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2020.11.01(2020.11.05 更新)

アフターコロナの自然保護2「今こそ、 Nature For All (あらゆる人々に自然を)の声を上げよう」

読み物

専門度:専門度3

ショーン・サウシーさんの顔写真

テーマ:環境教育国際

IUCN(国際自然保護連合)の専門委員会の一つに環境教育コミュニケーション委員会(IUCN-CEC)があります。1600人近い環境教育やコミュニケーションの専門家を擁するこの委員会の委員長を務めるのがショーン・サウシーさん。

新型コロナウイルスの感染者が20万人以上出たニューヨークから外出自粛の中、今こそじっくり考え、自然保護からの発信を止めてはいけないという応援のメッセージを寄せてもらいました。

 

ショーン・サウシー
国際自然保護連合・環境コミュニケーション委員会(IUCN-CEC)委員長
政府・NGO・国連組織で、環境コミュニケーションの分野で30年以上活躍。数多くの世界キャンペーンを展開した経験を持つ。海外を飛び回る仕事を活かし、Pokémon Goの世界ランカーでもある。

コロナ以前からの失敗

私たち自然保護の関係者は、今、極めて複雑な事態に直面しています。コロナ禍の前から、生物多様性の損失と気候変動の危機に世界は立ち向かってきました。持続可能な未来につながる社会への行動変容を起こすために、市民への普及啓発を通じて生物多様性保全に取り組んできましたが、政治や企業、市民一人一人の行動に与えた影響を考えれば、私たちの取り組みは失敗といえます。

私は、愛知目標に代わるポスト2020目標が、明確な目標を定め、各国の政府の本気とそのための資源を引き出す原動力となるよう、政府間の交渉の場に関わり続けています。交渉は進展しており、ポスト2020目標に注目を集めるための取り組みも行われていますが、最も重要な、市民の力強い支持を得るための草の根の取り組みが欠けていると感じています。市民の声がなければ、政治の関心も、未来のために必要な高い目標設定も、実施のための資金も確保されません。

パリ協定のように気候変動の問題は広く知られているのに、どうして生物多様性については社会やメディアの注目を集めることができないのかと、良く聞かれます。多くの理由があると思いますが、最も大きな理由は、生物多様性の問題は気候変動よりずっと複雑であることでしょう。

動物や植物、生態系がもつ複雑な世界、保護地域から都市に至るまでの多様な人と自然との関わり。この複雑さが、生物多様性がなければ文字通り生命が存在しえないというたった一つの視座を人々が得ることを困難にしています。複雑であることが、市民を遠ざけているのです。

絶滅危惧種の話も、名前は知っているけれど遠い世界の生き物の話で、自分には何もできないことのように語られます。希望のない暗い話です。

遠い(Distance)世界の、複雑(Complex)で暗い(Doom)話題なら、人々は目をそらすでしょう。自分の行動で何かが変わると思いません。これまで行われてきた生物多様性のキャンペーンの多くは、一貫したメッセージがなく、普通の人々がどこでどのように行動するべきかを迷わせるもので、世界的な動きを生み出すことができませんでした。

 

コロナ危機の中で発信を続ける

そのような時に、COVID-19(以下、新型コロナ)が現れました。一日中、家でも職場でも、世界各地であるいは目の前で、切迫した命の危機が叫ばれ、政治も社会も分断され、いつ危機が終わるか分からない中、多くの人々の暮らしと経済が打撃を受けました。

コミュニケーション分野に関わってきたIUCN-CECの関係者は、「今何をすべきか」を真剣に考えています。人間の命や暮らしが危機にある時に、環境についてメッセージを出しても良いのだろうかと多くの人が悩みました。

しかし、健全な生態系と、適切な経済が、新型コロナのような感染症の発生や拡大リスクをコントロールするのに欠かせないということを、冷静かつ明確な説明と共に共有しよう、と発信する人たちが現れています。私はこうした行動に心から拍手を送りたいと思います。

新型コロナの課題を冷静に怖れつつ、生物多様性も新型コロナも、その複雑さを恐れず受け入れ、さまざまな聞き手に合わせたメッセージに仕立てて発信することが大事です。

新型コロナは終わっていません。この先ずっと終わらないかもしれないという怖さも感じています。しかし、いずれ克服し、新しい日常が訪れるでしょう。だから今こそ、新型コロナと向き合う必要があります。政治や企業や社会を動かすには不十分だった「これまでの当たり前」を捨てる機会ではないでしょうか。多くの人が、コミュニティやつながりの可能性を感じたと思います。自然保護運動は、この流れの上に立って行動する必要があります。

 

あらゆる人々に自然を

どの国でも共通の第1歩は、私たちの地球が驚くほど素晴らしいところだと感じる眼差しを共有することだと考えています。人と人、人とリアルな自然とのつながりを近づけることです。

自然保護の文化を創り出すための世界レベルのキャンペーンとして、IUCNの「#NatureForAll」というものがあります。世界中の400を超える団体が、自然への深いつながりと愛着を作り出すための運動に参加し、皆さんと同じように活動しています。自然を感謝し愛する社会、豊かで持続可能で健全な未来を目指す社会をもっと作り出す必要があります。皆さんもこのキャンペーンにぜひ参加してください。

新型コロナへの対策の中で、皆さんが、このような世界をどう支えられるかを考えてほしいと思っています。より自然豊かな未来を取り戻すには、新しいパートナーシップを作るには、地球のための運動をつくるには、どうすればよいか一緒に考えましょう。

 
自然保護を世界中に広めるためにショーン氏が提唱している「Nature For All(ネイチャーフォーオール)」キャンペーンでは、世界各地の賛同者がSNSで「#NatureForAll」を付けて、それぞれの取り組みを発信している。NACS-Jも賛同団体に入っている。

▲自然保護を世界中に広めるためにショーン氏が提唱している「Nature For All(ネイチャーフォーオール)」キャンペーンでは、世界各地の賛同者がSNSで「#NatureForAll」を付けて、それぞれの取り組みを発信している。NACS-Jも賛同団体に入っている。

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