター・カマキリ」

自然の守り手を増やす 一覧へ戻る

2022.06.27(2022.07.02 更新)

【配布資料】今日から始める自然観察「もっと知りたい!名ハンター・カマキリ」

観察ノウハウ

専門度:専門度1

No588今日から始める自然観察ページの画像

テーマ:環境教育自然観察ツール里山の保全

フィールド:森林草むら

【今日から始める自然観察】もっと知りたい!名ハンター・カマキリ(PDF/1MB)
<会報『自然保護』No.588より転載>
このページは、筆者の方に教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可・抜粋利用不可)。ダウンロードして、自然観察などでご活用ください。

カマキリは、左右上下自在に頭部を動かし、立体視することで距離感を図り、前脚を瞬時に繰り出して獲物を捕らえます。今回は究極のハンター、オオカマキリの暮らしや体のつくりに注目します。

筒井 学 群馬県立ぐんま昆虫の森昆虫専門員)


オオカマキリの一年

カマキリは、卵(卵鞘)で越冬し、5月中旬あたりの初夏に孵化します。一つの卵鞘から100~200匹の幼虫が一斉に誕生しますが、孵化直後にそれぞれが単独で散っていき一匹だけの放浪生活がスタートします。オオカマキリの場合は、ススキやクズが生い茂る草地から林縁、そして人家周辺の生け垣などで過ごします。

備えた鎌(前脚)で獲物を狩り、食べる。これが、カマキリの基本的な暮らしです。視覚をたよりに獲物の動きや大きさを判断して狩りをします。花などで、訪花する昆虫を効率よく捕獲できる場所では、待ち伏せをして長く滞在しますが、移動をしながら獲物を探すこともあります。

成虫となった時点で、オスはメスを探して交尾を行うことを目的に、メスは卵を産み残すために行動します。広い草原で出会えるよう、メスはフェロモンでオスを誘引すると考えられています。オスはメスを発見し、ある程度間合いを詰めるとメスを凝視したままじっと動かなくなります。うかつに近づけば食べられてしまう危険を分かっているからです。一瞬の間に翅を使いメスに向かって飛び込んでゆき、背中にしがみついて交尾します。まれに起きる事象として、交尾中にメスが振り向いてオスの頭部を食べることがありますが、オスは頭部を失いながらも交尾を継続します。これは昆虫類特有の神経系のあらわれで、腹部の機能を主につかさどるのは脳ではなく腹部の神経球だからです。

交尾後のメスは、より多くの卵を産み残すために狩りを続けます。産卵数は摂取できた食物量で前後し、潜在的には5つほどの卵鞘を産めますが、野外ではおそらく2~3つほどと考えられます。秋が深まる10月まで活動し、霜が降りる季節には一生を終えます。

 

オオカマキリの体のつくりと生息環境

狩りの道具と手入れ

特殊な形状の前脚、自在に動く頭、長い前胸部。どれも狩りに特化している。食事の後、入念に行うのが清掃行動。前脚、触角は口器を使ってなめるように行う。中脚や後脚の先端部分も前脚で手繰り寄せて口元へ。複眼の手入れは前脚の腿節部内側の毛束を使う。まさに名ハンターの道具の手入れは入念ということだ。

疑瞳孔と鎌内側毛束アップの画像▲大きな2つの複眼で距離を図り、額に3つの単眼で明暗を感じると言われている

目の色の変化

カマキリ類は昼夜を問わず活動する。そして暗くなり始めると、昼間は体色とほぼ同じ色だった複眼が次第に黒くなる。これは、複眼の中心部近くにある黒色の色素が表面近くに移動することで、暗闇での視覚を保つと考えられている。また、明るい環境下では色素が中心部に移動するため、複眼の表面では黒い点となって現れる。中心部から放射状に広がる複眼の構造上、見る角度によって黒い点も移動するため、常にカマキリとは目が合っているように見える。これを偽瞳孔とも呼ぶ。

オスとメスの見分け方

成虫はオスとメスで腹部先端部分の形が違う。そのほか、オスはスリムで触角が長く、メスは横幅があり、がっちりした体型。

オオカマキリ夜の複眼

オスとメスの腹部の画像

子供のころも似た姿

不完全変態のカマキリは、幼虫も成虫によく似た姿をしている。基本的には8回の脱皮を繰り返して成長し、ちょうどお盆の時期を境に最後の脱皮「羽化」が行われる。

オオカマキリ3齢幼虫の画像▲摂食中の3齢幼虫

オオカマキリのメス羽化の画像▲オオカマキリのメスの羽化

オオカマキリ孵化直後の1齢オオカマキリのメス羽化画像▲オオカマキリの孵化直後の一齢幼虫

たくさんの天敵

ハンターであり、捕食する立場のカマキリだが、生態系の中では捕食される側でもある。卵期間にはカマキリタマゴカツオブシムシやオナガアシブトコバチによって寄生される。幼虫期には徘徊性クモ類、トカゲ、カエルといった両生爬虫類、鳥類などが天敵となる。

カマキリタマゴカツオブシムシの画像▲カマキリタマゴカツオブシムシ

ハリガネムシの寄生

ハリガネムシの幼生を食べたカワゲラやカゲロウが羽化し、それをカマキリが食べることで寄生される。ハリガネムシに寄生されたカマキリはハリガネムシの繁殖場所である川や池に飛び込んでしまう。入水のしくみについて、カマキリが視覚的に水面の反射を感じるとそこへ向かうようにハリガネムシが脳を操作しているという衝撃的な研究が、近年話題となった。

ハリガネムシとカマキリの画像

外来種拡大中

外来種のムネアカハラビロカマキリは、2000年に国内で記録されて以降、西日本から関東にかけて点在的に分布域が拡大傾向にある。在来種で近縁のハラビロカマキリよりも大型で、しかも生息環境が重なることで、在来種の駆逐の恐れが大変危惧される。日本への移入原因として中国製竹ぼうきに付着した卵鞘が原因とされている。

ムネアカハラビロカマキリの画像▲ムネアカハラビロカマキリの威嚇ポーズ

参考になるおすすめ本

  • 『カマキリの生きかた~さすらいのハンター』著者:筒井 学 発行:小学館

エプソンロゴマーク

本コーナーは、エプソン純正カートリッジ引取回収サービスを利用されたお客様のポイント寄付によるご支援をいただいております。

自然の守り手を増やす 一覧へ戻る

あなたの支援が必要です!

×

NACS-J(ナックスジェイ・日本自然保護協会)は、寄付に基づく支援により活動している団体です。

継続寄付

寄付をする
(今回のみ支援)

月々1000円のご支援で、自然保護に関する普及啓発を広げることができます。

寄付する