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2021.07.02(2023.09.22 更新)

センサーカメラは見た!みなかみBR・赤谷の森の哺乳類相調査報告

報告

専門度:専門度3

みなかみ町の地図とセンサーの位置を示した画像

▲みなかみBR内のセンサーカメラ設置場所

テーマ:モニタリング森林保全獣害問題里山の保全

フィールド:里山赤谷の森

群馬県みなかみ町西部に広がる約1万haの「赤谷の森」。ここでは、過去10年以上にわたり全国でも類を見ない哺乳類の長期モニタリング調査が行われています。

また、2019年からはその長期モニタリングの手法を応用して、みなかみユネスコエコパーク(以下、みなかみBR)エリアの里地里山でも調査が始まりました。センサーカメラによる哺乳類調査結果から見えてきた動物たちの最新の動きをお伝えします。


2008年に赤谷の森の一角で始まった調査は、現在みなかみBR全域に広がり、約130台のカメラが、動物たちの動きを見つめています。

ツキノワグマ

森の健全性を示す指標といわれるツキノワグマの出現頻度指数(100日あたりの出現頭数)は、わずかに増加傾向を示しています(図1)。周辺地区の捕獲頭数は増減を繰り返していますが、森の中のツキノワグマの生息数に影響はないようです。この動向を見る限り、赤谷の森は良好な状態にあると言えます。

図1 赤谷の森で撮影されたツキノワグマの出現頻度指数

ニホンジカ

赤谷の森のニホンジカの出現頻度指数は、2008年10~11月と2019年の同時期とを比較すると約27倍に増加しています(図2)。地元の年配の方が「シカ」と聞いてカモシカを思い浮かべるほど、ニホンジカはまれな存在でした。それが、2018年ごろを境に逆転し、ニホンジカの方は増加傾向にあります。赤谷の森のニホンジカは、秋に多く出現します。一方、みなかみBRの里地では、5月~10月に赤谷の森を上回る出現がみられ、ピークはニホンジカの出産期にあたる6月ごろであることが分かりました(図3)。

図2 赤谷の森で撮影されたニホンジカの出現頻度指数

図3 みなかみBRの里地で撮影されたニホンジカの月別出現頻度指数

キツネ・タヌキ

近年赤谷の森で出現数が増加している哺乳類に、キツネとタヌキがいます。特に、キツネは2017年以降、タヌキは2000年以降に、標高1500m以上の高山帯でも出現するようになりました。今後、これらの動向からも目が離せません。

 

シカ対策の最前線

みなかみBRエリアは、四方八方からニホンジカが移入し、シカ対策の最前線となっています。気候変動等の影響で冬の積雪量が減ると、越冬する個体数も増え、里山の希少種や赤谷の森など山奥の森林生態系にも影響が及びます。

NACS-Jでは、林野庁、みなかみ町、地域の方々と協力しながら、赤谷の森とみなかみBRの里地で、ニホンジカの捕獲試験を実施しています。対策には、長期モニタリング調査から得る知見が欠かせません。これからも、130台のカメラとともに、目となり頭脳となって、シカ対策・希少種保全活動を進めていきます。

❶ニホンジカの誘引捕獲試験地で昼間に撮影されたニホンジカの画像。鉱塩を用いてニホンジカを誘引し、捕獲する手法を導入している。/❷赤谷の森で撮影されたツキノワグマ/❸哺乳類モニタリングに使用するセンサーカメラ

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担当者から一言

中野さん顔写真

リポーター
生物多様性保全部 中野 恵
動物の同定を担当しているのは学生・社会人混合10名のチームです。リモートでつながりながら年間十数万枚の写真と格闘しています。ご興味ある方、ぜひ仲間に!

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