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2020.07.03(2020.07.06 更新)

【子育てと自然】第4回:社会を生き抜く力を育む子どもの自然体験

読み物

専門度:専門度2

植物の実を見て喜ぶ兄弟の写真

テーマ:環境教育子育て

「子どもたちの自然体験の機会が減っている」というのはよく聞く話。都市化が進み遊べる自然が身近になくなった、今の親世代が自然体験が少なくて子どもに自然の中で遊ばせる機会をつくりづらい、学校から帰ってきた後に塾、スポーツのクラブ、習い事などに通う子が増え、自然の中で遊ぶ時間がない、などさまざまな原因があります。

親としては、かわいいわが子が幸せな人生を歩むために必要な能力をつけさせたいと思うもの。塾やスポーツ、習い事によって、勉強や運動能力だけでなくさまざまな能力を身につけられる。ならばぜひ、うちの子も通わせたいと思うのも普通のこと。また、自分も危険さをよくわかっていない自然の中で遊ばせることに不安を感じるというのもわかります。

では、自然体験は子どもにどんな能力をつけさせることができるのでしょう?

子どもの自然体験のメリットについては、これまでの「子育てと自然」第1~3回のコラムでも紹介してきましたが注1、今回は、国が毎年まとめている「子供・若者白書」注2で発表されている自然体験の効果をご紹介します。

この白書では、子どもや若者の現状についての調査結果などをまとめていて、その中の「体験活動」に関する項目で、自然体験の効果として、具体的な調査結果が出ています。下の2つのグラフを見てみましょう。

グラフ1)子どもの頃の体験と大人になってからの意欲・関心等との関係

(出典) 独立行政法人国立青少年教育振興機構(2011)「子どもの体験活動の実態に関する調査研究(平成22年度調査)」

子どものころの自然体験が多いほど、大人になってからの物事に対する意欲・関心が高い人が多い傾向が見られます。

グラフ2)自然体験と理科の正答率(平成24年度)
「自然の中で遊んだことや自然観察をしたことがありますか」

(出典) 文部科学省中央教育審議会「今後の青少年の体験活動の推進について(答申)」(平成25年1月25日)
(注)平成24年度全国学力・学習状況調査から作成されている。

自然の中で遊んだり自然観察をしたことがある子のほうが、理科の正答率が高いという傾向が見てとれます。

また、体験活動の意義・効果として、文部科学省中央教育審議会が2013年1月に答申した「青少年の体験活動の推進について」注3について触れています。

この答申では、「かつての多くの子どもたちは、仲間とともに自然の中で遊びながら、あるいは、地域において生活、成長していく過程で、様々な自然体験・社会体験を日常的に積み重ねて成長する機会に恵まれていた。しかしながら、今の子どもたちをめぐる環境は、心や体を鍛えるための負荷がかからないいわば「無重力状態」であり、青少年の健全育成にとって深刻な事態に直面している。」

「自然や人とのかかわりの中で命の尊さについて学ぶことができる。青少年期にその基盤を作ることが重要である。他者や生き物への配慮を含め、社会全体を考える人間を育むためには、教育的視点に裏打ちされた自然や文化などに触れる幅広い体験が必要である。」などとまとめ、自然体験や地域社会での生活が子どもたちの社会を生き抜く力を養成するとしています。

そうはいっても「都会では自然がないから子どもに自然体験させてあげられない」と思う人もいるかもしれません。

でも、身近な道端や公園でもちょっと注目して探してみると、草や木、昆虫や鳥と、いろんな生きものがいることに気づくことができます。小さなスペースにもれっきとした「自然の営み」があります。大自然の中で遊ばせるだけが自然体験ではなく、散歩などちょっとした時間にでも自然観察したり、生きものと触れ合うことはできるのです。

明日から、塾やスポーツチーム、習い事とはまたひと味違う、子どもの生きる力育む自然体験を、ぜひお母さん、お父さんもご一緒に!

注1 「子育てと自然」第1~3回のコラムでも子どもの自然体験と生きる力との関係について解説しているので、読んでみてください。

注2「子供・若者白書について」(内閣府)
https://www8.cao.go.jp/youth/suisin/hakusho.html

注3「今後の青少年の体験活動の推進について(答申)」(文部科学省中央教育審議会 2013年1月21日)
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2013/04/03/1330231_01.pdf

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